
中国の長距離バスターミナルは大規模なものが多く、基本的に乗降施設、巨大な待合室、バス関連施設(停車車場、検修施設等)が一体となっている

中国では近年、高速鉄道などの鉄道網がかなり整備されていますが、広大な国土をカバーするにはまだまだ不足しており、現在でも旅客輸送の主力はバスが中心です。都市間を移動する長距離バスが多くあり、北京から上海や広州など数百キロも離れた大都市を結ぶ路線から、近隣の小さな県レベルの都市へ通じる路線などいろいろあります。
けれども、北京周辺では鉄道整備が進んでいることに加えて自家用車利用も増えてきたので、昔よりはずいぶんと利用は減ってきています。今回は北京の長距離バスの利用状況、実際のバスターミナル等について紹介させていただきます。
北京市の長距離バスの利用状況

北京には10か所の長距離バスターミナルがありましたが、鉄道整備や自家用車利用が進んだ結果、長距離バスの利用者は減少し、2016年と2020年には二つのターミナルが閉鎖されました。10年前は年間13億人の利用者がありましたが、コロナ前の2019年では半分以下の4.8億人/年、コロナ後の2021年はさらに半分の2.8億人/年となっています。また運行も大きく変わってきました。鉄道や飛行機での移動が便利になった省都等の主要な都市への直通長距離バスの運行は極めて減少し、ほとんどは鉄道が整備されていない小さな都市への路線になっています。
長距離バスターミナルの実態
中国の長距離バスターミナルは利用者数によってランクが分けられています(2020年の最新基準に基づく)。どれも、大きな券販施設、改札施設(荷物検査施設)、広い待合室を持つ小さな空港のような施設です。
一級駅:5,000人/日以上 または2,000人/日以上で観光駅、国際駅、鉄道併設駅
二級駅:2,000~5,000人/日 または1,000人~2,000人/日で観光駅、国際駅、鉄道併設駅
三級駅:300~2,000人/日
便捷駅:施設が簡易な駅
級が大きいほど、いろいろな施設(タクシー乗り場、市内バス乗り場、車両検査施設、従業員宿舎等)が必要になり、規模が大きくなります。最近はコンパクトな駅も整備されています。
次にCFK北京の近くの長距離バスターミナルを2つ紹介します。
(1)「四恵」長距離バスターミナル(面積 1.5ha)

2012年に建て替えられた比較的新しい長距離バスターミナルです。主に中国の東北3省への運行が中心です。ターミナルは二階建てで、地下鉄からの乗り換えが便利で、非常に利用しやすいターミナルです。
一階:切符売り場、待合室(400人分)、サービスカウンター、改札口(長距離バス乗り場)
二階:事務所、地下鉄駅へのアクセス通路(地下鉄駅は幅約60mの道路を挟んだ北側)
(2)「八王墳」長距離バスターミナル(面積 1.17ha)

北京から天津市、河北省、山東省、遼寧省、吉林省等の多くの省、市への路線が運行しています。このバスターミナルは近くに地下鉄駅がなく非常に不便です。スペインの大手バス会社ALSAグループと北京交運公司の合弁会社が、長距離バスの運行とターミナルの運営を行っています。メルセデスベンツ製の高級ビジネスバス等を運行させていて、高級さを売りにしています。コロナ以来利用者がかなり少なくなっています。写真を撮りに行った時は中国の連休である中秋節※1)の直前で、本来なら大混雑なのですが、利用客は4人しかいませんでした。
※1 中秋節(ちゅうしゅうせつ)とは旧暦の8月15日にあたる日で、春節・端午節と並ぶ中国の代表的な節句の一つ。月餅 や瓜、果物を庭に並べて月に供え、一家団欒を楽しむ。里帰りをする人が多い。
最後に
高速鉄道、航空の急速な発展に伴って、長距離バス輸送は徐々に減少し、もはや人々が外出する際の第一選択ではなくなり、長距離バスターミナル数も減っていく傾向にあります。しかし、地方や村の人々、そして高速鉄道がまだ開通されてない都市にとっては重要な交通手段であり、やはり存在意義はあります。
北京ネットワーク:中国の情報を社内向けに定期的に発信しています。本記事はその一部を紹介しています。