地震応答解析

地震に備える

兵庫県南部地震の際に発生した液状化被害や、東北地方太平洋沖地震による津波被害など、岸壁や護岸、防波堤などの港湾施設も空港施設も地震により大きな被害を受ける可能性があります。そこで、静的安定計算や動的解析などの各種設計だけでなく、地震動の観測や分析・作成も行って地震被害を予測し、被害を軽減するために必要な対策を検討しています。

構造物を設計する上で対象とする地震動は、大きくレベル1(L1)地震動とレベル2(L2)地震動の二つに分けられます。L1地震動は75年に1度の頻度で起こると想定される地震によるもので、この地震動に対しては基本的に被害を生じさせない(性能を満足させる)ことを目指します。もうひとつのL2地震動は、兵庫県南部地震や東北地方太平洋沖地震、最近では熊本地震や北海道胆振東部地震のように、発生する頻度は非常に低いもののひとたび発生すれば甚大な被害をもたらす地震によるものです。このL2地震動に対して全く被害を生じさせないとすると膨大な対策費用が必要になることから、用途や利用頻度及び重要度に応じてどの程度の被害までは許容し、そのためにどういった性能が必要かを検討します。

必要とされる性能の検討にあたっては、ただ対象となる施設だけに着目すればよいというわけではなく、広い視野が必要になります。例えばひとつの港の中には、船舶を係留する岸壁だけでも数多くの施設が存在します。L2地震動によってすべての施設が被害を受けて利用できないとなると、背後地の機能は麻痺してしまいます。一方で、すべての施設が発災後すぐに使えるようにしておくことは予算的に限界があります。このような観点から、L2地震動を受けた後もいつも通りの荷役が行えたり、被災地への緊急物資を運ぶために利用したりできる施設(「耐震強化施設」と呼ばれる施設)に対しては、集中的に費用を投じて地震後の被害を最小限に抑えるような対策を講じます。

また、護岸や防潮堤といった海岸保全施設についても面的な視野が必要になります。護岸の高さを上げて高潮や波浪、津波を防いでも、仮に地震によって施設が壊れて高さが足りない箇所が出てくれば、そこが弱点となって背後地に浸水が生じます。こうした被害を防ぐために、施設単体ではなく対象エリア全体を防護できるように過不足がない対策を検討しています。

主な事例

平成24年度東京港港湾施設整備計画検討調査委託

東日本大震災の教訓と東京都防災会議で示された新たな地震動などの最新の知見を踏まえて、耐震強化岸壁、防波堤、廃棄物埋立護岸の計18施設に対する耐震照査や必要な対策検討を行いました。すべての施設に対してFLIPを用いた動的解析を行い、レベル2地震動に対する耐震性能を満足する対策を講じました。

発注者:東京都港湾局
完成年:2013

広島港海岸中央西地区(江波)(東部)護岸基本設計

広島港海岸中央西地区(江波)(東部)護岸について、レベル1、2地震動に対する耐震性能、地震後に発生する高潮・波浪に対する耐波性能を満足させるために対策断面の検討を行いました。設計に先立ち実施した現地踏査時に常時微動観測を行い、用いるレベル2地震動の適用性を確認しました。

発注者:国土交通省 中国地方整備局 広島港湾空港技術調査事務所
完成年:2012

高松港海岸耐震照査業務

高松港の海岸保全施設33断面を対象に、面的な弱点を把握するために現状の施設の安定性及びレベル2地震動に対する耐震照査等を行い、必要な対策を検討しました。対策案として、薬液注入工法等の地盤改良案や地盤改良に構造的対策を組み合わせた複合案など、多様な耐震補強工法の提案を行い、対策効果の把握と考察を行いました。

発注者:国土交通省 四国地方整備局
完成年:2011

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