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コンサルタントの枠にとらわれず事業主体者として

事業運営部部長 南部浩之

事業運営部部長 南部浩之

平成25年にスタートした事業運営部は、CFKにおいて、かなり異色の存在に違いない。なにしろ事業の第一弾が、コミュニティサイクルである。同事業部の南部浩之部長(以下、南部)も、「他の部署からは街の自転車屋、あるいはレンタサイクル屋くらいに思われているんじゃないかな」と苦笑する。
もちろん事業運営部が何を目指し、どのように事業を進めているのか、社内外の人にもっと知ってもらいたいとの思いは強い。同事業部は、自転車を軸に街・地域づくりの新モデルを模索するという、極めて今日的で社会的な意義をもち、社内的には新規ビジネスへの挑戦という側面を担っている。

事業化にいたった経緯を簡単に紹介しよう。きっかけは、経済産業省の『低炭素社会に向けた技術シーズ発掘モデル事業』への参加である。平成21年、兵庫県篠山市でのこと。電動自転車を活用したレンタサイクル事業を核に、徒歩や自転車で巡る街づくりの実証実験を行った。以降、堺市や奈良市、鹿児島市でも同様のプロジェクトを手がけ、自転車を軸にした街づくりのノウハウを蓄積してきた。
「私自身、交通計画をやってきて、過度に車に依存しない社会や街づくりの必要性は認識していますから」(南部)。鉄道やバス、自動車を補完する第三の移動手段であり、しかも環境に優しいエコな乗り物である自転車が主役となるコミュニティサイクル事業は、次第に各自治体での取組みも増えてきた。

事業運営部サブリーダー 稲田恭子

事業運営部サブリーダー 稲田恭子

従来の建設コンサルタントは、事業化するまでの調査、検討、実施方法について、報告書にとりまとめる役割を担っていた。
それが、事業主体者として名乗りを挙げたのだ。コンサルタント業の枠を超えて、新たなビジネス領域に進出したことになる。「弊社は官庁や地方自治体を主な取引先とする受注産業です。ところが、事業運営部では利用者から直接料金をいただく”日銭商売”を始めた。会計の仕組みがまったく異なります」(南部)。篠山の実証実験から関わってきたサブリーダーの稲田恭子(以下、稲田)も、茶目っ気を込めて言う。「他の部署では100円単位の仕事など、扱ったことがないでしょう」。新規ビジネスへの挑戦と位置づけられる理由がここにある。

本業が堅調ゆえのチャレンジ

工業先進国の道をひたすら進み、効率化、合理化を追求してきた日本。鉄道や道路などのインフラ整備も、同様の発想から画一的に拡大してきた。それが成長から成熟へ、ビッグからスモールへ、失われた20年を経て大きく転換を迫られている。旅行にしてもそうだ。いち早く目的地へ到着する手段が競われてきたものの、途中の景気を楽しむ、横道にそれて手軽に周辺地域へ足を伸ばす、といったニーズが確実に増えている。
2020年に開催される東京オリンピックも同事業の追い風になりそうだ。コンパクト開催を標榜したロンドンオリンピックではコミュニティサイクルを採用、注目を集めた。同じくコンパクト開催を意識する東京オリンピックでもまた、コミュニティサイクル構想が浮上している。機は熟してきた。

市場性はどうか。現在、CFKを含めて数社がコミュニティサイクルの事業に参入している。そのうち建設コンサルタントの参入は決して多くない。「先行業者を様子見しているのではないでしょうか。計画段階から採算を取るのはキツイと予想できますから。海外のケースを見ても、広告収入や公的資金の補助がないと継続は難しい状況です」(稲田)。CFKのほか、どこも収支は厳しいはずだという。それでも参入した、参入しようとするのは、「他社もコミュニティサイクルで儲けることだけが目的ではないのでは?」と南部は推測する。

CFKの場合も? 「仮に自転車でなく、いくらカレー屋が儲かるとしても、我々が手がけるのはちょっと違う」(南部)。事業である以上、収支を無視するわけにはいかないが、やはり「交通計画、街づくりに貢献できる事業かどうか」がポイントだ。「現在展開する3か所(さいたま市*1、岡山市*2、JR中央線沿線*3)での事業をベースに、蓄積した経験やノウハウを次のビジネスにつなげていく」(南部)とすれば、新規参入をもくろむ企業と、運営事業者を探している自治体とを結びつけるコーディネート業務なども考えられる。「3か所も経験したのだから、コミュニティサイクル以外でも官民連携などにその経験を活かしていきたい」(稲田)。
稲田が本質を突いた。「本業が堅調だからこそ、思い切ったことにチャレンジできるのでは?」。本業に陰りが見えると、たいてい新規事業で穴埋めをしようとする。そこでは採算性は二の次などと言っていられない。一方、採算性を第一義に据えた新規事業はとかく魅力に欠けがちだ。本業が切羽詰ってからの新規事業は、なかなかうまく運ばないのが現実である。

事業運営部 中野陽子

事業運営部 中野陽子

現在、事業運営部に所属するのは南部と稲田に加え、若手の中野陽子(以下、中野)の3人を中心に、様々な部署のメンバーと一緒に事業を展開している。2014年の秋に異動するまで、事業運営部の業務内容をよく知らなかったという中野は、異動後「よくこの人数で、この事業を回しているなあ」と驚いた。中野の以前の部署はハードな設計部。フレッシュで専門性の異なる中野の存在は、同事業部がさらに進化していくうえで、おおいに期待される。

経験のない苦労と喜びと、今後への期待

さいたま市コミュニティサイクルのポート(与野本町駅)

さいたま市コミュニティサイクルのポート(与野本町駅)

さいたま市での事業は平成25年5月、続けて岡山市が同年7月、同じく11月にJR中央線沿線が始まった。コミュニティサイクル事業を1年間に3か所も立ち上げたのだ。
物理的な大変さに加え、利用者を直接相手にするプレッシャーはこれまでに経験したことのないものだった。「実証実験時も利用者と接する機会はありましたが、我々はどこまでも黒子。クレームを直接言われたり、その対応に追われることは多くはなかったですから。小売業などでは当然のマインドでしょうが、未経験ゆえ、最初は戸惑いの連続でした。」(南部)。

3事業所それぞれが丸1年以上を経た今、余裕も生まれてきた。実経験のない人たちの話を見聞きするにつけ、「それでできるなら苦労はないよ!」と心の中でつぶやくことも。青写真を描くのとそれを実現していくのとでは、やはり次元が異なるのだろう。

ただし、困ったことが一つある。コンサルタント業からリアルな実業の世界へシフトしたことで、「今、報告書を書いたら、リアリティーがありすぎて面白くないと言われるかも(笑)」(稲田)。前に進むために夢を描くのはもちろん大事だが、行政と連携して事業を進めていくノウハウは、コンサルタント業に留まっていてはなかなか得がたい。現実主義者になったという評価を謙虚に受け止めつつ、「培ったノウハウがコミュニティサイクル以外の事業でも活きてくるはず」と、今後の展開に期待を寄せる。

3事業所がスタートして感じるのは、地域の背景による違いだという。岡山市でのコミュニティサイクルの利用は想定を上回った。岡山駅から勤務先までの足として平日ラッシュ時の需要が高いが、利用ポートにかなり偏りがある。都内中央線沿線ではうれしい誤算もあった。住宅地ゆえに世帯ごとの自転車保有率も高いはず。「駅までの足」という利用はあまり見込めないと思っていたが、利用の多さに驚いた。さいたま市は仕事や買い物の日中利用が高く、自転車を自宅への持ち帰り可能にするなど、運用面の工夫が奏功したのか順調に推移している。「実際にコミュニティサイクルを利用されている光景を目にすると、やはり嬉しいですよ。地域の足として根付いてきているなと実感できます。」(南部)。

訴求ポイントは自転車のある暮らしの魅力

稲田が告白する。「コミュニティサイクルにこれほど需要があるとは思わなかった。人が乗った自転車に自分が乗るなんて……」。10年前とは時代背景や文化がずいぶん変わったと実感するそうだ。「私は大学を卒業して引っ越すことが分かっていたら、処分に費用のかかる自転車は購入しませんね」(中野)。所有よりもエコ&堅実度が高い、若い世代の意識や感性が、コミュニティサイクルの今後を左右するかもしれない。
最後に、コミュニティサイクル事業の課題と今後の抱負について聞いた。どう採算を上げていくかは直近の課題ではあるものの、スタッフはもっと長期的な視野に立って、この事業を見据えている。稲田は「回遊性を高めないと、コミュニティサイクルはもったいないと思います。もっと自転車のある暮らしの魅力を提案したい。例えば、行政区をまたいだ運用を促進することなどによって、さらなるコミュニティサイクルの意義を広めていきたいですね」と言う。かつて「せまい日本そんなに急いでどこへ行く」という交通安全運動の標語があったが、スローライフの象徴が自転車になるかもしれない。

買い物にコミュニティサイクルを利用する親子

「コミュニティサイクルで収益を上げることだけが事業運営部の目標ではありません。地元の人や来街者にコミュニティサイクルを利用してもらい、街の活性化に貢献したい。どうすればいいのか、まだ模索中ですが、目標は地域・街の新たなモデルづくりで、コミュニティサイクルはそのための装置の一つです」(南部)。
もう一つ、大きな意義がある。それは多様な人材を育成するための現場であること。CFKのどの部署とも重ならない事業内容だから、これまで予想したことのない人材が活躍できるだろう。「学生から見て、コンサルティング会社でも何か面白そうなことをやっている会社と思ってもらえたらと思います」(南部)。

採用・人事面でダイバーシティ=多様性という言葉が注目を集めている。環境変化の激しい時代、多様な人材がいなければ企業は生き残れない。とはいえ、単に多様な人材を求めても現場がなければ、それは机上の空論だ。多様な現場があって多様な人材が育つ。現場で汗をかいてきた同事業部のような存在が、CFKの可能性を広げるのではないだろうか。

*1「さいたま市コミュニティサイクル」
http://saitama-ccs.jp/
さいたま市コミュニティサイクル
*2 岡山市コミュニティサイクル「ももちゃり」
http://momochari.jp/
岡山市コミュニティサイクル「ももちゃり」
*3 「Suicle(スイクル)」
http://suicle-ccs.jp/
Suicle(スイクル)

社長コメント

われわれ建設コンサルタントの仕事の多くは、道路、鉄道、河川などのインフラ整備に関する調査や計画などの業務を官公庁から受注し、成果を収めることで対価をいただき商売として成り立っている。インフラは国民がユーザーとなるため、国民目線での技術提案が必要だが、なかなかユーザーの声を直接聴きながらの仕事はできないのが実状である。
その中でコミニティサイクル事業は、自転車利用者や駐輪場の土地提供者などと直接関わりながら仕事を進めている。当然クレームなどもありきつい場面もあるが、利用者からの「ありがとう」の一言が仕事を進める上での大きなエネルギーとなっているのではないだろうか。ここに紹介した事業運営部のメンバーは、建設コンサルタントの一般的な仕事をするより、プレッシャーはあるかもしれないが、それ以上の「やりがい」を感じているのではないかと思う。

自動車交通の削減を進め、低炭素社会づくりの一躍を担っているコミニティサイクル事業は建設コンサルタントの役割、仕事のひとつとして重要なことと認識している。
中央復建コンサルタンツ株式会社は、今後もこれまでの枠組みにとらわれない業務や事業に取組み、社会に貢献する企業でありたいと考えている。

中央復建コンサルタンツ株式会社
代表取締役社長  兼塚卓也

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