公共事業・民間事業双方からの公共空間再編 への挑戦
CFKは公共事業として東横堀川沿いの水辺再生の計画に携わりながら、「使う」ことを公共空間再編の起点に捉え、民間事業として遊歩道と一体となった沿川建物の運営に挑戦しています。沿川建物とは、シェア型書店・カフェ機能を備えた「ホトリヲ」。このホトリヲが2025年8月30日にグランドオープンしました。
東横堀川は大阪都心を南北に流れ、中之島と道頓堀を結ぶ約2.4kmの川です。水都大阪を象徴する「水の回廊」の一角ですが、川の上空に阪神高速道路の高架橋がかかり、存在感がありません。しかし今後大阪市により、20年程度をかけて東横堀川全川で耐震護岸への改修と遊歩道整備が目指されています。2025年4月には、その先行区間として本町橋~農人橋右岸側約200mの遊歩道が開通しました。ホトリヲはその一角に位置しています。
シェア型書店
ホトリヲ周辺の本町橋
橋の下
東横堀川に求められること
川沿いの遊歩道と聞くと誰しもに歓迎されそうですが、実際にはそうではない面もあります。これまで居住空間に対して裏側だった川側を開放することによる治安面や衛生面、騒音面での心配が聞かれます。東横堀川のかつて遊歩道として開放されていた区間では、キャンプ等の不適切な利用が横行し管理が行き届かず、閉鎖された過去があります。整備された後のマネジメントがなにより重要な課題となっています。しかしながら、これまで50年以上にわたり裏側だった川沿いを民間で盛り上げる機運は発展途上です。東横堀川沿いの変化の期待感を高めることと、つくったあとのマネジメントの仕組みが求められています。
水辺の風景を変える
ホトリヲは先行整備された遊歩道沿いに、川に向いた建物第1号としてオープンしました。ホトリヲのとなりの店舗と合わせて2軒が川側に出入り口や開口部を設けており、敷地境界にはフェンスが設置されていません。
川側を開放したことで、遊歩道のテラス席を自由に使う様子が見られます。遊歩道にはCFKが河川管理者(大阪市)から占用許可を受けて、社会実験的にテラス席を設置しています。ホトリヲのことを見て、東横堀川沿いの事業者から川側に出入り口を設けたいと相談を受けています。高速道路により日当たりは今ひとつでも、風や視線が抜け、開放感のある川沿いは、都心の中で貴重な環境です。そのような環境をより多くの人に実感してもらい、遊歩道沿いの建物が川側の活用を活性化し、にぎわいを創出してほしいです。
偶然の連続
建設コンサルタントのCFKがなぜ民間事業としてシェア型書店カフェを立ち上げたのでしょうか。コンサルタントと事業主体では、求められるスキル、意思決定構造、ビジネスモデル、予算管理などあらゆることが違います。それでも今回の取組への挑戦には様々な偶然の後押しがありました。東横堀川の受注業務の遂行に当たり公共空間のみを対象とした検討に限界を感じたこと、沿川事業者や建物オーナーとの協力関係が築けたこと、店舗運営を担う建築設計事務所である株式会社STUDIO Cとの運営体制が構築できたこと、そのほか大阪市の後押しやCFKの重点分野としてマネジメント分野を掲げていることなどが重なりました。タイミングもよかったかもしれません。
シェア型書店の可能性
東横堀川は中之島のような水都のハレの場ではなく、また道頓堀川のような観光・商業の場でもありません。沿川はオフィスや住宅、店舗が混在し、日常利用がメインの生活空間です。働く人、暮らす人を対象に、目的を持たずに立ち寄れる場所づくりを行いたいと考えました。
既存の沿川施設としては、事務所や夜の飲み屋が多いことから、昼も訪れられる機能、子どもから大人まで来訪できる場所として本を中心コンテンツに設定しました。そして、書店の中でも棚貸しのシェア型システムとしています。シェア型書店は一棚で本屋さんを行いたい人(棚主)に貸し出す仕組みで、小さな本屋さんの集合体がホトリヲになります。いろんな人が川沿いの場所づくりに関われる仕組みです。
全体125棚のシェア型書店に対して、棚主は現在も募集中です。これからの盛り上がりに向けて頑張っていきたいと思いますので、関心のある方はぜひホームページをご覧下さい。
水都大阪のこれから
先の見通せない現代社会において、20年後のようすは描きにくいです。しかしながら、東横堀川は水都大阪の中でも北から南まで遊歩道として整備できる空地(都市計画公園)が残されているところが大きなポテンシャルです。そのポテンシャルを生かすためには、多様なステークホルダーとの合意形成がカギになります。東横堀川の先行区間での実績が他区間に展開されるよう、モデルになる空間、仕組みをつくっていきたいです。
店舗概要
店舗名称 : ホトリヲ
所在地 : 大阪市中央区本町橋5-2 地下1階
店舗面積 : 約41.89㎡
オープン日: 2025年4月13日 カフェバー先行オープン
2025年8月30日 グランドオープン(シェア型書店サービス開始)
営業日時 : 水・金 15:00~22:00/土・日 13:00~19:00 祝日 不定休 ※詳細はInstagramをご確認ください
運営体制 : 中央復建コンサルタンツ株式会社と株式会社STUDIO Cによる共同運営
公式HP :https://hoto-lio.studio.site
Instagram :https://www.instagram.com/hotolio_
山本 琢人YAMAMOTO Takuto
未来社会創造センター
公民連携まちづくり室
サブリーダー







