安全で豊かな暮らしを支える 港湾を目指して

全国区のコンサルタントへ

手皮 章夫
TEBI Akio
構造系部門
技師長

CFKの技術サービスに港湾が加わるのは、1950年代後半であり、他の主要技術分野に比べて少々遅く、後発の技術分野でした。当時の発注者は、主に近畿地方の港湾管理者という状況の中、1998年代前半に転機が訪れました。当時、国が発注する高度な技術レベルを必要とする業務、例えば、研究的要素の強い業務や学識経験者と協働で実施する業務などを港湾系財団が受注するケースがありました。その業務にCFKが協力会社として参画する機会を得たのです。

一部ではありますが、国の業務に携わることにより、最新技術動向の把握、新たな人脈の形成、達成感や充実感の醸成等の効果が得られた。これら業務を通じて、CFKの業務対応能力は鍛えられ、それに伴い業務成果も評価され始めた1998年代後半、CFKの港湾部門が国発注業務を直接、受注することができるまでに成長を遂げたのです。

特筆すべきプロジェクト・技術開発

港湾ソフト系業務の全国展開

雑化・高度化するなか、政策立案に係る計画・分析・評価に係るコンサルティングも重点テーマとして取り組んできました。港湾系財団技術サービスを提供してきたノウハウを活かし、国発注の「物流効率化のための調査業務」や「政策・事業評価に係る調査業務」を中心に、全国展開を目指しました。その結果、近畿はもとより関東・中部の各地方整備局を中心に、北は北海道、南は沖縄に至る全国に活躍の場を広げることができ、複数の業務で優良業務表彰を受賞するなどの成果を得ました。また、「インドにおける複合一貫輸送環境の改善に関する調査」や「バンコク港・二国間オフセットクレジット制度の実現可能性調査」といった海外プロジェクトにも従事する機会を得たことも大きな一歩でした。

有識者との連携による港湾計画技術の向上(次世代港湾研究会での活動)

1 仁川港湾公社との交流

2013年度には「次世代港湾研究会」を設立しました。これは、人口減少社会の到来や産業構造の変化など社会情勢の変化に伴い、港湾のあり方そのものが変化しつつあるなか、今後解決が求められる港湾計画上の諸課題について論議を行う必要がある、という問題意識によるものです。研究会では、港湾の計画や運営・管理に造詣の深い有識者のご参画を頂きながら、2015年度までに計11回の議論を重ねるとともに、釜山港・仁川港の調査を行い同港の港湾管理者との交流・意見交換を行うという貴重な経験を得ることができました(写真1)。この取組みについては、現在も引き続き継続して実施中です。

大阪湾の基本構想策定

2  大阪湾港湾の基本構想の概念図

2015年12月、「大阪湾港湾の基本構想~スマートベイの実現を目指して~」が策定・公表されました。この基本構想の策定にあたり、CFKは2013年度から3カ年にわたって調査・検討に従事してきました。多くの関係者の様々な意見・要請が存在するなか、ひとつの基本構想として取りまとめるまでには、多大な苦労が必要となりましたが、大阪湾諸港の港湾計画の指針となる長期構想の策定に携われたことは、近畿に本拠を置くCFKにとって、非常に意義深いものでした(図2)。

耐震設計技術の習得(FLIP研究会~ FLIPコンソーシアムでの活動)

1995年の阪神淡路大震災を契機にFLIP注)が開発され、1997年6月にFLIP研究会が発足しました。CFKは発足当初から研究会に参加し、高度な利用技術の研究を行い、また、耐震設計技術の向上を図ることを目的として活動してきました。当初のFLIP研究会から第4期FLIP研究会2011年6月まで)に至る14 年間FLIP研究会WG活動に参加し、2011年以降は(一社)FLIPコンソーシアムに活動の場を移しました。研究会およびコンソーシアムでの活動成果を活用し、液状化による港湾構造物の挙動解析、耐震設計、被害予測業務に従事してきました。

港湾新基準への対応

3 桟橋上部工完成時

堺泉北港汐見沖地区-11m岸壁設計委託は、2007年7月の「港湾の施設の技術上の基準」の改定後、CFKが最初に実施した岸壁の基本・細部・実施設計業務でした(発注者:大阪府港湾局)。業務受注は2007年6月であり、技術基準の発刊前であったこともあり、技術基準や設計事例集の講習会などで得た知見を基に、手探り状態で着手しました。

技術基準の改定により、新しい考え方による設計条件の設定方法、照査方法としての部分係数法が導入されたため、設計ソフトが対応できていませんでした。そのため、設計を終える頃には、従来の設計にはなかった項目に対応することができ、当時の新基準を習熟するほどに鍛えられた業務でした。その後、施工され、供用される際に、後述する維持管理計画策定業務も実施することとなりました(写真3)。

維持管理計画の策定

2007年3月に「港湾の施設の技術上の基準を定める省令」が改正され、「港湾の施設は供用期間にわたって要求性能を満足するよう、維持管理計画等にもとづき適正に維持すること」が規定されました。その後、2008年に管内国有港湾施設維持管理計画策定業務(発注者:中国地方整備局港湾空港部)を受注することができました。本業務は、中国地方整備局管内の合計23国有港湾施設に関して、適切な維持管理を行うための計画書を作成した業務でした。新設構造物向けの手引きは存在するものの、既設構造物で参考となる資料がない中で模索しながら実施することとなりました。

本業務を受注した翌年より四国地方整備局、東北地方整備局をはじめとする国有港湾施設や大阪府などの港湾管理者所有の港湾施設について維持管理計画策定に携わり、知見を蓄えることができました。

東日本大震災への対応

2011年3月の東日本大震災においては、港湾の施設にも甚大な被害が生じました(写真4)。3月22日より石巻港にて港湾の施設の災害調査に携わることとなり、その後、宮城県の特定第三種漁港である石巻港における災害査定設計および復旧のための実施設計を受注する機会を得ました(発注者:宮城県石巻港湾事務所)。

6月頃に概算契約の運びとなり、それに併せて、東北支社に技術者が駐在することで対応しました。被災状況の甚大さだけでなく、業務の実施環境についても完全とは言えない中で、駐在した技術者の苦労は計り知れないものでした。しかしながら、対象施設の査定設計、実施設計をやり遂げ、発注者から感謝の言葉を頂くに至りました(写真5)。

4 矢板式岸壁の被災状況
5 矢板式岸壁の復旧状況

港湾分野の未来

経済の三次産業化、少子高齢化に伴う人口減少により、今後大規模港湾の開発は不要との声もあります。しかし、食料・エネルギーの安価で安定的な輸入や我が国の輸出製品の国際競争力向上は輸出入量の9割を担う港湾物流の重要な使命であることに変わりありません。

一方、近年世界的にクルーズ需要が爆発的に増加、我が国へのクルーズ船寄港も急増しており、これらインバウンド観光の活力を我が国経済に取り込むための港湾整備も今後の重要なテーマです。

東日本大震災や熊本地震を踏まえ、災害時の防災・減災機能も港湾の重要な機能として着目されています。また、建設現場の生産性の向上を目的とした港湾分野へのi-Constructionの導入も喫緊の課題であり、BIM/CIM(Building/ Construction Information Modeling, Management)を先導するCFKの役割は大きいものになっています。

CFKの港湾分野は、今後このような今日的なテーマにも取り組んでいく必要があり、まだまだやるべきことが多く、他分野と連携しつつ、更なる発展を目指します。


注) FLIPの解説
Finite Element Analysis Program for Liquefaction Process の略称で、旧運輸省港湾技術研究所で開発された有効応力法を用いた液状化による構造物被害予測プログラムである。従来の全応力液状化解析では困難であった地盤や構造物の詳細な挙動を予測できる。

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