北海道新幹線 新青森~新函館北斗間の設計

※本稿は2012年8月に執筆した記事を一部編集したものです

北の大地に、新幹線が上陸

安西 綾子ANZAI Ayako
鉄道系部門
東京鉄道グループ

本州と北海道を結ぶ北海道新幹線は、2016年3月に、新青森駅 - 新函館北斗駅間が開業しました(図1)。CFKは、2008年度以降、鉄道建設・運輸施設整備支援機構から「中野・大野川他詳細設計業務」「幸連高架橋外5箇所詳細設計業務他」「木古内路盤・大平高架橋外詳細設計業務他」等の詳細設計業務を受注し、北海道新幹線の設計に携わってきました。

設計の特徴

北海道新幹線開業路線図
1. 北海道新幹線開業路線図

北海道新幹線ならではの設計業務の特徴を紹介します。

まず第一に、厳しい環境条件が挙げられます。特に木古内駅~新函館北斗駅間は海岸から非常に近い位置を通っており、塩害に考慮した設計を行う必要がありました。設計上の対策としては、塩化物イオンの浸透による鉄筋の腐食やこれによるコンクリートのひび割れ・剥離を避けるため、海岸線からの距離1000m、700m、500m以内の段階別に一般的な新幹線構造物よりも水セメント比を小さく鉄筋のかぶりを大きくするなどの配慮をしました。防音壁や地覆などは、部材厚が薄いため、かぶり確保の代わりに鉄筋表面にエポキシ樹脂を塗装した材料を使用しました(図2)。塩害対策の他にも、北海道新幹線では、積雪・雪崩対策や落石・地滑り対策など立地条件にあわせて様々な対策を講じています。

他には、豊かな自然環境への配慮が挙げられます。設計区間には山間部もあったため、河川部では鮭の遡上や流域に生息する貴重な動植物へ配慮した河川橋脚の基礎形状や施工計画上の配慮を要しました(図3)。

塩害対策のエポキシ樹脂鉄筋
2. 塩害対策のエポキシ樹脂鉄筋
豊かな自然の残る山間部
3. 豊かな自然の残る山間部

鉄道構造物初のGRS一体橋梁

「木古内路盤・大平高架橋外詳細設計業務他」では、2012年に改訂された「鉄道構造物等設計標準・同解説 基礎構造物」で新構造形式として提案されたGRS一体橋梁が採用されました(図4)。GRS一体橋梁とは、従前のインテグラル橋梁を改良し開発された、上部工(桁)および下部工(橋台)を一体とした補強土併用ラーメン構造の一体型橋梁です(図5)。橋梁の背面盛土をジオシンセティクスにより補強するため、①耐震性能の向上・温度伸縮に伴う背面地盤の沈下抑制、②断面形状のスリム化・支承を省くことによるメンテナンスフリー化、などの特徴があり経済的にも有利となります。

GRS一体橋梁(北海道木古内町)
4. GRS一体橋梁(北海道木古内町)
インテグラル橋梁とGRS一体橋梁の比較
5. インテグラル橋梁とGRS一体橋梁の比較

おわりに

本設計業務では、鉄道はもとより橋梁、道路、河川、地盤、測量など各分野の技術力を要しました。設計した構造物が実際に形になることは、設計者としてこれ以上にない喜びでした。

現在北海道新幹線は、新函館北斗・札幌間の整備が進められています。今後もCFKの総力を結集し、鉄道整備の一端を担っていきたいと思います。
 

《出典》
図1. http://ja.wikipedia.org/
図5. 鉄道構造物等設計標準・同解説 土留め構造物(平成24年1月)p.394 付属図29.2

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