まちづくり社会実験「三条通で遊んでみよし」
2021年11月6日(土)・7日(日)、普段は車の通行が多い三条通のすがたが一変しました。この日、三条通では、地域の皆さんが気軽に道に集い、道を使う仕掛けづくり等、よりよい道の実現に向けた、まちづくり社会実験「三条通で遊んでみよし」が実施されました。(写真1、写真2)
当日は、沿道関係者や店舗によるワークショップの実施、みち遊びや憩いのスペースの創出などにより、その名のとおり、楽しく自由なみちの使い方を、地域の皆さんとともに体感しました。
エリアマネジメントの実践へ
三条通は、文化的にも産業的にも豊かな歴史と伝統を有する通りです。2019年には京都らしい市街地景観を残す歴史的都心地区内の道路として、電線地中化・無電柱化の早期着手路線に指定されました。
これをきっかけに、無電柱化後のまちづくりを見据えた官民連携でのエリアマネジメントに向けて、「三条通エリアマネジメント検討会議(以下「検討会議」)」が発足し、その中心を約30年間続く「京の三条まちづくり協議会」のメンバーが担いました。
取組1年目となる2020年度には、「こんな通りになったらいいな」を可視化するために、学生やU-30の社会人による「三条通デザイン・ワークショップ(以下「DWS」)」や沿道の方々による「私たちが描く無電柱化後の三条通ワークショップ」を行いました。これらの結果は、5つの将来のストーリー案とともに、全66ページの三条通デザイン・アイデアブックにまとまりました。(写真3)
その後、2021年4月に国土交通省の官民連携まちなか再生推進事業に採択され、取組をさらに前進させる一環として、前述した社会実験を実施しました。
CFKと私の立ち位置
CFKは2006年から継続して、京都市の「歩いて楽しいまちなか戦略」に携わってきました。この知見を背景として、技術的なアドバイザー兼三条通の一ファンとして、検討会議に参画し、各種会議やワークショップの企画・立案、運営補助を行ったうえで、社会実験の事務局を担いました。
筆者と三条通の関わりは、三条通の風景に惹かれた学生の一人として、DWSに参加したところから始まります。その後、2021年にCFKへ入社し、検討会議の一員となり、将来像の実現に向けて、より主体的な立場を担えることになりました。
地元の底力=協働
社会実験の準備は、人員・場所・技術の面で多くの悩みに直面しました。その中で、沿道も含む空間の創出・管理、10以上のプログラムの企画・運営を安全かつ円滑に実現できた要因は、地元の底力、つまり、地域内での「協働」にあったと考えます。
【人員】 社会実験当日には、約50名の有志がボランティアとして参加しました。また、事前のファニチャー製作では、実験前日まで多くの有志が自発的に集い、作業現場でともに汗を流しました。(写真4)
【場所】 みちと一体となった憩い空間の創出や催しの実施スペースとして、沿道事業者等から店舗前の空きスペースや駐車場等の無償提供を得ました。(写真5)
【技術】 地域の事業者から、取組のコンセプトにふさわしいデザインを施した製作物(看板)を提供するとの申し出があり、無償での支援を得ました。
協働の原動力
三条通における「協働」の原動力は下記の3点と考えます。
①住民が頑張る姿:地元内の協働が増えたり、取組への理解・合意を得られたのは、同じ地域の住民が頑張る姿があってこそだと考えます。
検討会議メンバーは、約5か月間にわたり、沿道の周辺施設(60件超)や住民への挨拶と説明を一軒づつ繰り返しました。
②蓄積された思い:三条通で約30年続くまちづくり活動は、様々な人の「三条通を良くしたい」という思いによって成り立っています。
これらの思いが、三条通の可能性を広げ、新たな魅力の発見・創出を生んできました。これらの蓄積は、マインドとして受け継がれ、取組の節々のデザインに表れ、説得力と共感に繋がったと考えます。
③新たな仲間を受け入れる態勢:社会実験の実施にあたり、プログラムの企画・運営を担ったのは、2021年度から参画した若手5人です。既存メンバーは、費用とスケジュールのみを定め、自由な議論と意思決定を彼らに委ねました。
例えば、冒頭の(写真1)は、「子どもたちや若い家族に楽しんでもらえるみちにしたい」という彼らの思いから実現しました。
また、配布するコーヒーカップに手作りスタンプを押印するといった細やかな仕上げまでこだわりました。これには筆者もアイデア出しから加わり、来訪者がカップを眺める姿を嬉しく感じました。(写真6)
おわりに
2022年度は、地元主体で継続的に活動できるよう、エリアプラットフォームの構築を行います。ぜひ三条通にお越し頂き、その魅力と変化を体感してください。
「三条通まちづくり社会実験2021 - 三条通で遊んでみよし –」
主 催:三条通エリアマネジメント検討会議
後 援:京都市