CFKは企業理念の1行目に「経営資源である人材の技術力と創造力を結集し、用・強・美を備えた社会資本の整備に関するコンサルティングを行う」ことを掲げています。
一市民として、チームで働く社員として、スペシャリスト・ゼネラリストとして、価値創造集団となるために取り組んでいる継続的な人財育成プログラムを紹介します。
CFKの新入社員育成プログラム
CFKの新入社員育成は育成担当者とのOJTを基本とし、集合研修や現場体験、成果報告会などを行うことで、CFK社員としての素養、技術者としての視野拡大と基礎的なスキル習得を図るものです。
本稿ではその集合研修のうち東京本社研修、特に個人単位で実施するフィールドワークについて取り上げます。
2023年度の東京本社研修(以下、「本研修」と称す)は本格的に夏が始まってきた6~7月に実施されました。首都圏における東京本社の役割と仕事の特性を学ぶことを目的とし、2日間にわたる開催でした。
“首都圏の規模”を体感するフィールドワーク
フィールドワークは本研修の2日目に実施され、ヒトやモノが集中する首都圏の規模を体感すること、設計に従事する者の視点でまちを視察することを目的としています。視察先は土木施設のみならず、建築物や文化施設、街並みなどから各新入社員が育成担当者に相談のうえ、自由に設定しました。
地下神殿への視察

例年、視察先の定番はレインボーブリッジや墨田川クルージングなど、やや行楽地に近い施設であり、同期社員の多くがそのようなエリアへ向かう行程としていました。そんな中、私が選んだのは「地下神殿」の愛称で知られる首都圏外郭放水路(以下、「地下神殿」と称す)です。地下神殿は埼玉県春日部市に位置する全延長約6.3kmに及ぶ世界最大級の治水施設であり、浸水被害が多発していた地域の治水対策として整備されました。そのような地域であるため、東側には江戸川と河川敷、西側には田園が広がっており、同期社員の行き先とは少し毛色が違っていました(写真1)。
地下神殿では毎日見学会が実施されており、この機会に地下神殿の社会インフラとしての意義を学びたいと考えました。
その規模感に圧倒され

メディア等で何度か目にしたことはありましたが、自分視点で見る地下神殿の規模は映像とは全く違うものでした。特に、深さ約70m、内径約30mの第一立坑は浅草寺五重塔がすっぽり入る大きさであり、その立坑の半分以上の位置まで水の跡があったことがまた驚きでした(写真2)。
「見えない」という魅力
あり得ない妄想ですが「これが地上にあったら」と考えました。その意義と引き換えに、おそらく街の風景を損ねてしまいます。地下だからこそ、これほどの大規模施設が存在することができ、その規模をもって人々の生活を支えているのだと分かりました。
地下構造物は地上からは「見えない」場所に存在するため、例えば橋梁のように美観の面での魅力はありません。しかし、「見えない」場所にあるからこそ担える役割があることが地下構造物の魅力であり、意義であると感じることができました。
フィールドワークを振り返って
現場に赴くことの意義は、自分視点で見ることで構造物を肌感覚で捉えられることです。このフィールドワークでは自分の目で地下神殿を見ることで、映像では感じることがなかった「構造物の魅力や意義」に気付くことができました。東京本社から約1.5時間の道のりでしたが、旅疲れ以上の充実感がありました。
東京本社から各視察先へ出発する際、私だけ都心とは逆方向の電車に乗り、ある種の“疎外感”を感じていました。しかし後日、同期から「暑すぎて視察どころではなかった」と聞き、疎外感は“優越感”へと変わりました。私は地下にいたが故に、涼しく快適であったからです。
小倉 淳OGURA Atsushi
構造系部門
地下構造グループ