那覇-名護を1時間で結ぶ、沖縄初の鉄道を走らせたい「沖縄縦貫鉄道プロジェクト」
Project Story .02

那覇-名護を1時間で結ぶ、沖縄初の鉄道を走らせたい「沖縄縦貫鉄道プロジェクト」

日本で唯一、鉄道が存在しない県である沖縄県。県民は自家用車とバスを主交通としているが交通渋滞が慢性化しており、沖縄縦貫鉄道の建設は長年、県民の悲願とされてきました。しかし県土の狭さや黒字化の目処が立たないことなどから、計画は具体化せぬまま今日に至っています。

 

2003年には、那覇空港~首里を結ぶ「沖縄都市モノレール(通称・ゆいレール)」が開通。県民の足として利用される他、観光客の利用も伸びています。しかし速度が遅く、輸送力も小さいモノレールだけでは県内の広域的な公共交通輸送を担うのは難しく、、沖縄本島の南北を結び、速達性の高い都市間輸送を可能にする基幹的な公共交通ネットワークとして、沖縄縦貫鉄道は、今も求められ続けています。

CFKは平成24年度より沖縄県から委託を受けて、プロジェクトチームを結成。沖縄縦貫鉄道の実現可能性の調査から計画、設計までを担当しています。

できるかできないかではない。できる方法を考えて、実行するのがCFKです。

細川 寛
東京本社 鉄道系部門
ゼネラルマネージャースタッフ

CFKに積み重ねられた実績と信頼があるから、私も夢のある仕事ができるんです。

佐藤 芳樹
鉄道系部門 鉄道グループ

「那覇-名護を1時間で結ぶ鉄道を実現し、県土を発展させたい」。それが沖縄県の思いでした。那覇と名護は直線距離にして約50km。三宮-京都が約60kmですから、これよりも短い。大都市圏では全くの通勤圏です。にも関わらず、沖縄では移動手段として車とバスしかなく、交通渋滞は日本一といわれています。県内の企業の中には、名護から那覇の異動は転勤扱いになる会社もあると聞いたことがあります。子供達が高等教育を受ける機会を失ったり、日本一といわれる小学生の肥満の問題も交通の問題と無関係ではないでしょう。脆弱な交通体系が、経済活動だけでなく教育や健康にまで影響を及ぼしている。これが沖縄県の課題だと考えます。

沖縄本島は南北に長く、人口の6割以上が那覇市周辺に住んでいます。南部に人口が偏っているため、南北を縦貫する鉄道を走らせたとしても黒字化は難しい、という見解がかねてよりありました。しかし、沖縄県全体が発展を続けるために、県土構造の骨格となるインフラストラクチャーをつくりたい。それが沖縄県の強い願いだったのです。

鉄道は、土木や建築だけでなく、軌道、車両、電気といった技術分野も含めた総合システムにより成立しています。よって、プロジェクト遂行にあたっては、CFK社内の各部門のメンバーだけでなく、社外の専門家や大学教授を加えたジョイントベンチャーによるプロジェクトチームを立ち上げました。本プロジェクトは、那覇-名護を1時間で結ぶ鉄道をつくるという目標以外、ルートも導入システムも白紙の状態からのスタートです。沖縄県の今後50年、100年の発展を見据え、交通体系、観光、まちづくり、産業など複数の視点から、南北鉄軌道に求められる役割を検討し、整備効果や収支採算性を考慮しながらルートやシステム等について、ゼロから調査、検討していきました。

那覇-名護間は、鉄道ルートにすると約70kmです。これを1時間で結ぶためには平均70km/hのスピードが必要です。途中駅に止まることを考えれば、最高速度は100km/h以上のシステムが求められます。一方で、特に北部のエリアは、どうしても需要が少なくなる。観光で有名な西海岸のエリアはありますが、観光だけでは需要の大幅な増加が期待できません。収入が大幅に増えない以上、採算を確保するためには、整備コストや運営コストを削減する必要があります。よって、私たちはこの2つのコスト削減を実現するシステムの導入を検討しました。

整備コスト削減の方法としては、車両の小型化を考えました。那覇-名護を結ぶ予定ルートには、トンネルや高架橋の区間があります。車両が小型化すればトンネルの断面積や高架橋の規模を縮小でき、整備コストの削減につながります。しかし現在国内で走っている小型の鉄道は、様々な種類があるものの80km/h程度のスピードしか出ません。当然輸送力も小さくなります。沖縄の場合、需要予測結果から、輸送力は小さくても問題はなかったのですが、スピードの問題は、那覇-名護1時間が至上命題である以上、ゆずれません。

そこで私たちは、鉄道車両の専門家等も交え、すでに実現化している既存の技術を応用して、時速100km以上スピードを出せる小型の鉄道車両が技術的に十分実現可能であるとの提案をしました。さらには、ドライバーレス運転や無線信号システムなど世界的な潮流である新しい技術の採用も積極的に提案しました。これらの技術は運営コストの縮減にも寄与するものです。沖縄の鉄道は完全な新線ですから、世界から注目を集めるような最新の技術、最新のサービスを実現する鉄道であってほしいと思っています。

導入システム以外にも、事業の採算性確保に向けて、整備コストの縮減を図る駅の構造の提案や、新たな整備制度の提案などを行いました。本プロジェクトは、もともと採算面等から実現は難しいと言われる中でのスタートでした。そこで、私たちは、鉄道の計画から設計まで一連の業務をこなすCFKの技術力だけでなく、社外の知も結集し、自分たちに求められていることは「できるかできないか」を導くことではない、「どうしたら実現できるか」を考え、提案することだという姿勢で取り組みました。プロジェクトの推進力となったこの思いこそ、創業時からCFKに脈々と受け継がれてきた強みだと思っています。

また、計画をモノとして具現化するためには、様々な周辺環境を踏まえて、構造物の大きさなどのあるべき姿を示す必要があります。計画は立派でも実際に作れなかったら意味が無いですから。CFKはこれまでに多くの鉄道構造物を設計した経験があるので、社内のネットワークを駆使し、その経験を踏まえ、実現可能な構造物の計画を示すことができます。

鉄道計画の仕事は、計画から完成まで20年、30年を要する息の長い仕事です。計画で終わってしまうプロジェクトもたくさんありますが、やはり計画が実現したときの喜びを味わえることは、コンサルティングエンジニアの仕事の醍醐味の一つではないかと思います。個人の名前は残りませんが、まちに構造物として目に見える形で立ち現れる。それを見たときに、そのプロジェクトの関わった多くの人たちがそれぞれ自分の思い入れのある部分で「私がやった仕事だ」と胸を張って言えたらいいですよね。

沖縄縦貫鉄道のプロジェクトは、私にとっては現役最後の大プロジェクトだと思っています。沖縄縦貫鉄道を実現させ、この目で沖縄の人々また沖縄を訪れる人々が喜ぶ姿を見ることができるよう、私たちも一緒に走り続けます。