西九州新幹線 総合コンサルタントとしての集大成

尾崎 良明
OSAKI Yoshiaki
海外事業本部
副本部長

2022年9月23日、西九州新幹線(武雄温泉・長崎間)が開業しました。本路線は、1972年に基本計画が告示され、図1に示す流れで事業が進められました。CFKは、2012年認可前の2007年から長年にわたり、路線検討業務、調査計画業務、詳細設計業務、施工管理・監査業務と一連の業務に携わってきました。各分野の技術を結集して取り組んできた、このプロジェクトを振り返りつつ、主な業務内容を紹介します。

1 事業の流れとCFKのかかわり

西九州新幹線の路線概要

西九州新幹線は、佐賀県の武雄温泉駅から長崎県の長崎駅を結ぶ、高速鉄道路線(新幹線)であり、路線距離は66kmと日本で最も短い新幹線の営業線です。駅は5つ、武雄温泉駅、嬉野温泉駅、新大村駅、諫早駅、長崎駅です。博多駅から長崎駅に向かう場合、武雄温泉駅まで特急電車で行き、新幹線とはホームでの対面乗り換え方式が採用されています。博多駅から長崎駅までの所要時間は、開業前の1時間48分から、開業後約30分短縮され、1時間20分となりました。

調査・計画段階のCFKのかかわり

2 俵坂トンネル入口付近坑口3D検討図

まだ、新幹線のルートが確定していない段階からCFKは事業に携わっており、何度も現地へ赴き、出来上がりの新幹線をイメージしながら必要な調査、構造物の計画・設計を実施してきました。

長崎駅近くの八千代橋りょう、諫早駅近くの永昌橋りょうと東大川橋りょうの3箇所は、現地状況に即した橋脚位置を決定するとともに、上部工、下部工の比較設計を実施しました。鉄道平面線形確定前の事業の精度向上の業務です。その後の調査設計業務では、嬉野駅付近を担当し、スパン割計画、坑口位置の検討(図2)、関係機関協議の資料作成を行い、詳細設計に向けての基礎資料作成を行いました。

詳細設計段階の主なCFKのかかわり

土木と建築の融合:嬉野温泉駅

3 嬉野温泉駅

嬉野温泉駅は、起点の武雄温泉駅から10kmほど長崎方面の田んぼの中に完成しました。温泉街から北東に1.5kmほどのところです。嬉野温泉は、「日本三大美肌の湯」と呼ばれ、ぬめりのあるお湯は、ナトリウムを多く含む重曹泉で、湯上りにはつるつるのお肌になり、一度入れば虜になるほどの温泉です。そんな温泉街の近くにある嬉野温泉駅(写真3)は、「湯どころの趣のある駅」をデザインイメージとして温泉宿の装いが表現されており、階段やエスカレーター等の昇降設備の設置に自由度のあるハイブリット構造が採用されています。このハイブリット構造は、本線部を土木設計、ホームと上屋を建築設計で行うものであり、CFKはこの土木設計を実施しました。

高速道路上空を横断:袴野架道橋

4 袴野架道橋

中央径間で西九州自動車道と交差する袴野架道橋(写真4)は、橋長152m(支間長38.9m+72m+38.9m)の3径間連続合成桁と4基のRC壁式橋脚からなる橋りょうとなっています。高速道路への影響を最小限とするため、中央径間は送出し架設、側径間はクレーン架設で計画しました。

また、高速道路上空の維持管理を低減するため、防食仕様は溶射+塗装を採用しました。RC橋脚の基礎は、支持層が岩であったため大口径深礎杭(φ8m)とし、円形とすることで可能な限り中央径間の支間長を短縮しました。支承は水平力分散沓を用いて1橋脚に地震時の水平力が集中しないように配慮しました。CFKの豊富な実績を活用しながら、知恵を絞って設計した一例です。

近接施工に配慮:諫早トンネル

5 諫早トンネル入口付近(山岳工法)

諫早トンネル(写真5)は、諫早駅から長崎駅方面に約500mの位置にあり、延長230mと短いですが、曲線半径700mの急曲線中にあり、全区間が1D(D:掘削幅)以下の小土被りとなる山岳トンネルです。国道207号交差部は土被りが3.5m程度であり、道路への沈下の影響が少ないパイプルーフを採用しました。市道交差部も土被りが4m程度であるため、市道を切り回しながら表層から地盤改良を実施し、コンクリート版を設置して施工する計画としました。対策工の選定にあたっては、FEM解析により施工時の沈下量を算定し、施工時の安全性に十分に配慮した検討を行いました。また、軟弱地盤区間においては覆工RC(二次覆工)の耐震設計を実施しました。

線路縦断の制約を克服:木場トンネル

6 木場トンネル本坑と揚水設備立坑断面図

新大村駅の南側に位置する木場トンネルは、大村市三城町から岩松町の区間にあり、トンネル入口部の制約が厳しく、通常の凸型の線路縦断が採用できず、凹型の線路縦断となり、凹型の底の部分にトンネル湧水の揚水設備(図6)が計画されています。CFKは、入口部の坑門工設計と小土被り部の防水型覆工RC設計、出口部の進入路や施工計画、さらにこの揚水設備の必要規模を求め、揚水設備の配置計画、この揚水設備が収まる揚水立坑の設計を行いました。この揚水立坑には、表層部をライナープレートによる掘削後、岩盤に到達後にNATMと同様のロックボルトを配置した掘削工法を提案し、安全で施工費が抑えられる施工計画を実施しました。

過酷な現地踏査:佐賀県内トンネル坑口

7 下西山トンネル出口付近

佐賀県内には、武雄温泉駅を過ぎてすぐに通過する下西山トンネル(写真7)から長崎県との県境にある俵坂トンネルまでの全13坑口があります。CFKは、このうち11箇所の坑口について、坑門工並びにその背面の斜面対策工の設計を実施しました。はじめに、新幹線構造物が安全に施工できる坑門工位置を確定させ、詳細設計に向け、線路平面図を手に全ての坑口予定付近を踏査しました。測量中心線の赤杭を探しながら、道なき山を登っては下り、現地を歩き続けました。地すべりや落石等への対策工を施した斜面に直径約10mの新幹線トンネルの出来上がりをイメージしながら。そして、何もなかったその斜面に、真新しいコンクリートの新幹線構造物が完成しました。

施工時の振動を予測:久山トンネル

諫早駅と長崎駅間に位置する久山トンネル(延長4,990m)は、工業団地と隣接することから、トンネル施工時における団地内の建物や機械への影響が懸念されました。そこで、団地内全企業に対してアンケート調査を行い、懸念を表明した企業にヒアリングを実施することで、重要な施設や精密機械とその振動許容値を把握しました。また、同じ西九州新幹線で久山トンネルの近隣にて施工中であった、三坂トンネルの機械掘削区間、三ノ瀬トンネル発破掘削区間における振動測定を実施し、掘削方式ごとの振動伝播特性を把握しました。これらのアプローチ等を基に、久山トンネルの施工時における振動影響予測精度の向上を図った上で、地山条件や団地からの距離に応じた掘削方式を決定しました。さらに、影響が懸念された企業を対象として施工時の振動常時監視を実施し、工業団地への影響を回避した施工に繋げました。

構造物完成後のCFKのかかわり

8 ドローンの撮影状況写真

構造物完成後は、出来上がりを検査する監査が行われますが、山間部の坑口背面に施工された法面フレーム部及び内面等には竣工までに多数のクラックが発生することがあります。巨大で急峻な防護工の出来上がり目視検査は、長時間を要すこと、非常に危険を伴うことから、効率的で安全な検査手法が望まれています。

CFKは発注者と一丸となり新たな検査手法について研究し、ICT技術と画像解析技術を融合することで、効率的で安全な検査手法を開発しました。

三ノ瀬トンネル入口 法面防護工を題材に、ドローンで取得した写真からクラックの位置と幅を自動判別し、その可視化を行いました。

構造物の設計にとどまらず、最新技術と知見をもって、幅広い分野で事業完成に寄与しています。

おわりに

9 感謝状(独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構より)

西九州新幹線の路線には、C F Kの様々な技術を見ることができます。鉄道、橋梁、トンネル、地盤、環境・・・。様々な分野の技術者が連携し、総合力で発注者のニーズに応えてきました。そして、多種多様な構造物の完成を見届けることができました。開業にあたってCFKに贈られた感謝状の一節に、「多年の経験と優秀な技術力を結集しその完成に多大な貢献をされた」とあります(写真9)。これ以上の誉め言葉はなく、まさに、総合コンサルタンツCFKの集大成と言えます。

北海道新幹線の札幌延伸、北陸新幹線の大阪延伸、さらに、この西九州新幹線の新鳥栖から武雄温泉間建設も早期の完成が望まれています。西九州新幹線の経験を大きな糧として、引き続きCFKは全社を挙げて新幹線事業に取り組み、日本の鉄道輸送の骨格形成に貢献していきます。

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