未来を描くデザイン力 土木学会デザインコンペ『22世紀の国づくりー ありたい姿と未来へのタスクー 』に参加して

1)コンペ出展パネル画「ぶどうが丘から見た富良野の風景」(作イマイカツミ)

デザインへの目覚め

新田 耕司
Nitta Koji
総合技術本部
社会インフラマネジメントセンター
センター長

CFKと社外の多彩な顔ぶれのメンバーからなる『日本人のアイデンティティを活かした交流・創造の舞台づくりチーム』は、100年後にはヒト・モノ・コトのマッチングとコーディネーションの場として、UrbanとRuralが適切な密度で調和することを提案し、それを象徴的に表すイメージとして図1を示しました。また、未来のありたい姿を関西から発信すると提言しました。

万博開催やIR(統合型リゾート施設)誘致が予定されている大阪をはじめ、Urbanの将来像がうまく表現できなかったためか審査員には我々の22世紀の国づくりへのコンセプトが伝えきれず、コンペの結果は入選どまりでした。しかし、この経験が私にとって、ぼんやりとイメージしているものを昇華させるデザインの力を意識する機会となりました。

以下にコンペを振り返り、未来を構想するデザイン力について私見を述べます。

なぜコンペ?

CFKが土木学会初のデザインコンペ『22世紀の国づくりーありたい姿と未来へのタスク』に挑戦することを決めたのは2018年の8月です。CFKのVisionづくりの一環として、若手からベテランまでの意見を汲みつつ、異業種の多彩なメンバーと連携しながら部門横断的な体制で取り組むことが経営会議に諮られ、「やってみなはれ」的に応募することになりました。これまでに培った経験を生かして夢のある将来を描く絶好の機会が訪れたという思いから、提案メンバーは経営陣を中心に構成し、その提案に比較的若い経営支援層以下が忌憚なく意見を述べるという形で活動が始まりました。

本コンペは、部門A、Bの2種類がありましたが、CFKが参加した部門Aは、まず応募する主体(体制)とコンセプトを一次で書類審査され、二次審査ではパネル及び口頭での公開プレゼンテーションにより審査されるものでした。テーマは、①日本の現状及び近未来の課題認識を踏まえた22世紀の国づくりのコンセプトとその実現のための方策、②具体の地域に展開された場合の姿(ケーススタディ)の二つを織り交ぜてより幸せな社会像として描くことでした。

22世紀の国づくりをデザインする

ブレーンストーミング形式で定期的にミーティングを行い、明るい未来や幸せといったそもそも論から、空飛ぶ自動車や環境保全、防災など様々な側面で意見が交わされましたが、なかなか主軸が定まらないまま時間だけが経過しました。ついに締め切り日の2018年9月8日(日)が訪れ、我々の思いをありったけ盛り込んだ提案コンセプトを締切り時間23時59分直前に送付しました。

CFKの人脈を駆使して招集した多彩なメンバーとイマイカツミ氏の素晴らしい水彩画に助けられ、我々のチームは一次審査を通過することができました。しかし、真の挑戦はこれからでした。建設コンサルタントと全く異なる業界の第一線で活躍されている社外メンバーの意見を土木やインフラに結び付け、将来像を描く必要があったからです。

例えば、「防災とは土木と日常を結びつけること」(建築家・景観デザイナー/岩瀬諒子氏)、「もっと水辺に近づきたい」(不動産業・まちづくりプランナー/山根秀宣氏)、「東京よりもほどほどの地方都市の方がいい」(会計士/長谷川太一氏)は、比較的インフラに結び付けやすい意見です。

一方、「人が人を呼ぶ知の力」(エネルギー・文化研究所研究員/弘本由香里氏)、「日本は優れた文化・芸術を捨てた」(芸術家・クリエーター/甲賀雅章氏)、「ITが発達するほど一人でぼーっと考えることが大事」(IT・情報通信業/岡寛氏)、「過度の放置と過度のお節介はどちらもいけない」(医師/裵英洙氏)、「日本は先人からのギフトを活かせていない」(クリエイティブエージェント/寺井翔茉氏)、「フランスでは大都市パリ離れが始まった」(ビジネスコンサルタント/ヴァンソン藤井由実氏)などは、私を含め多くのエンジニアが普段意識していない意見です。

社内の意見だけでは将来の国土づくりが土木やインフラに偏った表現になりがちでしたが、社外の方々の意見に助けられ、最終的に近未来の日本が抱える課題を、量としての“人口減少”、質として没個性化しつつある“地域文化”の2つに絞り込みました。

課題解決は、個々人が幸せと生きがいを感じながら人生百年が全うできることを第一に考え、“出生率向上”、一身二生時代のための“共助”、グローバリズムにより益々迫られる“日本人のアイデンティティ”を主軸とすることにしました。課題解決方策としては、都市より地方の出生率が高い傾向にあり、都市集中が是正できる“地方分散・定住”、人と人の出会いや女性の時間の自由度向上が期待できる“交流の場づくり”、土地の記憶や魂を残しつつ交流から融合と変換による“地域文化の創造的イノベーション”の三つを掲げ、次のように提言しました。

①22世紀の日本は、都市と自然のバランスが再調整されることにより、多様な生き方の選択が可能な22世紀型人間都市が各地で形成され、国全体が交流・創造の舞台となっています。

②都市と自然のバランスの再調整は、日本海、瀬戸内海、太平洋に囲まれ、琵琶湖を擁するセミラティスな地域構造による歴史・文化が根付く関西から発信します。例えば、北海道からの北前船による食文化(出汁文化)をはじめとする多様な文化が古くから融合している、ビジネスの基本である近江商人の三方よしの理念が今でも息づいている、などです。

③22世紀型人間都市は、築き上げてきた文化・歴史とこれから変化し発展する文化・未来を繋げるインターフェースとしての重要な役割を築土構木(土木)が担い続け(図2参照)、各地で独自の新第六次産業“医食農同源”が形成されているに違いありません。

ここで、図1と一次審査の際に提出した水彩画について少し触れます。水彩画は、既にルーバン(RuralとUrbanを合成させた造語)を標榜する富良野市に在住されている画家イマイカツミ氏の作品です。私が富良野のペンションにあった画集の文章と水彩画に共感し、画集中の絵画の使用許諾と新たな描き下ろしを藁にもすがる思いでお願いしました。この水彩画は、陳腐になりがちな未来図を描くより我々の考える未来構想が伝わるに違いないと確信した一枚です。

2)提言した課題と課題解決方策の連関図

未来をデザインするエンジニアに

今回の我々の挑戦は、15件の応募作品から6作品の入選作に選ばれたものの、最優秀賞にまでは届きませんでした。

しかし、モノづくりに携わるエンジニアには、思考・志向する、まとめる、見(魅)せる、伝えるといった様々なデザイン力が求められることを再認識できました。また、既存のモノを含めたまち再生には、場所、歴史、文化を意識しながら未来をデザインする重要性も認識しました。22世紀の国づくりを考える機会は、私のエンジニアとしての気づきと刺激となり、大きな収穫となりました。

最後に、22世紀の日本の姿に繋がる意見をいただいたチームの社外メンバーの方々と未来を語ることができる絵画を提供していただいたイマイカツミ氏にこの場を借りてお礼を申し上げます。

CFKのコンペ提言:日本人のアイデンティティを活かした交流・創造の舞台づくり~関西からの発信~

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