家電製品のトリセツを熟読すること
家電製品を買うと、必ずトリセツ(取扱説明書)がついてきます。そこには、必ず「お手入れ」のページがあり、私は必ず熟読しています。私のお手入れチェック対象は、家電のみならず家庭生活に密着するもの(車、自転車などがその例)全般であり、その確認手段はトリセツやインターネット情報です。動機としては、そもそも長持ちさせたいという貧乏性があることもさることながら、きちんとメンテナンスをしてその性能をフルに発揮させたいからです。「製品を買うとトリセツが付いてくるということ」は、設計者や製造者がその性能を発揮させる扱い方や性能維持できるメンテナンスを提示していることであり、設計思想やその製造方法が色濃く反映されていると思っています。
一方で、高額なものほどトリセツが少なくなってくることにお気づきでしょうか。一般的にトリセツのある最も高額なものは車ではないかと思っていますが、それ以上高額なものとなるとなかなか思いつきません。身近なところでは、住居(家やマンション)のトリセツというものを少なくとも私は見たことがありません。
インフラのトリセツって?
CFK が主たる生業としているインフラ分野ではどうでしょうか。発注者(一般に所有者)がそのインフラの管理をしていることになっていますが、その実際は国などが発行する管理基準に基づいてメンテナンスを行っており、所有するインフラの種類、用途、材質、形式(形状)などに応じて臨機応変にアレンジされているものと考えています。時には発注者が外部に委託する場合もあり、その際には建設コンサルタントが登場し競争や提案を行うことになります。これらのプロセスの中で、私はトリセツというものの概念はないと思っています。メンテナンスの手順、判断基準などは存在しますが、そのインフラの完成以降どのように扱えば性能を出来るだけ高く長く発揮させるのか、の視点が明確ではないと思います。土木構造物はそもそもメンテナンスフリーを目指しているから、との意見もあろうかと思いますが、性能確保と劣化は常に相反するものなのに、そのような視点が供用開始からもっとあってもよいと考えます。
インフラ構造設計者が作るトリセツ
CFK でもインフラの構造設計を行っていますが、その成果品は、計算書、図面、報告書の類であるものの、供用してからのトリセツは作りません。
構造設計者は、その設計プロセスにおいて、作用(荷重や地盤)、材料特性(どんな材料か)、応答(どのように変形するか、動くか)、安全性(許容値に対しての余裕)などを把握しており、想定する作用(使い方)に対して厳しい箇所、想定していない作用があればどのような現象が起こるか、などを容易に想定できるはずです。これを踏まえれば、その構造物毎に「お手入れ(メンテナンス)」すべき優先順位やその方法も立案され、供用開始から臨機応変なメンテナンスが可能となり、その結果として性能確保が長期化されるはずです。もちろん明確な設計思想の理解が前提です。設計成果の報告書はそれに近い存在ですが、主として設計思想とプロセスの記載であると考えられ、もう一歩踏み込んで供用開始からのトリセツを設計者が作成してもよいのではないでしょうか。
KUROTORI Yoshinori常務取締役
経営企画本部長