オフィス環境づくり10:CFKのナラティブを一人ひとりの社員が紡ぐために《前編》-対話と構造化を通して仕事のあり方を編み直す-

2025年4月に、お披露目となったCFK 本社オフィス。1階ロビー『1TTAN(イッタン)』と、4階~7階の執務空間が生まれ変わりました。

オフィスリニューアルにかけた時間は足かけ5年。2020年に「どんな働き方を目指すのか?」「私たちの原動力、根源にあるものは何か?」を見つめ直すところから始め、その実現にふさわしい環境とは何かを模索し続けてきました。社内外の多様なフィールドを訪れながら形づくられていったのが、現在の新オフィスです。単に“ハードを新しくするだけ”では辿り着けない、長く、刺激に満ちたプロセスがそこにはありました。

さぁ、オフィスは出来た。これからが本番だ。この環境を使いこなしながら、自身の働き方にどんな変化を生んでいくのか。CFKを取り巻く社会とどう向き合い、どんなプロセスを踏みながら実践を積んでいくのか。好奇心を全開に突き進むことで生まれるであろう、CFK社員それぞれのナラティブ(=物語)があらゆるところに生まれていくように。

そんなCFKのナラティブを育むべく実践した4つの取り組みを紹介していきます。前編では、《U35×経営層座談会 CFKのDOYA? 》《「そもそも...」から考える 構造化実践ワークショップ》の2つに焦点を当てます。

取材・執筆

株式会社KUUMA 濱部玲美

神戸の海辺にある船舶整備の工場跡地を拠点に、コミュニケーションメディアの企画設計・編集を行う。
CFKのプロジェクトにおいては、オフィスリニューアルの軌跡と新オフィスを柔軟に活用するための様々な提案を紹介したハンドブック『ここらで いったん HAND BOOK』の編集、またCFKの社内ラジオ『1TTAN RADIO』のコンテンツ企画・シナリオ執筆などを担当。1TTANオフィスのホンダナに並ぶ「風の谷のナウシカ」は、毎回訪れる度にパラパラめくってしまうほど好き。

年齢差20歳以上のフラットな会話から

2025年9月3日。CFK大阪本社1階エントランスを入ってすぐのところにある『1TTAN』のパークと呼ばれるスペースに集まったのは、CFKの経営者7名とU35の若手社員9名。経営陣がCFKの未来を描いた『中期経営計画 2025-2027(※以下、中期経営計画)』を下敷きに、年齢もキャリアも超えてフラットに対話をする場として、《U35×経営層座談会 CFKのDOYA?》という座談会を開催しました。

おのおの5〜6名ほどの3つに分かれたテーブルに大きく広げられたポスターには、中期経営計画と、それをU35の若手社員が読んだ上で浮かんだ疑問や感想が事前に書き込まれています。

経営陣による中期経営計画に、若手の軽やかな意見が吹き出しの形でレイアウトされた混ざり合うポスター。

普段は同じプロジェクトを担当していない経営陣と若手社員たち。やや緊張しながらの挨拶とともに話し始めたのですが、さすがは多くの社員が“自社の魅力は人”と語るCFK。年齢やキャリアの差を感じさせない気持ち良い雰囲気が一気に広がります。経営陣が口火を切って、会話を盛り上げてくれているようにも映りました。「CFKのいいところ・自慢できるところ(=DOYA!)」をテーマにしたアイスブレイクの時間でも、「人が好き」「なんでも物申しやすい!」などの声もあがり、皆さん納得の様子。

経営陣のユーモアたっぷりの会話で、会場全体の緊張感がほぐれていきます。

社員を人財として大切にするCFKだからこそ、新たな価値創造を支える働き方を実現するオフィス環境づくりに力をいれる自然体な企業風土が生まれたのだと改めて実感することができました。

堅実さも柔軟さもあるから生まれる、新しい景色

やがて座談会は、より深い対話へと進んでいきます。テーマは“CFKのDOYA? と わたし(たち)の DO”。

中期経営計画とそこに書き込まれた若手社員の声を手元に置きながら、これから意識したいこと、実際に行動へ移せそうなことを、チームで読み解き、対話しながら言語化していきます。

「興味をもったら勝手に学びに行く文化がある」「自由度が高いから挑戦しやすい」「財務基盤が安定しているからこそ、新しい挑戦が歓迎される会社だ」「社外との接点づくりを意識的に拡げていきたい」など、温まったテーブルでたくさんの言葉が飛び交います。

対話の場を眺めていると、“数々の実績を積み上げてきた堅実さ”と“軽やかに選択肢をつくりだせる柔軟さ”が同居するコントラストが、とても心地よい相乗効果を生んでいるように映ります。

白水社長も座談会に参加。各テーブルを回りながら楽しそうな社員の声に耳を傾けます。

「提案力が落ちているのでは?」「視座を上げるために、世界基準の知識に触れる必要があるのでは」「社内外との対話を増やし、基準値そのものを上げていきたい」など、真摯に向き合い忌憚なき意見を話し合えるのもCFKの魅力。

その流れで若手社員からヴィッセル神戸を例に、「世界基準の選手が数名いるだけで、チーム全体の基準が引き上げられる。CFKでも同じことが起こりうるのではないか」との投げかけが。単に経営方針を理解するための会ではなく、“環境を変えることで意識を変えようとしている社員の底力”が、確かに存在しているように感じられました。

サッカー好きの菊地さんによるヴィッセル神戸の例えには、自分ごととして経営方針を考える姿勢が表れていました。

心が動くと、血肉になっていく

「仕様書の要件を満たすだけの仕事ではなく、価値創造型の提案に踏み込みたい」「知識が属人化し、本質的ではない仕事が増えてしまっている」「限られた資源を本当にやるべきことに振り向けたい」「“やるべきことを増やす”だけでなく、“やらないこと”を決めることも重要では」など、より実務寄りの本音も聞こえてきました。

経営者ならではの視座と、若手社員の現場感覚が交差するたび、テーブルの空気が少しずつほどけていく。立場を超えて“会社の痛点”をまっすぐに話せる関係性は、決してどの企業でも当たり前に存在するものではありません。

ある若手社員の言葉も印象的でした。「成果はもちろん大切だけど、もっとじっくり、ゆっくりプロセスを共有しながら仕事ができたら」。非合理が生む可能性への提言。これこそ、CFKがこれから育てていく“ナラティブ”の芽のひとつなのかもしれません。

“誰よりも好奇心”を掲げるCFK。そのなかで聞こえてきた「なんでも、心が動かないと血肉にならない。心が動く働き方を選びたい」という言葉が、CFKのスローガンとこれから生まれてくるたくさんのナラティブの橋渡しになるように感じました。

オフィスリニューアル計画時から「知的好奇心」を掲げ、若手の視座を高め、行動に繋げている大角さん。

新しいオフィスという“器”をどう使いこなすか。そこに生まれる一人ひとりの心が動いた物語こそが、CFKの未来を形づくっていく。そんな確かな希望を感じる《U35×経営層座談会》でした。

自分の立ち位置を、鳥の目で見つめてみる

続いて取り組んだ、2つ目の実践を紹介します。《U35×経営層座談会 CFKのDOYA? 》から4週間後の2025年9月30日に、13名のCFK社員たちが1TTANフロアに集まり開催した《「そもそも...」から考える 構造化実践ワークショップ》。このワークが目指すことももちろん、CFKのナラティブと出会うことです。

司会は、本プロジェクト全体のクリエイティブディレクションを務めるロフトワーク太田さん。

”本質を極める”という姿勢を、社員一人ひとりが日々の実務に根づかせていくためには、自分の担当業務を“目の前のタスク”としてだけではなく、CFKの事業や社会の動きといった大きな文脈の中で捉える見方が不可欠です。これからを担う若手社員たちが集まり、自身の仕事を構造的に捉え、より自分ごとにしていくための対話の場が開かれました。

プログラムの企画を担当したロフトワークの太田さんによるイントロダクションの締めくくりには、主催者のひとりであるCFK 中矢昌希さんから、Web越しに応援メッセージが届きました。

インドの自立と経済的自給自足を目指した活動の象徴である”ガンディーの糸紡ぎ”を挙げ、技術と知恵を高める大切さ、足るを知る生き方、主体性を持ち自分ごとに昇華する意欲の大切さがこのワークショップを通して見えてくるのでは、と。

じっと真剣に話を聞く参加者たちの姿勢に、これから始まるワークショップへの期待が高まっていることを感じさせられました。

中矢さんのメッセージには、若手社員への愛情と期待が込められていました。

続いては、京都工芸繊維大学准教授 水内智英さんによるインプットトーク。タイトルは”構造的に考えるってなんだろう?ー可能性のタネを見つけるためのヒント”。問題を単一の原因ではなく相互に関連し合う要素の集合体として捉えるアプローチである”システム思考”を軸に、自身の仕事を構造的に捉えてもらおうという投げかけです。

水内さんは、デザインを「社会の見え方を更新する技術」と捉え、複雑化する社会では“点の課題解決”だけでは本質に届かないと指摘しました。

水内智英准教授のお話から、自身の立ち位置を俯瞰して考える大切さを学ぶCFKの若手社員。

たとえば、長年取り組まれてきたホームレス支援の例。表面的には「住まいがない」という一点に見える問題が、実は雇用制度・コミュニティの断絶・福祉の仕組みなど、複数の要因が絡み合って生まれている。この構造を理解しないと、問題は再生産され続けてしまうという話をあげ、複雑な問題を全体像として捉え、相互に関連する因果関係を分析することで効果的な解決策を見つけ出す可能性を示してくれました。

「未来は"解く問題"ではなく、私たちが生きる場所である」。水内氏が引用した社会人類学者のティム・インゴルドの言葉が象徴するように、構造を見ることは、日々の仕事や組織づくりを捉え直す強力なレンズであることが実感できる時間となりました。

在りたい景色と今の間にある、点を拾い集める

原因と結果を対立の関係で見るのではなく、相互のつながりに着目するシステム思考のインプットを受け、最初に行われたのは“ありたい姿を具体化する”ためのワーク。ここでは、事前の《経営層×U35座談会 CFKのDOYA? 》で浮かび上がった論点を土台に、CFKがこれから磨いていきたいテーマを以下の3つに整理し、どんな相互関係があるのか具体的に見ていくことになりました。

・仕事の幅を広げていく
・組織の力と仕事の質を上げていく
・「本当にすべきこと」を見極めて深めていく

3つに分かれたテーブルに、ロフトワークのディレクターが伴走し議論を広げていきます。

各テーブルで「このテーマが実現した状態とは? 」を起点に議論を進め、目指したい姿と現状とのギャップを比較しながら整理していきます。「学びの機会を増やしていくには何が必要?」「そもそも仕事の幅を広げるとはどういう状態?」といった問いが飛び交いました。

オンラインホワイトボードを活用し、各テーブルで生まれた議題を可視化しながら整理していきます

議論の中で印象的だったのは、参加者が“部署の役割や他者の仕事への理解”を語り始めたことです。「自分の業務だけを見ていると、会社全体の流れが見えづらい」「他部署がどんな課題を抱えているのかを知らない」という声があがり、“関係性を見る”というシステム思考のエッセンスが、すでに議論の中に自然と立ち上がっていました。

点をつなぐと、物語が浮き出てくる

続く“ありたい姿に繋がるしくみを考える”ワークでは、具体化ワークで挙がった要素をもとに、ゴールに向けたプロセスに見える因果関係を繋げてみること(因果関係の図解化)に挑戦しました。「学びの意欲が高まる」「業務の優先順位が整理される」「忙しさが軽減される」など、点として出た要素同士を矢印でつなぎ、システムとしての関係性を可視化していきます。

ディスカッションの中で出てきた様々な意見が、俯瞰してみると因果関係があることに気づきます。

どのテーブルでも「ここが循環しているのでは?」「この要素が足りない」「実は現場の負荷の問題が隠れているかも」と、因果のつながりを掘り下げる対話が続きました。普段交わらない部署同士で議論することで、業務理解が深まり、新たな視点が生まれていく様子が伺えました。

カテゴライズすることで足りないプロセスが見えてくるようで、最後の共有セッションでは、「忙しさが減ると学びが増え、学んだ知識が業務改善につながる」「上司の支援が増えることで挑戦が増え、挑戦が成功体験を生む」といった“好循環の仮説”が各グループから語られ、社員自身が自分の働き方を構造的に捉え始めたことが伝わってきました。

今回の取り組みは、完結した答えを導くためのものではありません。むしろ、社員一人ひとりが「自分の仕事は、どんな大きな流れの一部なのか?」と問い続けるための土壌づくりであり、“未来のCFKのナラティブ”を育てるための第一歩として確かに歩みを進めたように感じました。

今回紹介した《U35×経営層座談会》《構造化実践ワークショップ》の2つの取り組みを通して感じたのは、変わり続けることを前向きに楽しむ文化がCFKに確かに息づいているということでした。

オフィスという器を新しくしただけでは生まれない、社員同士が対話し、見えない構造を読み解き、自分の働き方を“物語”として捉え直そうとする姿。その小さな芽こそが、これからのCFKを形づくる土台になっていくはずです。点と点がつながり、やがて一人ひとりのナラティブが立ち上がっていく。その過程をこれからも丁寧に追っていきたいと思います。

取材・執筆:濱部玲美(株式会社KUUMA)
写真:福井達也

オフィス環境づくりの紹介

オフィス環境づくり01:
新たな価値創造を支える働き方の実現に向けて

CFKが模索する「これからの時代の建設コンサルタント」に求められるオフィス環境に関する中間報告を対談形式でお伝えします。

オフィス環境づくり02:
社内外の共創を生み出すには? 対話を通して空間や仕掛けづくりを考える

社内外の共創を生み出すには、どんなオフィス環境や働き方、マインドが求められるのか。現状における課題や目指すべき方向性を外部パートナーを招いて語り合います。

オフィス環境づくり03:
地域の生態系ネットワークと呼応する、オフィスと都市の未来

ランドスケープ・アーキテクチャー(緑地学)を専門とする増田昇先生(大阪府立大学名誉教授)、本プロジェクトの外部パートナーである住友恵理氏(建築デザインユニット etoa studio 代表)をお招きし、屋上や中庭でチャレンジしたいことを社員と共に語り合います。

オフィス環境づくり04:
大阪中津・西田ビルに学ぶ、自社オフィスを通じてまちを良くしていく覚悟

地域に開かれたオフィスビルを目指し、そのヒントを求め総合ローカルカルチャー施設・西田ビルを訪問。ビルオーナーの西田工業(株)の宇田川さんと、さまざまな取り組みを仕掛ける東邦レオ(株)の久米さんと語り合い、これからのCFKのあり方を模索します。

オフィス環境づくり05:
リサーチから見えてきた、わたしたちの未来の作り方

リサーチに参加した若手社員と、本プロジェクトの外部パートナーである(株)ロフトワークの服部木綿子氏が、各地でどんな気づきを得たのか、今後のプロジェクトや自身の働き方にどう生かすのかを語り合います。

オフィス環境づくり06:
本音を話すことからはじめよう。部門を超えた同世代の繋がりづくり。U35ワークショップ「喫茶シランケド」

自分たちの未来を自分たちの力でつくっていくために、U35世代の社員が自分たちの働き方の現状と理想を語り合うワークショップを企画、開催しました。

オフィス環境づくり07:
これからの仕事と働き方を、私たちが作っていくために。U35「価値創造を噛み砕くロジックモデルワークショップ」

35歳以下の若手が主体となり、U35「価値創造を噛み砕くロジックモデルワークショップ」を実施。会社が掲げている中期経営計画(2022-2024)を自分たちなりに噛み砕き、CFKの未来を考えます。

オフィス環境づくり08:
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』著者・三宅香帆さんと考える、CFKらしい「オフィスの本棚」

書籍『なぜ働 いていると本が読めなくなるのか』の著者・三宅香帆さんをお招きして、「オフィスの本棚」のあり方や運用方法について考えるワークショップを開催しました。

オフィス環境づくり09:
まもなくリニューアル。生まれ変わったオフィスを自分たちらしく活用するための手引きを作ろう

2025年3月末の第1期リニューアル完了を目前に控え、CFK社員が新オフィスを活用していくためのハンドブックを制作中です。

オフィス環境づくり11:
CFKのナラティブを一人ひとりの社員が紡ぐために《後編》-個人の語りは、企業の未来の種になる-

オフィス環境が変わると、働き方はどのように変わっていくのか。知的好奇心をより一層磨いていくための2つの取り組みと、その軌跡を追っていきます。

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