ガラスの地球の危機的状況
大宇宙の暗黒の中に青く輝き、奇跡としか言いようがない豊かな生命が満ちた星「地球」。
46億年の長い歴史の中で、わずか30万年前に人類(ホモ・サピエンス)が誕生し、さらに言えば産業革命後、わずか200年ほどの間でもろく壊れやすいガラスのような地球はバランスを崩し、危機的状況に陥っています。
国際的な取組み
地球がバランスを崩している主な要因として、地球温暖化や生物多様性の損失等が挙げられます。
生物多様性の損失については、2022年12月のCOP15(国連生物多様性条約第15回締約国会議)において、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復軌道に乗せるネイチャーポジティブの方向性が示されました。また、その実現に向けた目標の一つとして30by30(2030年までに、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標)があり、CFKも30by30アライアンスメンバーとして参画しています。
「系」の重要性
社会資本整備におけるネイチャーポジティブの取組みとして、環境影響評価が挙げられます。絶滅危惧種などの重要な生物種が確認された場合、環境保全措置(ミティゲーション)の一つとして重要な種を事業計画地外に移植するケースがあります。移植後はモニタリングが実施され、移植個体(種)が定着しているかで評価されることが多いのですが、本来、その重要な種が存続できる「生態系」を維持することが重要です。
これに限らず、ものごとの本質を考える上では、普段から“繋がり”=「系」を意識しておくことが重要です。
また、最近では、ミティゲーションのメニューとしてグリーンインフラ(GI)の考え方が取り入れられるケースも増えてきています。
グリーンインフラの広がりとCFKの取組み
GIは、自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決に活用しようとする考え方です。
CFKでは2021年度からGIに関する研究開発チームを立ち上げその導入・普及に向けた取組みを行っています。
実務面では、「立体的な緑化の効果検討(東京都)」や「土地区画整理事業におけるグリーンインフラ導入検討(大阪府吹田市)」、「グリーンインフラによるまちづくり基本方針の検討(大阪府豊中市)」といった先進的・研究的要素も多く含まれる業務を多数経験しました。
研究開発では、全社的に取り組むプロジェクトを題材とした更なる提案力強化を図っており、環境分野の一部の技術者から始まった取組みは計画分野・設計分野の技術者にも意識の変化をもたらし始めています。さらに、CFK本社ビルのリニューアル工事に合わせ、敷地内に“アメニワ”を整備し、雨水貯留浸透機能や暑熱緩和機能を定量的に把握・評価するための調査・研究も実施しているところです。
これからのインフラ整備
都市部でGIの導入が進み、都市の中の緑が「点」から「線」へとつながり、やがて「面」的な広がりとなれば、都市の中の緑ではなく、“緑の中の都市”になり、地方部の緑や山林ともシームレスにつながる「系」としての役割が高まり、ネイチャーポジティブにもつながるのではないでしょうか。また、雨水流出抑制(治水)やヒートアイランド対策、都市景観、心理的効果などの多面的な効果も期待できるでしょう。
今後のインフラ整備においては、人間もまた自然界の一員であることを忘れず、”GREEN”の観点を強く意識した取組みが重要であり、人間を含む「生態系」中心への価値転換が求められていると考えられます。
Well-beingへのつながり
ネイチャーポジティブの達成には気候変動対策、生物多様性保全、持続可能な経済活動の両立が必要であり、目標を達成することで持続可能な社会を実現するものです。
すなわち、これらの取組みは、最終的には人間だけでなく生態系も含めたWell-beingにもつながると考えられます。
2030年まであと5年。ガラスの地球を救うことができるかは、本当に待ったなしの状況でこの数年の取組みにかかっています。未来の地球のため、子ども達のため、建設コンサルタント技術者ができることは決して少なくないはずです。
改めて、Think Globally,Act Locallyを実践し、全員が“自分事”として行動することが重要です。








