測量と設計の総合力の発揮

はじめに

2017年10月に発生した台風21号の影響により、大阪府南部に位置する大津川水系牛滝川周辺においても斜面崩壊に伴う河道閉塞による浸水被害や護岸倒壊など甚大な災害が発生しました。

大阪府と災害協定を結んでいる大阪府測量設計業協会に加盟しているCFKは、測量と設計の技術者がそろっており、UAV(無人航空機:Unmanned Aerial Vehicle、通称ドローン(以下UAVという。))を保有していることから出動要請があり、緊急災害調査を実施しました。また、災害査定業務としての河川護岸設計を実施しました。以下、2つの業務について報告します。

UAVを活用した三次元測量

本稿では、牛滝川で発生した土砂災害について、UAVを用いて実施した災害調査の報告を行います。

被災状況

1 浸水した道路(UAV撮影)

調査を実施した牛滝川は、大雨の影響で山の斜面が崩壊し、大量の土砂によってせき止めらました。また、越流した水が道路に浸水し、道路が崩壊する被害が発生しました。せき止められた牛滝川の上流に位置する集落では、床上浸水の被害が発生しました。

UAVを活用した災害調査

本調査は、災害状況の把握と、災害復旧に必要な資料作成を目的とするため、迅速かつ安全に広範囲を調査することができるUAVを用いて行いました。

調査範囲は約90,000㎡あり、通常の測量作業を行う場合、危険な状況での作業となるため、1ヶ月以上の日数が必要であると考えられます。

UAVを活用した災害調査は、要請後すぐに出動して調査を行いました。現場では、はじめにUAVを飛行させて撮影を行い、災害状況の把握を行いました。その後、UAVを用いて3次元測量を行い、図面作成と崩壊土量の算出を行いました。

3次元測量

2 作成したオルソ画像

UAVを用いた3次元測量は、立入が可能な安全な場所に標定点を設置し、写真のオーバーラップ率(進行方向の重なり具合)80%以上、サイドラップ率(隣接コースとの重なり具合)60%以上となるように飛行計画を立てて撮影を行いました。撮影した画像は、3次元ソフトを使用して解析を行い、3次元点群データとひずみのないオルソ画像を作成しました。 

図面作成、崩壊土量の算出

3 災害発生前を基準とした標高差

作成した点群データから、TINデータを作成し、横断図を作成しました。横断図は、災害発生前後で比較ができるように、断面を重ねて作成しました。

次に、災害前後のTINデータから標高差を0.5mピッチで算出し、その点を中心とした1辺が0.5mの正方形を単位面積として体積を求め、崩壊土量を算出しました。また、崩壊した土砂の移動量を視覚的に示した図を作成しました。水色~紫色で示す箇所は災害発生前から標高差が増加した箇所、緑色~赤色で示す箇所は災害発生前から標高差が減少した箇所を示します。

迅速かつ安全なUAVの活用

今回のような土砂災害の現場では、土砂が再度崩れる二次災害が発生する恐れがあるため、人の立入が難しく、詳細な状況把握が困難です。そのため、UAVの活用が非常に有効な手段であると考えられます。また、今回実施した調査は、UAVを活用したことで、現場作業を2日間で終了することができ、出動要請から図面作成まで約1週間で対応することができました。UAVは、通常の測量作業に比べ、短い期間で現場作業を終了することができるため、現場状況に応じて活用していきます。

測量グループと連携した河川災害復旧設計

河川災害では、被災後、次期出水期までに復旧し、人命と国土を守る必要があります。そのため、非常にタイトな工程で、復旧設計を実施する必要があります。

本事例では、大阪府が管理する二級河川牛滝川で発生した河川災害に対し、河川技術者としての護岸災害復旧設計の取り組みを以下に振り返ります。

被災状況

4 上長滝橋から見た被災状況
上流側のブロック積護岸、下流側の石積護岸 にひび割れが発生し、損壊している。

今回、CFKは、牛滝川で発生した河川災害のうち、3箇所(上長滝橋上流右岸、積川橋上下流左岸、下出橋下流右岸)について対応しました。被災状況は、3箇所とも、洪水による局所的な河川護岸の倒壊でした。

被災原因

災害復旧設計を行うにあたり、被災原因を推定する必要があります。推定した被災原因に対する設計を行うことで、再度災害が防止できるためです。

今回の3箇所の被災原因は、基本的には、洪水による洗掘により基礎部に空洞が発生し、護岸裏の土砂が流出し、護岸が倒壊したものと想定されました。

復旧設計

以下、3箇所のうち、最も対応に苦慮した上長滝上流右岸について述べます。

(1)測量グループとの連携

当該箇所については、測量もCFKで対応しました。迅速に設計を行う必要があるため、測量担当に急遽対応をお願いし、図化直後から随時データの提供を受ける体制としました。また、設計を行っていくなかで、横断測線位置を変更してもらうなど、設計思想に合わせた修正対応も適宜迅速に行ってもらいました。自社に測量の専門グループがあることで、こうしたスムーズな対応が可能となり、総合建設コンサルタントとしてのCFKの総合力を発揮することができたと考えています。

5 復旧断面図
護岸前面に根固め工を設置して、洗掘を防止 する設計とした

(2)復旧設計における工夫

通常の設計は、河川整備計画を踏まえて計画的に設計を行いますが、災害復旧設計は、局所的な被災区間に対して迅速に原形復旧を行う必要があります。護岸の原形復旧にあたって、被災原因が洗掘によるものと想定されたことから、洗掘対策を念頭に置いた対策設計を行うこととしました。

3箇所の洗掘対策としては、再度災害防止のため、最深河床高の評価高から1.0mの根入れを確保することを基本設計方針としました。

但し、上長滝橋上流右岸区間では、この設計方針では、護岸高が5.0mを超えることが明らかとなりました。この場合、通常のブロック積擁壁の経験に基づく設計法が適用できなくなります。そうなると、大型ブロック積擁壁を用いる必要があり、前後や対岸の護岸と調和しないという問題が明らかとなりました。

そこで、護岸前面に根固め工を敷設することで将来の洗掘を防止し、今後洗掘による災害が発生しないように工夫した案について、工法比較を行い、最適案として発注者の了解を得ました。これにより、護岸高が5.0m未満となり、通常のブロック積擁壁の経験に基づく設計法が適用できることとなりました。その結果、現地景観に調和し、経済的にも優れた工法とすることができました。

復旧工事

6 上長滝橋から見た施工状況
護岸は復旧工事が完了している

牛滝川の被災箇所では、今回の復旧設計により、現行基準に従った護岸整備となり、地域の安全度が高まりました。設計結果を踏まえ復旧工事が実施され、急ピッチで施工が進められました。

おわりに

今回の牛滝川の河川災害復旧設計は、複数の区間を同時並行で対応する業務でしたが、測量グループと連携して取り組み、迅速に対応することができました。

災害復旧設計は、工程がタイトで、手戻り覚悟で対応しないといけない部分もあります。また、本来の河川整備計画を踏まえた設計ができないもどかしさもあります。しかしながら、再度災害の防止は非常に重要であり、やりがいの大きい仕事です。CFKは測量技術者と設計技術者の高い技術力で、現地作業時の安全性を確保しながら、業務対応の迅速性、作業の効率化を図っています。

今後も、測量と設計の総合力を発揮して、地域の安全度を向上させる防災設計に取り組むことで、信頼に応えていきたいです。

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