復興するまちの景観づくりの懸け橋として。

復興まちづくりコーディネーターの役割

西村 洋紀NISHIMURA Hiroki
計画系部門
港湾計画グループ

CFKは宮城県女川町において、2011年の復興計画の策定支援に始まり、まち全体の社会基盤施設の基本設計、官民の復興まちづくりに一貫して関わり続けています。

まちは将来にわたって町民の生活の場になるとともに、来訪者・観光客への空間を提供することになるため、復興期においては、各施設の再建スピードだけでなく、高質な空間の確保も重要です。

一方、スピードを優先するがあまり、公・民の各事業者に任せきりになってしまうと、まち全体の景観が不調和となる恐れもあります。

そのため、多数の関係者が空間デザインの目標像を時間軸も含めて共有し、気づきを得る場として「女川町復興まちづくりデザイン会議」、民間事業者が主導で商業エリアの景観を議論する「女川駅前商業エリア景観形成推進協定運営委員会(以下、景観形成委員会とする。)」の設置・企画・運営に携わり、町民と専門家の議論をコーディネートしてきました。

関係者との懸け橋役

私は、民間事業者の取組みである景観形成委員会において、事務局である商工会と町役場所管課を支援し、事業所の建築主、設計者、アドバイザー等の産官学の様々な利害関係者が建築プランを協議するための場を企画・運営・調整するなどコーディネートする役割を担いました。

例えば、①事前に各敷地の特徴やポイント、留意点を整理し、事業所の建築主に伝達、②事前に建築主の懸念事項や相談事項、建築プランを御用聞き的に聴取し、アドバイザーと共有することで、委員会でのアドバイス事項に反映、③委員会後にアドバイス事項をとりまとめの上、建築主に配布するなど、各主体の想いをつなぎ、建築プランに活かしてもらうことで、少しでも良い空間となるように取り組みました。

また、メール、電話のみでのやり取りや図面だけでのやり取りでは考え方や認識、イメージ、温度感等の乖離が発生します。そこで、時には商工会へ、ある時には町役場へ、またある時にはアドバイザーや建築主と一緒に現地で状況を見ながら議論するなど、実際に外へ飛び出し、町職員や商工会、建築主、アドバイザー、町民といった多種多様な人たちとコミュニケーションを取りながら進めていくなどフットワークを活かし進めていきました。

その結果、時間の経過とともに、何もなかった場所に議論していた内容が出来あがっていく姿を間近で見ることができるという貴重な経験も得ることができました。

事業所を再建する建築主にとっては、今後を左右する非常に重要な場面にも関わらず、最終的に「プランを検討する際にアドバイザーの先生に色々と相談に乗って感謝しています」という声や、「景観形成委員会のアドバイスによって素晴らしい建物が出来た」という声が聞かれた時は、この委員会に関わることができて良かったと感じました。

事前に敷地の特徴をまとめたカルテ

委員会時のスケッチ、 アドバイス事項

実際にできた空間が使われているようす

取り組みによる出来事

女川町商業エリアは、にぎわい拠点の一部を形成しており、大小様々なイベントを実施する際には、このにぎわい拠点を舞台とすることが意識されており、道路や広場という公共空間の民間活用が活発になっています。

にぎわい拠点の主要施設が揃った大型連休には、特別なイベントを実施しなかったにも関わらず、町人口の10倍を超える7万7千人の来訪者が押し寄せた結果、各商店・飲食店は“売るものが無い”という嬉しい悲鳴をあげることとなりました。

おわりに

商業エリアを含む女川駅前レンガみち周辺地区は、都市景観大賞 都市空間部門の国土交通大臣賞の受賞やアジア都市景観大賞、土木学会デザイン賞を受賞しており、いずれにおいても、民間事業者が主導して行っている「ガイドラインに基づく個別建物の誘導」などの景観形成の取組も含めて評価されています。

女川町商業エリアの景観形成は、自治体職員を始め、デザイナー、施工業者のみならず、民間事業者の取り組みも重要であったと感じています。

官民が一体となって同じ目標像をもって整備してきた結果、多くの人を惹き付ける魅力ある空間が創出されたことで、震災前になかったほどの来訪者が訪れるようになったと実感しました。

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