宝が池から、みどりの未来を描こう

人と森が紡ぎなおす、あたらしい里山を描く

京都市の中心部から地下鉄で約20分と都市近郊にありながら、豊かな自然が広がる宝が池公園は、身近な「里山」として市民に親しまれてきた場所です。昭和初期までは、薪を生活の一部として活用していた時代背景もあり、宝が池の森には人の手が入り、自然と人との関係が密接でした。しかし、時代の変化とともに生活様式が大きく変わり、森に人が入る機会は減少し、現在では木々が密集して光が届きにくいうっそうとした森になっています。

こうした状況を受け、宝が池公園では、現代の暮らしに即した新たな「里山」のあり方を模索しています。創造的かつ柔軟な活用を通じて、人が集い、自然とふれあう魅力的な場づくりを目指しているところです。2023年度には、公園に関わる多様な主体の想いを集約し、「宝が池みらい共創指針」を策定しました。これは、自然との共生を図りながら未来志向の公園運営を目指す指針であり、今後の活動の基盤となるものです。私自身がこの業務に携わる中で触れた、森が持つ圧倒的なスケールと力強さを共有したいと感じています。

宝が池公園からは国立京都国際会館と比叡山を望むことができる

 

 

青空の下で、未来を語る

2024年度より、宝が池公園に関わる人々の交流の場として「宝が池びとトーク」を開始しました。この取り組みは、公園の自然環境をきっかけに、人と人との対話を促すことを目的としています。その企画のひとつに「わらしべウォーク」があります。

森を散策しながら植生の回復の対策を学ぶ

 

参加者は森の中を歩きながら、自身の五感を頼りに「お気に入りのもの」を探します。色彩の美しい石、手触りの良い枝、地衣類が付着した独特な質感の木片など、選ばれるものは人それぞれです。大人であっても童心に帰ったように真剣に探す姿が印象的です。わらしべウォークの最後には、探したものについて参加者同士で語り合う時間を設けています。「未来を見通す望遠鏡」「宝が池びとの集い旗」など、見立てによって新たな意味が生まれ、自然物への愛着が深まります。飾り付けの作業は、黙々と取り組むことで自己と向き合う時間にもなっています。
 

楽しく語らう「宝が池びとトーク」参加者たち

 

また、「この植物はなぜこんな色なのか」「鹿やイノシシの罠はどこにあるのか」といった素朴な疑問が自然と生まれ、公園への関心が高まっていきます。今後は、わらしべウォークで集めたものを作品集としてまとめることを検討しているところです。

わらしべウォークで集めたものを並べて撮影

 

 

青空の下で、未来を語る

「宝が池みらい共創憲章」の策定にあたり、「孫世代の暮らしと宝が池公園の関わり」をテーマとしたワークショップを実施しました。参加者は、未来の社会や技術の進展を想像しながら、公園の役割について自由に意見を交わしました。印象的だったのは、森の保全に関わる方から「植生の変化は50年~100年という長い時間をかけて進むものだ」と教えられたことです。人の暮らしを森の時間軸で捉えるという視点は、私にとって新鮮であり、思考の幅を広げる契機となりました。

ワークショップでは、「働かなくてもよい社会が訪れるかもしれない。そのとき、人々が自分の時間を大切にし、新しい挑戦ができる場として公園が機能してほしい」といった意見が出されました。また、「森に入るすべての人が、保全と利活用の基礎知識を持ち、良心に従って行動する『宝が池びと』であるべき」という提案もあり、自然への敬意を前提とした憲章の骨子が形づくられました。この憲章は、細かな禁止事項ではなく、森を「神様」のように見立てた壮大な思想に基づいています。運用方法については今後の検討が必要ですが、完成した憲章には深い愛着を感じています。

また、憲章のとりまとめにあたっては、約半年間にわたりコアメンバーによる会議を重ねました。いつもは市役所の会議室や公園内の作業小屋で行っていましたが、ある日、公園の青空の下で会議を行いました。その日の話し合いはとても楽しく、いつも以上に活発な意見交換が行われたことを記憶しています。将来的には、宝が池公園がサテライトオフィスとして活用されるような柔軟な使い方が広がることを期待しています。

活発な意見交換ができた青空会議

 

 

みどりの力で、地域をつなぐ

宝が池公園では、地域の多様な世代が関わる企画が少しずつ立ち上がり始めています。高齢者の知恵と経験を活かした落ち葉堆肥づくりや、子どもたちの体力づくりを目的とした公園全体を使った運動会など、自然を舞台にした活動が企画されています。気軽に自然にふれあう「宝が池びとトーク」を通じて、定期的に森に関わる人が増え、地域の中で自発的に挑戦する関係人口の拡大を目指しています。

また、公園内で伐採・剪定された木材の新たな活用方法を模索し、これまで処分に費用を要していた資源を地域の中で再利用する資源循環の仕組みづくりにも着手しています。このような活動を通じて、宝が池公園が人と人をつなぐハブとなり、地域に根ざした新しい価値を生み出す場となることを目指しています。

地域の高齢者が手作りした落ち葉堆肥の場所

 

 

髙良 麻由
TAKARA Mayu
計画系部門
総合政策グループ
サブリーダー

 

宝が池みらい共創会議(京都市情報館HP):

https://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/page/0000325856.html

 

Facebook · ・・・だから、宝が池。:
https://www.facebook.com/kyoto.takaragaikepark

 

Instagram
https://www.instagram.com/takaragaikepark/

「PPP」に関連するトピックス

「エリアマネジメント」に関連するトピックス

「自然環境保全」に関連するトピックス

RECRUIT

採用情報


私たちと一緒に新しい未来を切り開きましょう。
CFKでは、高い志を持ってチャレンジし続けるあなたを待っています。

採用情報へ 採用情報