空間情報をマネジメントする

過去20年を振り返って

髙田 真治TAKADA Shinji
環境・防災系部門
測量・補償グループ
統括リーダー

測量分野の技術革新は目覚ましいものがあります。20年前、測点の2次元データを精密に測定するためにはアメリカの人工衛星「GPS」のみ利用していました。2011年5月から他国の衛星も含めたことから「GPS」の名称を「GNNS」に変更して、より精度の高い位置測量が出来るようになりました。また、1994年より電子基準点が設置され始め、現在全国に1300点が約20km間隔に配置されるようになりました。大きな地震が発生したとき、即日のうちにどの方向に何cm移動したかをテレビ等で聞くことがあります。これは電子基準点データから得られた結果です。CFKにおいても、山間部及び海岸部等の測量作業において基準点がない場合に、この電子基準点データを活用しています。さらに、水準測量においてはバーコード標尺を読み取る電子レベル(写真1)の登場で、読み取り誤差が無くなり熟練技術者でなくてもスピーディーに測定できるようになりました。ほんの30年前まで、望遠鏡から標尺数値を野帳に書き込みしていた時代とは雲泥の差で、測量技術の発展には目を見張るものがあります。CFKの測量部門においては常にこれらの技術を取り入れ、業務に活用してきました。

1)電子レベル

また、この20年間の間の大きなトピックスとして、2002年に「測量の基準」が日本測地系から世界標準である世界測地系に改正されたことが挙げられます。この改正による移行作業、座標変換作業なども実施しています。

補償分野の業務は社会環境の影響を受けながら、その時代に即した事業運営を行ってきました。

大型の市街地再開発事業・区画整理事業等が減少傾向にあり、CFKとしても1998年ごろをピークに物件補償の業務量については減少傾向にありますが、代わって事業損失の業務量が、年々増加している傾向にあります。公共事業の施行にともなう騒音・振動・日照阻害・水枯渇(汚濁)・地盤変動・電波障害などの「事業損失」の問題は古くからありますが、周辺地域での土地利用の高密度化、地域住民の権利意識の高まりなどと共に、CFKの総合建設コンサルタントの強みを活かして業務の幅を拡大している状況です。

鉄道高架連続立体交差事業

2)完成後の南海本線泉大津連立事業

CFKは、鉄道の連続立体交差事業に対して鉄道・道路・建築・環境・地盤・測量と幅広く関わってきました。このうち泉大津市の南海本線連続立体交差事業は、府道富田林泉大津線から大津川右岸まで約2.4km区間の鉄道高架化事業(写真2)と都市側道路の整備事業であり、2017年夏に完了しています。この事業に1996年から参画し、測量分野においては基本図面作成に始まり、用地取得後の管理図面作成及び工事に係る測量の作業に携わりました。現在も、鉄道高架完成後に行う管理協定図書作成に貢献しています。

用地管理図のデジタル数値地図化

測量分野におけるもう一つのビッグプロジェクトは、南海本線(難波駅~和歌山市駅間:70km)用地管理図のデジタル数値地図化作業です。約15年の歳月をかけて数値地図の用地管理図作成に携わってきました。このプロジェクトは鉄道施設内という制限の中で測量作業を行うため、作業員の安全を第一に考え、決して無理な工程を引くことなく、しかも用地管理の知識を持った熟練者を配置することにより、無事故かつ円滑に遂行中です。この間、世界測地系へ移行されたことによる図面編集を実施しています。

外環状鉄道日照阻害補償業務

おおさか東線の南区間(放出~久宝寺)の高架化等鉄道整備事業においては、放出駅から俊徳道駅間および俊徳道から加美駅間の日照阻害補償業務を当社が担当し、2006年から沿線周辺地域の日照阻害に係る沿線対応を始めとして、方針検討(対象地域・範囲・家屋の検討、費用負担基準単価の作成、気象データの収集)・測量調査・間取調査・日照チャート図作成・費用負担の算出に加えて、被補償者に対しての費用負担説明業務も担当しました。冬至日の高架の日陰状況(時間)を理解していただくことは、非常に困難でしたが、出来るだけわかりやすい説明資料・Q&A作成し、100件を超える権利者に対して説明を行いました。2015年から北区間(新大阪~放出)についても日照阻害補償業務を開始しています(写真3)。

3)沿線の日陰状況

補償説明業務への挑戦

用地調査等業務のアウトソーシングは、国交省を始めとして深く浸透してきており、用地調査における補償説明業務の発注も増加傾向にあります。CFKも2015年度に中部地区で初めて補償説明業務を受注しました。総合補償士を中心としたメンバーが、多数の権利者への補償説明や意向確認を行いました。また、発注者の指示により用地契約にも同席し、説明業務のノウハウを蓄積することができました。今後は、増加が予想される補償説明業務へ積極的に取り組んでいきたいと考えています。

測量ICT技術の導入

国土交通省が唱える「i-Construction」に対応するため、固定式レーザースキャナー(写真4)やドローン(UAV)(写真5)による3次元測量データを活用した3次元設計ならびにCIM(Construction Information Modeling/Management)を推進しています。これを実現するための要素技術の開発および測量ICT技術導入の検討を実施しています(写真6、図7)。

4)レーザースキャナ
5)ドローン
6)ドローン撮影画像
7)点群データ

30年後の測量

CFKが創立100年を迎える30年後の位置情報は4次元情報(空間および時間)が当たり前の時代になり、地理空間情報社会が構築されているものと予想されます。マンパワーによる時代は終わり、人工知能(AI)を備えたロボット技術者と準天頂衛星を活用したシステムにより全ての地形・地物情報を、リアルタイムに掴める時代となっていると思われます。

測量ICT技術の活用はもとより、すべての空間情報をマネジメントする人材の育成に取り組み、「安全」な作業環境の中で「正確」な地理空間情報を提供してゆくことが使命であると強く認識しています。

2016年10月1日公開

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