渋谷デッキプロジェクト
Project Story . 01

大型歩行者デッキ付け替えに挑む

渋谷デッキプロジェクト

平成25年から平成30年にかけて再開発が進む、渋谷。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエなど渋谷の新しい顔となる建物が次々とオープンすると同時に、駅や駅前広場なども一新しています。JR、東急電鉄、東京メトロ、京王電鉄の四線が乗り入れるターミナル駅である渋谷駅の乗降客数は1日324万人。国内はもちろん海外からの観光客が多く訪れる渋谷は、日本の顔とも呼べるエリアです。

しかし渋谷駅周辺は、幹線道路によって駅と市街地が分断されており、歩行者にとって決して利便性が高いとは言い難い状況が続いていました。再開発では、東口と西口の歩道橋の架け替えが決定。CFKでは、「渋谷駅東口歩道橋」の架け替え詳細設計として、既設橋の撤去設計、新設橋の詳細設計、全般の施工計画を担当しました。

困難な現場こそ、CFKの総合力を発揮できるフィールドです。

 

坂本眞徳
構造系部門 橋梁・長寿命化グループ
統括リーダー

生き物のように日々、進化を続けるまち渋谷。その東口にある歩道橋の架け替えに、CFKは部署横断のプロジェクトチームで挑みました。メンバーは18名。橋梁、建築、道路、地下構造、電気、三次元設計などさまざまな部署から精鋭を送り出し、一致団結して臨んだプロジェクトです。

世界有数の乗降者数を数える渋谷駅。駅と市街地を結ぶ歩道橋の利用者数も、1時間あたり5000人(ピーク時)近くにも及ぶ大型歩道橋です。通常、歩道橋の架け替えは、既設橋を撤去したのち新設の歩道橋を架けます。しかし渋谷駅周辺の動線をなくせば、歩行者に多大な影響を与えてしまうことになります。そのためCFKは、人の動線を確保しながら段階的に架け替えを行う施工方法を提案し、その実現に向けて関係機関との協議を重ね、各設計に反映いたしました。

通常工事のように一気に架け替える場合は、歩道橋を大型クレーン車で運ぶことができます。しかし今回は、段階的な架け替えです。歩行者の動線や車両の交通を妨げずに架け替えるためには、人通りや交通量の少ない夜間に工事を実施する必要がありました。また幹線道路や複数の鉄道が乗り入れる渋谷駅東口は、大型工事車両が通れるような道幅や高さが十分に確保できないという課題がありました。

そこでCFKが考えた施工手法は、現場近くの道路内(明治通り)に小ブロックの部材を大ブロックに組み立てる地組ヤードを設け、大ブロックの部材を移動台車に乗せ、深夜の渋谷をゆっくり進みながら架けていくというものです。現場近くで地組立てをして移動運搬し架ける方法は、大きな橋を架ける際にはよく使わる手法です。しかし、都道内を地組ヤードとする事例はこれまでなく、ましてや交通量の多い渋谷ではもちろん前例はありません。そのため、当初は警視庁から難色を示されました。

しかし国道246号と明治通りの交差点内にあって、東口周辺の動線を確保したまま歩道橋を架け替えるには、この手法しかないというのがCFKの結論でした。そのため、人の動線を確保しながら安全に架け替えるにはこの方法しか無いことを、警視庁に対して丁寧に資料作成し、根気よく説明しました。

前例のない手法を用いた架け替え工法にも関わらず、大都会、渋谷でGOサインが出たのは、まさにCFKの総力を結集したからこそだと考えます。橋梁、道路設計、地盤判断、三次元設計など各分野のエキスパートを社内に抱えているからこそ、安全で合理的な回答を導き出すことができたプロジェクトだと自負しています。

業界トップクラスの技術を誇る三次元設計で、お客様の信頼を得ました。

 

中山 健
構造系部門 橋梁・長寿命化グループ
サブリーダー

プロジェクトチームの中で、私は関係各所との協議、調整を主に担当しました。前例のない工事だったため、警視庁や東京都、区役所に工事手法の安全性と合理性を説明することが不可欠でした。

渋谷駅は大型ターミナル駅であるがゆえ、線路や道路、水道管、ガス管など地上にも地下にも様々なものが張り巡らされています。こうしたものを壊すことなく、歩道橋の撤去・新設を行う必要がありました。

そこでCFKで採用したのが、三次元設計。3Dでガスや水道、地下鉄線路などを全てモデル化し、完成予想図を制作していきました。いくら言葉や平面図を見せてもイメージを掴みにくいため、本当に安全なのかはなかなか理解してもらえません。しかし3Dモデル図を見せることで、関係各所に納得してもらうことができましたね。

また歩道橋に付いている信号や監視カメラの付け替えにも、関係各所との協議を繰り返しました。1年以上に渡り段階的に架け替えるため、信号や監視カメラの位置を適宜移動させなければなりません。「付け替えた信号は、きちんと運転手から見えるのか?」、「監視カメラは現況と同じように見えているか」など平面ではわかりづらいことを、三次元設計を用いて誰でもわかるように示して、説得していきました。

業務期間中は週1回以上の頻度で協議を行いその資料を作成していました。こうした地道な協議は目立ちませんが、プロジェクトを裏から支える大切な仕事です。関係者が多いため意見が異なることもあり、調整は大変ではありましたが、CFKの人と技術を結集したからこそ完遂できたプロジェクトとして誇りに思っています。

新設歩道橋(東口デッキ)モデ
新設歩道橋(東口デッキ)モデル
新設歩道橋(東口デッキ)モデル
新設歩道橋(東口デッキ)モデル

プロジェクト成功のため、部署を超えて団結する。それがCFKスピリットです。

 

渡邊 隆
鉄道系部門 建築グループ
統括リーダー

車両や歩行者の動線を確保しながら工事を実施するため、通常の架け替え工事よりも困難を極めました。一気に橋を架け替えるのではなく段階的に進めるため、工事中も常に階段やエレベーターも使用できる状態を保たないといけなかったのです。そのため建築グループでは、橋梁・長寿命化グループと連携して、工事中の仮設エレベータの計画・設置を担当しました。

仮設エレベーターを設置する目的は、工事のため撤去した常設エレベーターに変わり、駅から市街地への歩行者の動線を確保することです。まず取り掛かったのは、橋梁・長寿命化グループとの協議。どこにどのサイズのエレベーターを設置するのか、図面を元に検討していきました。その後、消防署や警察署、区役所と協議。勝手にエレベーターを設置することはできないので、関係各所と協議しながら、安全性や利便性を確認しながら設置に向け調整を進めました。

仮設エレベーターを設置する際に気をつけたのが、デザイン性と機能性のバランスです。「この場所に設置したら夏場、熱気が篭もらないか?」、「外壁のガラスの清掃管理は手間にならないか?」など運用後のことも考えて設計しました。計画段階から決まっていたデザインを踏襲しつつも、構造物として安全で耐久性のあるものにしていくところに苦労しましたね。

また外壁の設計や橋梁との接続部分の調整が、仮設エレベーター設置には不可欠です。ここをスムーズに行うことができたのは、CFKに建築や橋梁、設備設計など様々な専門家が在籍しているからこそできたと考えます。部署やグループを超えて、一つのプロジェクトを成功させたいという一致団結する強い気持ちこそ、CFKに長年受け継がれてきた強みに思います。