建設コンサルタントはどうあるべきか【後編】

3.建設コンサルタントの価値と対価

建設コンサルタントの新しい価値、生き方、すなわちビジネスを考える上で、その対価は避けられない話題です。
ここでは、建設コンサルタントの価値に対する対価について、その支払われ方、発注方式について考えます。

対価の支払われ方

対価の支払われ方については、日本の建設コンサルタントの契約では、成果物に対して報酬が予め決められていて、納品後に支払われる成果報酬型が主流となっています。その他に、仕事を遂行する工数や時間に応じて報酬が発生する履行割合型があります。海外のプロジェクトでは、この履行割合型が採用されていることが多いです。

当初予定している成果を実現できるかを事前に見通すことが難しい仕事を成果報酬型で契約するのは、受注者にとってリスクが高いものとなります。受注者のリスクが高ければ、その対価はリスクを含めた形で高くなるのが、市場原理です。対価が無用に高騰することは、発注者にとって好ましくないことでもあります。

対価の支払われ方

成果報酬型
成果(仕事の完成)に対して固定的な対価を支払う方式。

履行割合型
成果に対して対価を支払うのではなく、過程(委任事務の処理)に対して対価を支払う方式。

最近では、様々な行政課題に対応するため、成果連動して対価が決まる方式(成果連動型民間委託契約方式)というものもでてきており、対価に対する考え方も多様化してきました。建設コンサルタントにおいて「新しい役割」、「新しい仕事」を考えていく上では、発注者、受注者ともに納得のいく、互いにインセンティブの働く対価の支払われ方を考えることも必要です。

コンサルタントへの発注方式

海外各国での公共調達は、その国独自の成り立ちはあるものの、場面に応じて適切な発注方式を選択するのが普通です。選択する発注方式は概ねQBS方式とQCBS方式に分けられます。いずれも、最も優れた提案を行った者に対して、契約交渉権を与え、対価を含めてこの「交渉」というプロセスを踏まえて、契約します。

海外でみられる発注方式

QBS(Qualification-Based Selection)
発注者が公告のうえ技術的に最も優れた提案を行った者を契約交渉の相手方とする方法。

QCBS(Quality and Cost Based Selection)
競争参加者の能力や経験、技術提案(プロポーザル)の内容の評価 (技術評価)と見積金額(価格評価)を総合的に評価することにより、発注者にとって最も有利な提案を行った者を契約交渉の相手方とする方法。

日本の建設コンサルタント業務の発注方式は、かつての指名競争入札(価格競争)から、技術競争を踏まえたプロポーザル方式、総合評価方式へ変化しました。しかしながら、いずれの方式でも対価等に対する「交渉」というプロセスは実質的にはほぼない、と言えます。

日本国内でみられる建設コンサルタントへの発注方式

一般・指名競争入札
価格競争によって、受注者を選定する方法。資格要件を満たす者のうち、参加申し込みを行った者で競争させる“一般”、発注者が指名を行った特定多数の者で競争させる“指名”の二つがある。

プロポーザル方式
技術評価によって、受注者を選定する方法。事前に予定価格が提示される等、価格が与条件となっていることが多い。

総合評価方式
価格と技術(品質)を総合的に評価して落札者を選定する方式。

このことは、予定されている発注額(予算)の中での技術提案となり、プロジェクト全体としてより良いものとなる提案であっても、予算の関係であえて提案しない可能性が生まれます。あるいは、業務内容の一部を先送りにし、大幅に見直して、予算に収めるという大幅な変更等は、話し合いである「交渉」という手段でないと実現は難しいと思われます。日本人は、交渉が苦手と言われており、技術者としては、このような契約交渉等にあまり時間をかけたくないと思うかもしれません。しかし、より良いもの、新しい事を提案するには交渉というプロセスも場合によっては必要ではないでしょうか。

適切な対価を得ること

建設コンサルタント業務の成果の良し悪しは、プロジェクトの品質やリスクに多大な影響を及ぼします。だからこそ技術の安売りはしたくはありません。自分たちの技術に誇りと責任をもって仕事をしていきます。

4.建設コンサルタントとしてのCFKの新たな取組み

CFKは、77年培ってきた技術と経験を糧に、建設コンサルタントの新たな役割や新たな顧客の開拓に取り組んでいます。2023年5月に、この開拓に取り組むイノベーター集団として、新たに「未来社会創造センター」を組織しました。

プロジェクトを実現するマネジメントの重要性

駐車場配置と道路縦断の調整

ひとつの社会インフラプロジェクトを実現するには、構想から計画、設計、施工、維持管理の段階まで、多くの段階を経る必要があります。どれだけすばらしい青写真を描いても、それぞれの段階をマネジメントしていかなければプロジェクトは完成できません。

例えば、現在、CFKのPM・CM室が宮城県女川町でプロジェクトマネジメント(PM)に取り組んでいる女川第一小学校跡地の地域拠点整備プロジェクトを例に、学校跡地に新しい社会教育施設とこども園を「つくる」ための計画・設計段階のマネジメントにおいて、何が必要かを考えてみます。

その土地は誰のものなのか、土地の改変により雨水の流出が大きくならないのか、土砂災害の危険区域はどの範囲なのか、もしかして埋蔵文化財の包蔵地かも、地盤はどんな感じなのか・・・あれっ大雨が降ると水がしみ出してくるぞ、線路が近くを通っているので工事の事前調整が必要だ、雨水排水の暗渠管も埋まっているから避ける方法を考えないと・・・といった具合です。

この女川町でのプロジェクトでは、「つくる」ための議論だけでなく、「つかう」ための議論もコーディネートしています。例えば、こども園の送り迎えの保護者はどのような動きをするのか、またその利用動線を安全かつスムーズにするには駐車場はどうあるとよいのか、屋内と屋外の遊戯施設として何を配置するのか、上履きと下足の境界線はどうするのか・・・。

これらの施設は、利用者の利便性だけではなく、施設を運営する者が管理しやすく、各種プログラムを運営しやすい施設であるべきです。このため将来の主要な利用者や運営にあたると想定される方々からも意見をお聞きし、建築設計者と共に議論しています。

未来社会創造へのCFKの取組み

CFKの技術者が取り組む新たな役割(A~D)

これまでの建設コンサルタントの業務の主体は、プロジェクトの計画や構造物の設計でした。上記に加えて、CFKは建設コンサルタントの「新たな役割」を開拓するため、海外でみられる発注者の代理人としてプロジェクト実現のために構想段階から維持管理段階までの「プロジェクト全体」をマネジメントするPM・CMの役割、公と民の間に立ち「社会インフラをつかう」側の市民の声を捉え代弁するコーディネーターとしての役割にチャレンジしています。

よりよい社会を実現するためには、行政などの公共(公)だけ、民間(民)だけでは成立しない事業があります。これに対応するために、公と民が連携し、足りない部分を互いに補完しあうことはできないでしょうか。

我々、建設コンサルタントの強みは、公の立場、民の立場を知っていることです。CFKは、公と民をつなぎ、公の事業に民間の事業を取り込み、民の事業に公共性を取り入れるコーディネーターとして活躍できないかと考え、「公民連携まちづくり室」を組織し、その新たな役割に取組んでいます。

最後に、新しいビジネスモデルを構築する上での課題の一つに、我々の仕事に対して適切な評価、対価を如何にして得るか、があります。公民連携のまちづくりにおいては、これまでにない「新たな顧客」として、事業そのものから対価を得るビジネスモデルの可能性を模索しています。

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