産学官で協議を重ねた巨石の落下予防対策

巨石とその周辺状況

川原 知也KAWAHARA Tomoya
環境・防災系部門
地盤・防災グループ

対象箇所は、岐阜県下呂市保井戸地区における国道41号の山側斜面にあり、国道との比高約30mの位置に巨大な転石(以下、巨石と呼ぶ)が存在しています。巨石の下は、約1~2mの転石が巨石を支える様な状態で分布しています(写真1)。巨石下の転石は圧壊している状況であり、対象の巨石は転落してもおかしくない危険な状態のため、速やかな落石対策が必要でした。

巨石は、写真1のように大きくオーバーハングしており、且つ、高さおよび幅約10mの大きさです。

1 対象とする巨石の全景(左) 巨石下の転石の圧壊(右)

地上レーザスキャナによる測量調査

一般的に、落石調査では測量ポールにより浮石転石の形状把握を行いますが、本対策では、対象である巨石の形状を正確に把握するために、地上レーザスキャナによる3次元測量を実施しました。

測量ポールを用いた落石調査結果と3次元測量結果を比較したところ、地上レーザスキャナによる測量では、測量ポールを用いた落石調査の約1.5倍の体積となりました。測量ポールを用いた落石調査では、安全側として、実際より大きめの形状を計測することがありますが、対象の巨石の場合は、高さおよび幅約10mの大きさであるため、正確な計測が困難であったために生じた差異だと考えられます。

巨石の落下を予防する対策工の抽出

対象である巨石は重量約14,000kNであり、一般的な落石予防工(ワイヤロープ掛工等)では対応不可能なため、巨石の落下を防ぐことができる工法を3案(①巨大岩塊固定工法、②杭および根固め+アンカー工、③根固め工+アンカー工)抽出しました。比較検討の結果、施工時の安全性や経済性を考慮し、「根固め工+アンカー工」案を選定しました。

3次元安定解析を用いた対策工の詳細設計

対策工の詳細設計の手順を以下に示します。
 ①3次元測量結果を用いた3次元安定解析の実施
 ②必要抑止力の算出
 ③安全率1.05を確保する根固め工の設置
 ④安全率1.20を確保するアンカー工の設置
 ⑤3次元モデルによるアンカー工の干渉チェック

所感・今後の展望

2 対策工の概要

私は本対策における、現地踏査・3次元測量・対策工の比較検討・詳細設計・道路防災ドクター診断・施工時の計測に携わりました。本件は、私が社会人1年目で経験したものです。

2022年2月、無事に対策工事が完了しました(写真2)。国土交通省をはじめ、道路防災ドクターや施工業者との協議を重ねることで大変勉強になりました。

当初は2次元安定解析による検討を予定していましたが、巨石は大きくオーバーハングしており、且つ、巨石側面が地盤と接触していない状態であったため、必ずしも2次元安定解析による検討が安全側の結果を与えるとは言えませんでした。このため、3次元安定解析を実施し、より合理的な解析結果を採用することにしました。解析では、正確な現場状況を反映することが非常に重要であることを学びました。

不安定な巨石は日本各地で点在すると思われ、同様の落石対策を検討することは増えます。この経験を踏まえ、今後は、道路管理者・施工業者・専門家との協議を慎重に行い、現場状況に応じた落石対策を検討していきたいと思います。

「地盤・斜面」に関連するトピックス

「総合防災」に関連するトピックス

「三次元測量」に関連するトピックス

RECRUIT

採用情報


私たちと一緒に新しい未来を切り開きましょう。
CFKでは、高い志を持ってチャレンジし続けるあなたを待っています。

採用情報へ 採用情報