道路トンネル事業への 一環した取り組み

設楽バイパスの概要

竹林 正晴
道路系部門
トンネルグループ
統括リーダー

一般国道473号は愛知県蒲郡市を起点とし、静岡県牧之原市に至る総延長260kmの路線です。設楽町と東栄町の中心部を通る現道は、山間部に位置し、屈曲した区間では幅員が4m程度、縦断勾配は最大12%となり、大型車のすれ違いが困難な状況でした。また、現道に位置する堤石トンネルは、昭和9年の竣工であり、現在では建築限界が不足していることに加え、老朽化による覆工の劣化や素掘り区間では落石の危険がありました。

このような状況を解消するため、トンネルを含む設楽バイパスの整備が急がれていました。

1 位置図

CFKの取り組み

CFKでは平成18年5月から平成27年6月までの約9年間にわたり、国道473号設楽バイパス道路改良工事に関わる道路やトンネルの設計・施工管理業務に一環して携わってきました。

この度「斬新なアイデアでの機能的かつ安全強固な道路の設計」が評価され、愛知県設楽町より感謝状を受賞しました。トンネル設計では、内空断面の最適化やLCCを考慮したLED照明の適用など、コスト縮減に積極的に取組みました。また、周辺環境への課題も多く、自然由来の重金属への対応では、最新事例や知見を取入れた処理方法の検討や将来の跡地利用を踏まえた残土処分場の設計・施工計画などを行いました。道路改良工事による騒音がクマタカの繁殖に及ぼす影響への対応では、数か年にわたり工事前、工事中のモニタリング調査を実施し、専門家へのヒアリングを実施しながら対応しました。これらの取り組みについて紹介します。

トンネル設計

2 坑口前面の切土形状を工夫

①コスト縮減、現地条件への配慮
トンネルの幅員構成は、車線3.25m、路肩0.5m、歩道2.5mを有し全幅が広く、また計画延長が約1.2kmと長いことから、内空断面の検討にあたっては、機械換気の必要性を検討のうえ、コスト縮減の観点から最小断面となる上半三心円を採用しました。また、坑門工の検討においては、坑口位置を山側にシフトすることでコスト縮減を図りつつ、坑口前の切土によって生じる日陰により、路面凍結が懸念されたため、冬期の日照シミュレーションを実施し、切土形状を提案しました(写真2)。

トンネル工事は終点側からの施工を計画していましたが、坑口近傍には集落が存在することより施工時の騒音や振動の影響が懸念されました。そのため発破掘削による騒音については、より精度の高い検討が可能な三次元騒音解析による民家への影響評価結果に基づき、対策工として防音扉の設置を提案しました。振動については通常の発破掘削では民家への影響が確認できたため、影響区間には振動の抑制が可能な制御発破及び機械掘削の併用を提案しました。

②維持管理、省エネルギーへの配慮
トンネルや道路の設備設計では、当時ではまだ設置例の少なかった長寿命かつ維持管理や経済性で有利となるLED照明を先駆けて提案しました。トンネルの非常用施設には、省エネ効果が高く支柱や基礎の軽減が可能で経済性に優れる新型LED警報表示板を非常警報装置として採用しました。また、両坑口では、現道との交差点が近接するため、交差点注意灯を設けてドライバーに危険予知を促すとともに、起点側坑口には補助警報表示板を計画しました。

重金属含有地山への対応

①管理型土捨場の設計
地質調査の結果、起点側の堆積岩類(凝灰岩砂岩、泥岩とその互層)及び、終点側のデイサイトの岩脈と変質部で、土壌対策汚染法の指定基準を超過するヒ素と鉛が含有することが判明しました。これらの重金属を含むトンネル掘削土(ずり)が、約8万m3発生することが想定されたことから、全国的な重金属含有ずりの処理事例、文献調査を実施のうえ、処理工法の比較を行い、経済性、安全性に優位な管理型土捨場(二重遮水シート包み込み)を提案しました(図3、4)。

また、管理型土捨場の施工中(盛土中)は、埋め立てた有害ずりに降雨や湧水などが接した結果、土捨場より発生する排水には重金属が溶出する恐れが懸念されました。この対応として、①重金属の除去装置を装備した濁水処理施設の設置、②降雨時における排水が坑外に流出しないよう調整池の設置を計画し、合わせて排水管の流末や流末河川におけるモニタリング計画を立案することにより、安全対策に万全を期しました。

3 管理型土捨場平面図
4 管理型土捨場平面図 型土捨場縦断図(二重遮水シート包み込み)

②施工時の臨機な対応
当該トンネルは、平成24年4月よりトンネル工事が開始されました。施工業者の提案により、地質性状及び重金属の含有の程度を事前に確認する目的で、トンネル掘削に併行し、切羽から長尺水平ボーリング(L=102~255m)が実施されました。その結果、当初の重金属含有の想定区間に加え、想定外であったトンネル中央付近のデイサイト(貫入角礫相)においても、基準値を超過するヒ素の含有が確認されました。

以上より、トンネルずりのほぼ全量にあたる約13万m3を管理型土捨場にて処理する必要が生じました。さらには、土工区間からもヒ素含有の掘削土が発生したため、これらを含め、大幅な処理容量の増設が必要となりました。

上記問題点の対応策として、土捨場の天端高を嵩上げする計画とし、緊急で管理型土捨場の改築設計を行いました。これにより、必要な土捨場容量を確保し、発生ずり量の処理対応を可能としました。

猛禽類調査

平成13年度にルート周辺の山地でクマタカの生息が確認されていました。トンネル工事により、直接、生息地(森林)を破壊することはないが、クマタカは、営巣時から抱卵、羽化する頃までは周囲の環境変化に非常に敏感になり、人の気配や大きな騒音により繁殖を放棄する(子育てをやめる)こともあるため、工事による影響が懸念されました。工事実施にあたっては、有識者の指導のもと、工事によるクマタカへの影響を確認し、影響が懸念される場合はそれを抑えるための保全措置を提案するために、平成18年12月から調査を実施しました。

施工管理、技術支援の取り組み

平成23~27年度にかけて施工管理業務を受注し、施工計画書の検証や地元説明会資料作成支援、及び切羽観察を含む一連の施工管理業務を実施しました。特に、施工における支保パターン適用の要となる切羽観察においては、岩質判定委員会の立ち上げや切羽観察評価実施要綱を作成し、具体の切羽評価手法を提案するとともに、発注者、施工業者、設計者の三者による判定体制を確立することで、適正な切羽観察評価を実現しました。

今後の課題

本事業では、設計、環境調査、施工管理まで一環して携わり、数多くの技術的課題に対し、総合コンサルタントとして、技術者が一丸となって対応できたことは、貴重な経験となりました。今後も多様化する社会のニーズに応えつつ、トンネル固有の現地特性に配慮し、さらなるトンネル技術の研鑽に努めていきたいと考えています。(2016.01)

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