大川・中之島の橋梁群 身近な大阪の橋梁景観

雄大な中間部3ヒンジアーチの桜宮橋

身近な橋梁群の歴史的価値

八川 圭司YAGAWA Keiji
環境・防災系部門
環境グループ
統括リーダー

大阪の人々にとって御堂筋、京阪国道(一般国道1号)といった道路は、ビジネス、プライベートで幾度となく往来する慣れ親しんだ道です。それらの日常の道において、大川・中之島に架かる橋梁は、一瞬ふっと気持ちが和らぐ癒しの場所に感じられます。

大川・中之島の橋梁群のうち淀屋橋、大江橋、天神橋、天満橋、桜宮橋は、1930〜1935年に完成した橋梁であり、重要な歴史的建造物として『土木学会推奨土木遺産』に指定されています。大阪中心部の橋梁景観は、19 2 1 年から始まった大阪市第一次都市計画事業によって造られ、約20年の間に150を超える橋が耐震設計を取り入れた永久橋となりました。

大川・中之島の橋梁群 位置図

中之島の名橋〜淀屋橋、大江橋、天神橋〜

かつての大坂は「浪華八百八橋」と謳われたほどの橋の名所であり、中之島には過去と現在を繋ぐ歴史の架け橋とも言える名橋が数多くあります。淀屋橋は、豪商淀屋が中之島に米市場を開いた時の架橋と言われています。大江橋は、元禄期の堂島開発に伴う架橋です。天神橋は、浪華三大橋のひとつで、天満天神社が管理するので天神橋と呼ばれるようになりました。

現在の淀屋橋、大江橋は、1935年完成の南欧中世紀風と評された大谷龍雄氏の作品で、重厚な中に明るさを秘めた鉄筋コンクリートアーチ橋です。同じく天神橋は、1934年に完成した鋼アーチ橋であり、中之島剣先を三つの軽快な鋼アーチが跨ぐ姿は、水都大阪を代表する景観を演出しています。

なお、中之島は、大阪市中央公会堂、中之島図書館等の歴史的価値のある建造物が立地し、まさに水都大阪のシンボルです。そんな中之島を臨む川床「北浜テラス」にはリラックスできるカフェがあり、オープンエアな川辺でのコーヒーは至福のひとときに誘ってくれます。

淀屋橋(鉄筋コンクリートアーチ橋)
大江橋(鉄筋コンクリートアーチ橋)
天神橋(鋼アーチ橋)
川床「北浜テラス」のカフェ

洗練された単純さ〜天満橋〜

天満橋(鋼桁橋)

江戸時代の天満橋は、公儀橋に指定され、幕府が直轄管理していました。橋の南側には東西の町奉行所が、北側には町与力の屋敷等があり、役人の通勤や役所間の連絡に使われていたと考えられます。その後、天満橋は、1885年の大洪水によって流出し、鉄橋に架け替えられました。

現在の天満橋は、2階建ての橋となっており、下部は1935年に完成した当時最大級の桁橋、上部は土佐堀通をまたぐ跨道橋となっています。1935年完成の桁橋は、「伸び伸びとした翼を拡げたような形」が強調されており、桁橋の曲線の美しさが追及されています。上部の跨道橋は、在来の天満橋の上に重ねる形式であり、設計荷重としては旧市電の軌道敷部の荷重と跨道橋の加重を置き換えることにより架設されています。

大阪の人々の原風景の中にある銀橋〜桜宮橋〜

桜宮橋は、1930年に完成した中央部3ヒンジアーチ橋であり、戦前では日本最大のアーチ橋でした。パリのセーヌ川を彷彿とする大川に架かる美しい銀色のアーチ橋であり、通称「銀橋」という名称で大阪の人々に親しまれています。桜宮橋は、夏の天神祭の船渡卸と花火、春の造幣局の通り抜け等、四季を通じて大阪の風景に彩りを与えてきました。

新桜宮橋は、一般国道1号桜宮拡幅事業の一環として、桜宮橋に並んで建設され、2006年に完成しています。この「新銀橋」については、建築家の安藤忠雄氏等による「新桜宮橋デザイン検討委員会」において、21世紀の大阪にふさわしい社会資本としてのデザインが検討されました。

新桜宮橋(新銀橋)安藤忠雄氏(建築家)のデザインコンセプト

昭和5年に架け渡されて以来、大阪のシンボルとして、人々に親しまれてきた桜宮橋(通称 銀橋)。四季を通じて大阪の風景に彩りを与えてきた。夏には、大阪天満宮の天神祭の船渡卸と花火で、春は、造幣局の通り抜けで、遠来の人々にも広く親しまれている。

大阪人の原風景の中のある、この銀橋に隣接して、今回新たに新銀橋を建設する。計画に際し、新しい橋の登場によって、既存の銀橋の魅力もより引き立つ、新旧が対となり、互いに刺激しあうような場所づくりを提案する。

新銀橋の形状は、旧銀橋に倣いアーチ型とし、最高高さ、軸の方向など、様々な要素について、可能な限り旧銀橋の相似形となるよう計画する。ただ、それをつくる技術については、あくまで最新の素材・工法を用いる。おのずと、新橋は旧橋と比べて、スレンダーなものとなるから、それら新旧の橋が、対として並置されることで、現在と旧橋建設当時の技術の違い、その間にある時間的奥行きを表現することが出来る。

旧銀橋は新銀橋とともに、21世紀へと足を踏み出し、次の100年を生き抜いていく。新旧の間に喚起される、時間を超えた<対話>が、大阪の都市空間に刺激を与え、新たな命を吹き込んでいく。

この計画が、近代の大阪を、時間的、空間的に奥行きのある、豊かな都市をしていく、その第一歩となることを期待している。

出典:国土交通省大阪国道事務所HP 銀橋サイト
http://www.kkr.mlit.go.jp/osaka/ginbashi/index.html

橋の歴史と文化を噛みしめて

淀屋橋や桜宮橋といった我々の日常の中にあり、重要幹線を支える現役の構造物について、文化的価値を再認識することは重要です。大川・中之島の橋梁群は、2000年に土木学会推奨土木遺産に指定され、さらに、淀屋橋、大江橋は2008年に重要文化財に指定されました。

大川・中之島に架かる橋を歴史と文化を噛みしめて渡るとき、これらの橋達は、「次世代にも誇ることができる社会資本とは、自分達のように用・強・美を備えたものである」ということを語りかけているような気がしてなりません。

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