本社リニューアルとともに、目隠し目的の生垣から解放感あふれる「アメニワ」へ生まれ変わったCFK大阪本社1F東側外構。アメニワを設計した平田氏とコーディネーター重吉が、設計のこだわりとCFKのGREENの未来を語ります。
「雨庭」とは -サイン盤面より-
降った雨水を下水道に直接放流するのではなく、一時的に貯留しゆっくりと地中に浸透させる構造を持った植栽空間のこと。淀川や神崎川の内水氾濫時には浸水が想定されているこの地にアメニワをつくることで、少しでも被害の低減に貢献したい。大阪の厳しい夏の暑さを少しでも和らげたい。在来種を中心に、季節の変化を楽しめる種を植え、中を歩ける設えにすることで、地域にもやさしいみどりに。
CFKのアメニワのかたち
重吉 実和(環境・防災系部門 環境グループ プロジェクトマネージャー)
平田 憲史(株式会社グリーン・ワイズ)
平田:前に来たときよりも草木が茂ってきましたね。
重吉:そうなんですよ。いい感じです。竣工のときと比べると、草丈が高くなり、花もついています。
―夏の強い日差しを受けつつも、爽やかに揺れるアメニワの植物を背景に、穏やかに対談が始まる。
重吉:改めて、平田さんのアメニワに対する熱意やこだわりをお聞きしたいです。
平田:在来種だけを採用し、外来種は使っていません。また、在来種も、湿地らしい趣のある種を選んでいます。
重吉:種の選定以外にも、高木は1本ずつ圃場で選んでいただいており、こだわりが詰まっていますよね。私も圃場に同行しましたが、特にこのアオダモはいびつな樹形ですから、「この個体を選ぶのか」と驚きました( 写真C ) 。
平田:アメニワでは在来種のみを使っているので、整えて作りこむと日本庭園のような硬い印象になってしまうと思ったんです。開かれた明るい場所にしたいという思いがあったので、直立していない樹形にすることで、あまり手を入れすぎていない、自然に生えてきたような雰囲気を出そうと思いました。
重吉:ほかにもこだわりはありますか?
平田:「その場所らしさ」を大事にしたくて、吐水口に、施工時に出てきた石を活用しました。この部分はコンクリートの予定でしたが、より趣が出る仕上がりになったと思います(写真A)。
重吉:アメニワにあるサインも、1TTANにあるテーブル(写真1)を作ったときの残りの木材を活用して、作ってもらいました。捨てられそうだったものが活用されているのはいいですね(写真B)。
アメニワとグリーンインフラ
重吉:今、アメニワでは雨水貯留浸透機能/暑熱緩和機能を計測しています。機器設置の際に動作確認で水を流したところ、かなり雨水浸透能力が高いことが分かりました。
平田:そうなんですね。工事前に測量したときのことが思い出されますね。測量の結果、道路との間の敷地の勾配がアメニワに対して逆向きで、集水範囲がアメニワの範囲だけであることが分かりました。そこで、舗装の敷き直しと併せて勾配をアメニワ方向に変え、集水範囲を広げる工夫をしました。立体駐車場の屋根や社屋東側の壁面プランターに降った雨水もアメニワに流入する設計になっています。機能的にも見た目的にも、雨庭らしいアメニワになりました。
環境・防災系部門
環境グループ プロジェクトマネージャー
重吉:そうですね。数年後に機能の再測定をするのもいいなと考えています。今の結果と数年後の結果、比較してみると面白いだろうと思って。暑熱緩和機能は、樹木の生長に伴って効果が大きくなると予想しています。雨水貯留浸透機能は目詰まりで効果が低下するかもしれませんが…。
平田:植物が育ってこれからどんどん根を張っていくと、土もほぐれて浸透効果も高まると思いますよ。蒸散もされやすくなります。アメニワは、作って終わりではなく、ちゃんと維持して育てていけば、よりよい場所になっていきます。まさにグリーンインフラのいいところです。
重吉:植物があるからこその良さがありますね。今後、アメニワを育てていくときに気を付けるとよいことはありますか?
株式会社グリーン・ワイズ
アメニワをはじめ 大阪本社の外構を設計
平田:今はアメニワが完成したばかりなので関心を持ってもらいやすいですが、今後もこの関心が薄れないように定期的に情報発信するといいと思います。
重吉:そうですね。以前から、開花カレンダーを作りたいと思っています。季節ごとにアメニワを眺めるきっかけになるといいですよね。早春のネコヤナギのかわいらしさや5月頃のシャクナゲの美しさも見てもらいたいです。
平田:いいですね。さきほどアメニワを歩いたとき、チョウが飛んでいました。生き物リストがあっても面白いかもしれません。
重吉:やってみたいです。アメニワに葉が虫食い状態のものがありますが、それはそれで、枯れなければ許容してもよいと思っています。
平田:雑草も、種類によっては自然に生やしたままでもいいかもしれませんね。アメニワに植えていない植物の種類が増えていくのもいいですね。
アメニワから始まるCFKのGREEN
平田:ネイチャーポジティブが推進され、民間事業者による緑化が推奨されている今、アメニワはCFKのアピールポイントになると思います。緑地の認証を取るなど、どんどん活用してほしいです。アメニワは、公益性もあるので、CFKの業態にもリンクしますね。
重吉:そうですね、世の中にグリーンインフラを広げていきたいと考えていますので、アメニワを活用して様々なことに取り組もうと思っています。業務以外でも、例えば、隣の保育園の送り迎えのついでに親子がちょっと寄ってみる。植物や生き物を見て触れて、季節を感じる。そんな場所になるといいなと思います。社内の人にとっても、地域の人にとっても、ちょっと寄ってみたくなる、そんな場所になるようにアメニワを育てていきたいです。
対談者紹介
株式会社グリーン・ワイズ/GREEN WISE Co.,Ltd.
化学肥料を使わず、自然環境に近い状態で栽培された花や植物の美しさを尊び、持続可能なライフスタイルを提案する「スローグリーン」の考えに基づき、人や周りの生き物、環境を回復するための取り組みをされています。
詳しくはこちらから▶ greenwise.co.jp