阪神高速道路 西船場ジャンクション改築事業~都市内高速道路の高架橋新旧一体化拡幅~

丹羽 信弘
Niwa Nobuhiro
構造系部門 技師長

改築事業の概要

写真1 渡り線(新設)橋梁

阪神高速道路では、関西のくらしや経済の発展に貢献するため、より利用しやすい、安全・安心・快適な道路ネットワークの整備を進めている。
現在、大和川線、淀川左岸線(2期)、淀川左岸線延伸部、大阪湾岸道路西伸部、そして西船場ジャンクションが新設・改築中である。
西船場ジャンクション(以下、 西船場JCT)改築事業は、大阪市の中心部である西本町において、阪神高速道路16号大阪港線東行(以下、大阪港線拡幅部)と1号環状線北行(以下、環状線拡幅部)を直接接続する渡り線(写真1)を新設し、あわせて大阪港線と環状線を拡幅する事業である。
 2019年11月時点では、大阪港線から池田・守口方面へ向かうためには、環状線を半周迂回(約5.5km)するか、乗り継ぎ制度を利用して一般道路を経由する必要がある。西船場JCTが完成し、環状線北行と直接接続することで、半周迂回による時間的損失の解消や、走行距離の短縮によるCO2排出量の削減など、環境負荷の低減が図られる。
西船場JCTの改築事業は、既存の道路ネットワークを充実させ、安全・安心・快適な道路サービスを提供するもので、大阪港線拡幅部は2018年5月28日に先行開放され、残り区間は2020年1月末頃の完成を目指して工事が進められている。(図1)

図1 位置図(阪神高速道路HPより)

 

 

総合コンサルタントとしての設計体制

本業務は、大阪市のど真ん中、西本町の市街地で地下には地下鉄やライフラインが、地上には中央大通りと街路に面してビル建物が建ち並ぶ都市内高速道路特有の厳しい環境下で、建設後約50年が経過した高架橋を通行させながら1車線拡幅と渡り線新設、信濃橋入路の付け替えの詳細設計を行うという困難を極めるプロジェクトであった。
CFKはセントラルコンサルタント株式会社と設計共同体で、総合コンサルタントとしての強みを活かして、大阪港線拡幅部と渡り線の新設及び信濃橋入路の改築と一部環状線拡幅部に関する調査と詳細設計を実施した。
環境・防災系部門では、設計を行うための既設高架橋の位置と寸法を詳細に把握するための3次元レーザー測量と、基礎を設計するためのボーリング地質調査を実施した。道路系部門では現状の高架橋に適応した道路線形設計を、計画系部門では施工計画での車線規制による街路影響検討を実施した。そして構造系部門では、それらの成果を用いて拡幅・新設の構造検討・橋梁詳細設計・施工計画・景観検討等を行った。

1.一体化による高架橋拡幅

拡幅にあたっては、かつては新旧高架橋間に縦目地を設けて拡幅高架橋を新設することが多かったが、縦目地部分での降雨時の走行安全性、通行時の異常音の発生低減、損傷し易い縦目地部分の維持管理の除去を目的に、本事業では新旧上部工間に縦目地を設けない一体化拡幅構造を採用し、床版および桁は既設の構造形式と合わせることを基本とした。(写真2)

写真2 新旧一体化による高架橋拡幅

 

 

2.対震橋脚を用いた高架橋拡幅設計

一体化拡幅にあたっては、既設側と新設側の桁たわみを合わせる必要があり、そのために橋脚位置を揃え支承位置を合わせることが必要であるが、本区間では高架橋下に街路があり、基礎フーチングを拡幅して既設橋脚の拡幅や、隣に橋脚を設けることは出来ない。
そこで、施工ヤードの制限、工期の短縮、さらに地震時の早期復旧性を考慮して、既設橋脚は上部工を受ける梁のみ拡幅し、既設橋脚の中間に地震時の慣性力を分担する対震橋脚として、鋼管集成橋脚を新たに設置した。
本橋脚は、写真2,3に示すように複数本の鋼管を低降伏点鋼材によるせん断パネルを有する横つなぎ材で一体化した阪神高速道路が開発した新構造である。地震時には、この「せん断パネル」が地震エネルギーを吸収し、ほかの部材の損傷を抑え、柱材である鋼管は地震後も使用できる状態となる。
他にも鋼管集成橋脚のせん断パネルをファイバーモデルとした構造系全体での3次元モデルによる地震時動的解析や、既設鉄筋コンクリート橋脚の一部にASR(アルカリ骨材反応)劣化があり、それを考慮した補強設計、最新の設計基準に準じて、高架橋全体として既設橋に極力負担を掛けない設計を行った。
 

写真3 鋼管集成橋脚

 

 

3.都市内という厳しい条件下での施工

本事業区間では、高架橋下に街路が並行し、なにわ筋や四ツ橋筋など幹線道路との交差、地下鉄や地下埋設物も多数あり、基礎工下部工施工と上部工桁架設は現地状況を確認しながら慎重に計画した。交差道路上の上部工架設は深夜に通行止めにして大型クレーンによる一括架設を実施した。(写真4)

写真4 大型クレーン一括架設

 

 

田中賞受賞

本橋では、対震橋脚をはじめとする最新の技術を活用し、狭隘な都市内においてジャンクションの改築を実現したことが、今後の橋梁建設にも貢献すると認められ、2019年6月に改築事業のうち暫定供用した大阪港線拡幅部(写真1)において土木学会田中賞注)(作品部門改築)を受賞した。

本プロジェクトを振り返って

本業務はボリュームが大きく、厳しい制約条件下での都市内高架橋の拡幅改築を行う難しい設計であったが、既設構造物の改築を最小限に、最新の設計基準を満足し景観にも配慮した“イイ高架橋”を創ろうという志のもと、多数の困難も、プロジェクトメンバーと共に新技術を駆使して完成させることが出来た。
いよいよ2020年1月末の工事完成が楽しみであり、西船場JCTの開通によって、関西のくらしや経済の発展に貢献できることを誇らしく思う。

注)土木学会田中賞とは、関東大震災後の首都の復興に際し、帝都復興院初代橋梁課長として、隅田川にかかる永代橋や清洲橋といった数々の名橋を生み出した、田中豊博士に因むもので、橋梁の優れた業績に対して授与される

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