みどりと生きる、みどりを活かす

はじめに:地方と都市のリデザイン

総務省が「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」に基づき指定する「過疎地域」は885市町村(2022年4月1日公示)にのぼり、全国の市町村の半数を超えます。過疎市町村が半数を超えるのは、1970年の指定制度開始以降初めてのことです。自然豊かな日本は本来、自然の恵みを享受し、農山村地域は仕事の場、暮らしの場であったはずです。地方創生が謳われるようになり久しいですが、地方の衰退に歯止めがかかりません。

一方、都市は多くの機能が集中し、社会経済活動の中心となっていますが、効率性を追求するあまり、無駄が排除された結果、余裕やゆとりが足りません。現状では人々が健康で文化的に暮らす場とは言えない状況と考えます。

CFKは、「脱炭素社会への移行」、「循環経済への移行」、「分散型社会への移行」という3つの移行を加速させ、持続可能で強靱な経済社会へのリデザイン(再設計)に貢献します。CFKが実現したい社会、キーワードは「みどり」です。「みどり」を軸とした地方と都市のリデザインに取り組みます。

取組1:カーボンニュートラルを梃子とした森づくり

CFKは荒廃した森林を整備することにより、健全な森林を造成・育成し、その森林資源を木質バイオマスエネルギーとして活かした地方創生を「実現したい社会のあり方」と位置付け、取り組んでいます。

1)森林の現状

日本の森林は国土の約3分の2を占め、国土の保全、水源の涵養、生物多様性の保全、地球温暖化の防止、文化の形成、木材等の物質生産等の多面的機能を有しており、国民生活に様々な恩恵をもたらす「緑の社会資本」です。その森林の4割は戦後の大造林期に植えられたスギ・ヒノキを中心とする針葉樹の人工林です。

人工林は間伐することを前提に密植しているため、適切に人の手を入れなければ、光の入らない鬱蒼とした暗い状態のままになり、病虫害や暴風・豪雨・積雪に弱い「もやし林」になります。もやし林は倒壊や山崩れの可能性も高まります。この人工林が、林業の衰退、エネルギー転換等の要因により、現在、主伐、間伐がほとんど実施されずに放置され、森林の荒廃が進んでいます。

今、健全な状態を保つための主伐・間伐、林地残材の活用、それに合わせた再造林という、「伐って、使って、植える」による森林資源の循環が求められています。

2)自立分散型エネルギー

エネルギー産業は、人々の生活に根差した必要不可欠な産業です。しかし、日本においてはエネルギーの約9割を海外からの輸入に依存しています。さらには市町村ごとにみても、日本の約9割の市町村のエネルギー収支が赤字となっています。

エネルギーを海外輸入・地域外に依存せず、地域資源により地域内で創出・利用し、地域外に流出していたエネルギー代金を地域内に戻す「自立分散型エネルギーの地産地消」による循環経済の仕組をつくることが地域経済活性化・地方創生において重要な要素となっています。

今、日本は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、この挑戦を「経済と環境の好循環」による成長=グリーン成長の機会と捉え、産学官民が一丸となって推進しています。

木質バイオマスなどの再生可能エネルギーは、現在は大半が化石燃料によりつくられている熱・電気を、カーボンニュートラル・エネルギーへ転換することができます。2021年10月に策定されたエネルギー基本計画、地球温暖化対策計画では、再生可能エネルギーの最大限の導入と主力電源化を目指し、2030年度の電源構成比として約36~38%程度を目標とすることが示されました。全国各地において、太陽光、風力、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーの導入が進められ、エネルギーの脱炭素化や地産地消、新しい産業・雇用の創出による地域経済活性化の取組が加速しています。

3)CFKが取り組むカーボンニュートラルと森林整備

CFKは自然環境への想いとカーボンニュートラルへの想いを重ね合わせ、これらを同時に解決する木質バイオマスエネルギーに取り組みます。

木質バイオマスエネルギー事業には、燃料のための木材が必要であり、木材を獲得するためには森林を伐採する必要があります。前述のとおり、森林を健全に保つためには、「伐って、使って、植える」による森林資源の循環が不可欠であり、エネルギーとしての木材を伐り出し、再造林することによって、荒廃した森林に人の手が入り、森林が再整備=”あるべき姿へと変貌”されていくことになります。

また、森林の伐採には資金が必要です。森林=木材をエネルギーという形に変換して、そのエネルギーを販売することにより資金を獲得できます。獲得した資金は、また次の木材調達=森林伐採=森林整備へと活用し、資金の経済循環を生むことができます。森林資源をエネルギー利用という形で循環させ、これまで停滞していた森林整備を促進する原動力にできます。

さらに、先人たちが遠い昔から営んできた本来の木材事業を起業する人たちが地域に集まり、衰退していた木材産業が再生し、地域が活性化します。

木質バイマスエネルギー事業には多様な地域課題を解決する力があります。CFKはその力を信じています。CFKは、この木質バイオマスエネルギーを軸とした地方創生の取組を小さくとも“実現”することを第一に考え、進めています。夢や理想を大きく掲げるだけではなく、現実をしっかり見据え地域の実情に根差した取組を大切したいと考えます。その取組を地道に重ね、少しずつ成長させながら、地域の課題解決に貢献するという想いを抱き、今、取り組んでいます。

取組2:グリーンインフラから広がるまちづくり

山はみどりに覆われている一方、人口が集中する都市部にはみどりが少なく、その「量」だけでなく「質」にも課題がある場合が多いです。CFKは、都市部のみどりも機能を十分に発揮できるものにしたいと考えています。

1)低未利用地の増加

我が国の総人口は、2004年をピークに徐々に減少しています。一方で、総住宅数は増加しており、結果として空き家が増加しています。“相続等により住宅を取得したものの、所有者は遠隔地に居住していて使用していない”といった要因が多く、同様に空き地も増加しています。

これらの空き家や空き地は所有者の意向によって散発的に発生し、まとまりなく存在しています。都市の内部において、空き家や空き地などの低未利用の空間が小さな敷地単位で時間的・空間的にランダムに発生している状態は、「都市のスポンジ化」と呼ばれており、この状態は今後も増加が見込まれています。都市のスポンジ化が進むと、防災性の低下、防犯性の低下、不法投棄、景観の悪化等の問題が懸念されることから、国土交通省では、小規模で柔軟な土地区画整理、市街地整備を行う地方公共団体や民間事業者等を支援しています。

CFKは、低未利用地を集約した後の土地利用として、グリーンインフラの導入を進めたいと考えています。

2)地域の自然に根差したグリーンインフラ

近年、記録的短時間大雨が増加している状況において、防災・減災に役立ち、かつ自然環境や生態系に配慮した地域づくりができるグリーンインフラの考え方が急速に普及しています。

2019年の台風19号による豪雨災害時では、渡良瀬遊水池がその下流にある利根川の氾濫を防いだとして注目を浴びました。渡良瀬遊水地は、平常時は広大なヨシ原が特徴で、植物約1,000種、鳥類約260種、昆虫類約1,700種、魚類約50種と、多数の動植物が生息・生育する、自然豊かな空間となっています。平常時と災害時でその姿や役割が変わるのも、自然の多機能性を備えているからこそです。

グリーンインフラという言葉は新しいですが、自然の機能の活用という意味では、日本では古くから実践されてきました。自然が持つ多様な機能を活かすには、自然の特性を理解し、江戸時代の治水対策や里山利用のように伝統的で自然の力をうまく活かす技術を用いる必要があります。

自然環境や動植物などが人間社会に提供する「自然が持つ多様な機能」は、以前から「生態系サービス」と呼ばれており、食料や遺伝子資源の供給サービス、気候調整や水質浄化などの調整サービス、生物の生息・生育環境の提供などの生息・生育地サービス、景観の保全やレクリエーションの場や機会といった文化的サービスの4つに分類されます。多機能な生態系サービスの提供こそがグリーンインフラの最大の特徴であり、防災・減災機能や樹木による緑陰効果など、人間の安全で快適な暮らしに役立つ機能・効果に注目が集まっています。

一方、多様な生物の生息・生育空間を提供するという重要な機能もあります。自然の恵みの大きさやその多機能性は、生物多様性が高いほど大きく、環境の変化や人為的な影響に対する安定性(レジリエンス)も大きくなります。豊かな生物多様性に支えられた健全な生態系は、一定の範囲内で変動しながらもその働きを維持し、自律的に回復していく性質を備えています。

3)CFKが目指すグリーンインフラ

CFKは、人の暮らしを安全に快適にするグリーンインフラも重要であると考えますが、よりよい自然環境の維持・保全を是とする環境コンサルタントとして、地域の生物多様性向上にも貢献するグリーンインフラを積極的に提案したいと考えています。

レジリエンスの増大化はもとより、身近に自然環境があるということは、レクリエーションの場・環境教育の場の提供、地域コミュニティの醸成等、様々な副次的な効果が見込まれます。

かつて整備されてきた、都市部の街路樹のような画一的な緑地ではカメムシが大発生する、ムクドリやハトが棲みついて糞害が起きるなど、特定の種が増加して臭いや騒音、不快感を増大させることがあります。

生物多様性が高くバランスが取れた緑地が増えれば、このような特定の種が大発生する現象を引き起こすことは少なくなると考えられます。本来の自然の姿を理解し、その姿に見合った空間整備や維持管理体制を構築することで、まちのみどりはもっと豊かに、もっと機能的になるはずです。

CFKは、グリーンインフラを導入するときに、より「自然」を理解し、その「機能」を最大限引き出せるよう、計画を検討する際の役に立ちたいと願っています。長年培ってきた自然環境への理解や保全・改善に対する想いは、必ず役に立てると信じています。

おわりに:みどりと生きる、みどりを活かす

與那城千恵職員(入社3年目)が描く“グリーンインフラから広がるまちづくりの実現イメージ”

これまで述べたように、都市や地方におけるさまざまな社会的課題に対し、森林整備を伴う木材の活用やグリーンインフラの整備など、「みどり」によって解決できる範囲は少なくないと考えます。人々の生活に溶け込む「みどり」だからこそ、快適で安全かつ持続可能な環境づくり(リデザイン)が可能になると信じています。

現在、日本を含めた国際社会において、自然環境を守る取組みとして「保護地域以外で生物多様性の保全に資する地域(OECM)」を認定し、それらを含めた陸と海のそれぞれ30%以上を自然環境エリア(30by30)とし保全することを目標としています。

このOECMという言葉は、日本が里山のような「人の適切な営みによって、結果、自然が守られる場」の重要性を国際会議の場で提起する中で、生まれたものです。これまで意識のあるなしに関わらず存在していた“人と「みどり」の共生地域”も、今後は自然に根差した解決策のツールとして意識して保全していくことが求められています。

CFKはエンジニアとして、幸いにもこうした環境づくりに関わっていく機会があります。「みどりと生きる、みどりを活かす」ための技術を高めて、取組む決意。CFKがタイトルに込めた想いです。

【参考文献】
1) 井上 岳一「日本列島回復論―この国で生き続けるために」(株)新潮社、2019年
2) 林野庁「森林・林業基本計画」、2021年
3) 林野庁「令和2年度森林・林業白書」、2021年
4) 小島 裕章 林野庁木材利用課長「木質バイオマスのエネルギー利用の現状と今後の展開」、2021年
5) 環境省「図で見る環境・循環型社会白書(平成19年度版)」、2007年
6) 人と自然の共生地域「OECM」、日本自然保護協会、2021年
7) 総務省過疎対策HP https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/index.html
8) 総務省統計局HP  https://www.stat.go.jp/index.html
9) 渡良瀬遊水地HP https://watarase.or.jp/

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