理想への挑戦 -新入社員の橋梁模型製作奮闘記-

はじめに

CFKは公共空間デザインに係る技術開発の一つとして、CFK独自の土木デザインを追究する「CFKデザインWG」の活動を推進しています。デザインWGでは、活動の一つとして、構造デザイン分野の能力開発を目的に「設計(デザイン)する力を持った人材の育成」と「デザインコンペに強い技術者の能力開発」に取り組んでいます。

この活動の一環で、部署の異なる4人の新入社員がTeam-CFKを組み、『建設技術展2021近畿 橋梁模型製作コンテスト』に参加しました。昨年と同様にコロナ禍の影響により会場で製作はせず、事前に事務局から支給された材料で製作し、当日会場に持ち込むルールでした。審査基準は表1の通りです。

1 審査基準

悩んで悩んでデザイン決定

吊り材の曲線美を参考にした Ponte sul Crati (クラーティ川橋 イタリア)
デザイン決定

これまで「橋」に関わったことのないメンバーが多く、製作する模型のデザインの決定に時間を要しました。4人それぞれが実在する美しいと思う橋の写真を集めたところ、斜張橋の吊り材を用いて作られる包絡線が綺麗なクラーティ川橋(写真上)が4人の目を惹きました。この美しい包絡線をアーチ橋で表現するため、材料の強度特性等を考慮しながら、CADやミニ模型の作成により、橋を渡る人の視点から美しい包絡線が見れるデザインに決定しました。

第1橋:初めての模型づくり

第1橋

メンバーのほとんどが模型作りの初心者であり、手探りの中で製作順序や使用材料を検討しました。初めての作業ばかりで戸惑いながらも、過去作品を入念に観察し、コンテスト経験者からアドバイスを受けながら、製作方法を学習していきました。

規定の支間長1mに対して支給される木材の長さは90cmであるため、木材を接合させる必要がありましたが、アーチの接合部が弱く、見栄えの悪い補強をするなど、場当たり的に対処しながらの製作となりました。

そうして完成した初めての模型で載荷試験(17.5kg)を実施したところ、メンバーの予想を裏切り、見事に耐えました。

第2橋:デザイン性の追求

第2橋

本番より軽い重りとはいえ、第1橋が載荷試験に耐えたことから自信をつけ、チームの雰囲気は明るくなりました。作るだけで精一杯だった第1橋とは異なり、軽量化や仕上がりを重視して第2橋の製作を進めました。

第1橋の製作と載荷試験を通して、アーチの接合部が弱点であるとわかったため、アーチを構成する角材3本の接合部の位置をずらすことにより強化を図りました。

第2橋は、第1橋よりも完成度の高い仕上がりとなりました。しかし、本番と同じ25kgの重りを乗せた瞬間に桁が折れ、美しい包絡線とともに崩落してしまいました。タコ糸が伸び、アーチに荷重が伝わるより先に桁が折れてしまったことが原因として考えられました。自信満々だったメンバーは、無残に壊れた第2橋を前に打ちひしがれました。

第3橋:背水の陣

第3橋

残された時間が少なく本番前最後の試作橋となるため、軽量化は図らず、絶対に落橋しないよう強度を重視しました。第2橋崩落により自信は砕け散ったものの、メンバーの団結は強化され、作業への慣れもあり製作はスムーズに進みました。

まず、2本のタコ糸をねじり合わせて1本の糸とすることで、糸の伸びを抑え、吊り材の強度を向上させました。桁下には竹ひごを配置し、桁の端部間を繋ぐことで、桁自体を強化しました。他にも、木に熱を加えて曲げる「曲げ木」の製法をアーチ上部に乗せる平板に取り入れることで橋に一体感を出し、デザイン性を向上させました。

頑丈に製作したため、載荷試験は無事成功しました。そこで、載荷試験を行いながら、竹ひごと吊り材を徐々に切断し、本当に必要な部材を確かめることを試みました。その結果、竹ひごは不要で、桁の中心に近い吊り材に荷重が集中して作用しており、実際には吊り材を数本切断しても強度に問題ないことが判明しました。

載荷試験本番

載荷試験本番

第3橋では強度を追求したため、軽量化をほとんど考慮しませんでした。しかし、第3橋の載荷試験後から本番まで2週間ほどしかなく、これ以上試作する時間を確保できなかったため、重量や強度はそのままで、仕上がりの美しさにこだわることを決めて、本番用の模型を製作しました。

橋梁模型製作コンテスト載荷試験の結果は、落橋。載荷試験練習では不安がなかったアーチ上部の平板が、載荷後一瞬で落下し、桁に作用する荷重を吊り材で分散させることができず、桁だけに大きな荷重が加わったためです。予期せぬ部分が壊れたことに対して、驚きは大きかったです。理想の形を作り上げるために努力した結果は、非常に残念な結果となりましたが、審査委員長の講評では、「あるチームは落橋後すぐに集まって検討していた、チームワークが素晴らしい。」と私たちに対するメッセージをいただきました。

私たちの挑戦はまだ始まったばかりです。この悔しさをバネに、今後4人それぞれが技術者として成長していく姿を、ぜひ応援していただければと思います。

おわりに

福原 凪咲

 

悔しい気持ちでいっぱいですが、チーム一丸となって様々な課題に取り組み、自分達で考えたデザインを形にするという良い経験ができました。また、「模型製作、載荷試験、原因の追究」を繰り返すことで、構造に対する理解を深めることができたと感じています。今回の取り組みで学んだこと、感じたことを今後の業務でも活かしていきたいです。

橋本 智也

 

結果は残念でしたが、模型コンテストを通して多くの学びを得ました。特に、試行錯誤を繰り返す過程で、なぜ壊れたのか、どうすれば作りやすいか、などをすぐに考える習慣が身に付きました。この貴重な経験で得られた考える習慣を継続して、今後の仕事に取り組んでいきたいです。

並川 佳愛

 

新人だからこそ挑戦できたことや学びも多くあり、とても貴重な経験でした。模型製作を通して、構造物を作り上げる面白さを感じたとともに、構造に対する知識不足を痛感したので、多様な面から、今後の起爆剤となりました。

水野 陽弓

 

本番では落橋という残念な結果に終わったものの、自分たちの手で模型を作り上げるという貴重な経験ができました。当初は各部材に働く力の流れが全く想像できませんでしたが、作って壊す過程の中で各部材の構造的役割がイメージできるようになり、コンテスト当日に他作品を見たときにも、以前とは異なる視点から構造を考えることができるようになりました。

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