より良い都市環境・自然環境 を目指して

過去20年を振り返って

松井 敏彦
環境・防災系部門
技師長

新大阪駅から京都方面行の電車に乗り、しばらくすると左手に吹田貨物駅が眼の前に広がります。JR吹田駅からJR千里丘駅にまたがる貨物駅で、約27haの全国有数の貨物駅です(写真1)。この吹田貨物駅は、梅田貨物駅(梅田北ヤード)の売却が決定されたことに伴い、その機能の半分を吹田操車場跡地に移転するために整備されたものです。

環境グループは1978年に発足し、環境アセスメント、環境調査や環境改善に係る対策検討等、多くの実績を持っています。吹田貨物駅のアセスメントはビッグプロジェクトの一つであり、ピーク時には環境グループの全員がこのプロジェクトに係わりました。

吹田貨物駅の開業は2013年ですが、環境影響評価の手続きがスタートしたのは1999年です。その10年前から環境の事後監視調査が終了する2014年までの約25年間、建設コンサルタントの環境の専門家としてこのプロジェクトに参画しました。

環境アセスメントでは、貨物駅にアクセスする貨物専用道路の構造について複数案提示し、環境影響を可能な限り低減するための保全対策として、①出入りする貨物トラックについて低公害車の使用を運送会社との契約に明記すること、②最先端の大気汚染対策技術(フォトロード工法)の採用を提案しました。そして、貨物専用道路(写真2)に設置した遮音壁、通常タイプ、透明板、半透明板の中から町内会ごとに自由に選んでもらうこととし、貨物自動車の騒音とともに、現況の鉄道騒音も大幅に低減できました。

1 吹田貨物駅
2 貨物専用道路と遮音壁

大気汚染対策の新技術への挑戦

全国有数のホットスポット

2006年当時、国道43号の市岡元町交差点(大阪市港区)では、NO2の環境基準( 0.06ppm)を大幅に超える濃度(0.076ppm)が観測されていました。CFKは、2002年から国道43号沿道の大気常時監視を担当していました。この業務は、特に大気環境対策を検討するものではなかったのですが、最新の大気浄化技術を施主の課長に紹介したことが契機となり、軸足を大気調査から大気汚染対策検討に移すこととなりました。この結果、大阪での実績を評価され、2008年、関東で初のプロポーザル特定(東京国道管内道路環境対策検討)を得ることになりました。

提案した大気浄化技術(国道43号)

3 市岡元町交差点(国道43号)

大気浄化技術と言えば、土壌を利用した脱硝システムが有名ですが、道路敷地内に建設スペースが必要なため、市街地の交差点では設置が困難な場合が多い。CFKが着目したのは、独立行政法人環境再生保全機構と福岡県保健環境研究所の「高活性炭素繊維(ACF)が接触したNO2の9割以上を除去する」という新技術1)であり、福岡県とACF素材を提供する大阪瓦斯株式会社に、国道43号での実証試験を念頭に共同開発を提案しました。翌年、出来島(大阪市西淀川区)でのフィールド試験を経て、交差点改良工事(2008年)に合わせて、共同開発した376個のユニット型ACFが市岡元町交差点に設置されました(写真3)。

大気対策効果については、「NO2濃度は、改良工事前に比べて最大で0.006ppm低減(大型車が1日当り2000台減少に相当)」という成果が大阪国道事務所から記者発表(2009年3月)されました。

国道43号以外でも採用

4 遮音壁型のACF(国道23号)

環境省の中央環境審議会(2012年)は「自動車の排出ガス規制が実施されても、NO2の環境基準を超過する交差点が2020年時点でも135地点残る。」としており、現在でも局地大気汚染対策が求められています。大和町交差点(東京都板橋区)では、東京国道事務所によるACFのフィールド実験が新たにスタートしています2)。さらに、開発会社2社と共同特許を持つ遮音壁型ACFは、国道23号沿道(名古屋市南区)に設置されました(写真4)。

環境省:サシバ保護の進め方の検討

調査マニュアルの検討

サシバは、東南アジアなどの暖かい地方で越冬し、日本には春から秋にかけて繁殖にやってくる猛禽類です。里山に生息するサシバは、最近20~30年の間で著しく減少しています。このようなことから「サシバの保護の進め方」3)を策定する業務(2012年度)を担当することになりました。環境省の検討会は4名の専門家から構成され、サシバの効率的・効果的な調査方法と保全措置検討の考え方の指針(案)が討議されました。これまでの自然環境調査の実績は、調査主体の仕事が多かったのですが、この時、サシバの繁殖サイクルや重要な営巣環境など、猛禽類調査・保護の考え方について、非常に有用な知識・人脈を得ることができました。翌年には環境省の業務経験を活かし、後日優良表彰を頂くことになる業務を担当する機会を得ることができました。

環境省の業務実績を活かして

この機会とは「工事箇所に近接してサシバの営巣地が確認されており、工事への影響を最小限にすることを前提に、サシバの保全対策を検討する。」というものでした(写真5)。

当該地のサシバの保全対策が必要な時期(最も敏感になる抱卵期)は5月頃です。4月の業務着手後、抱卵期までに現地調査を実施して営巣の可能性を確認した上で、工事中の保全対策を短期間でまとめました。施主や施工業者の協力も得られ、サシバの雛の巣立ちが確認された時は、関係者全員でほっと安堵しました。

5 左:サシバの親子、 右:工事箇所と営巣地の位置

今後の環境グループの発展に向けて

6 海外で活躍するメンバー

現在、大学や研究所の研究者の指導を受け、先進的な技術開発(街路樹の葉、河川や湖沼中の環境DNAを利用したバイオモニタリングなど)、研究・解析的な業務を積極的に実施しています。海外については、公益財団法人地球環境センターに派遣している環境グループのメンバーは、海外都市の低炭素都市形成を支援するプロジェクトの事務局を務めており、ホーチミン市での国際会議でMC(司会)を務めるなど、東南アジアで活躍しています(写真6)。また、大学との共同研究成果を国際学会(Vietnam Academyof Science and Technology:VAST)で発表するなど、国内外での研究発表に積極的に取り組んでいます。

環境分野での海外での取り組みは、他社に比べて後発になるが、東京で知名度を挙げたように、数年後、日本だけではなく、アジア圏でも知名度を上げられるよう、専門分野・活動地域を広げたいと考えています。

 

【参考資料】
1)福岡県:高活性炭素繊維を用いた沿道排ガス削減技術に関する調査研究,2005.3
2)松崎(東京国道事務所):ACF(高活性炭素繊維)フィールド実験について,スキルアップセミナー関東,2012
3)環境省:「サシバの保護の進め方」の公表について(お知らせ), 報道発表資料,2013,12

2016年10月1日公開

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