関西の地盤情報に基づく防災ハザードマップ開発の取組み

2011年紀伊半島大水害の現場写真
2011年紀伊半島大水害の現場写真

防災への思い

佐川 厚志SAGAWA Atsushi
環境・防災系部門
地盤・防災グループ
サブリーダー

私は大学時代に活断層の研究を行っており、軟弱地盤を掘削して活断層を観察したり、地震の発生間隔や規模について研究していたことから、地震防災について興味があり、機会があれば地震防災に関する研究に関わりたいと常日頃から感じていました。

そのような折、地盤工学会関西支部において「関西の地盤情報に基づく防災ハザードマップ開発研究委員会」が設立され委員が公募されました。私は地震に関する興味と、防災にも貢献したいという思いから、この委員会に参画することにしました。委員会には30人以上の産学官からなる技術者・研究者が結集し、2016年4月~2019年3月までの3年間で、防災ハザードマップの開発に関する研究活動が行われました。

液状化危険度マップの開発

弁天町でのボーリング調査
1 弁天町でのボーリング調査

近年、大規模な地震・豪雨災害などの地盤災害が多発しており、特に南海トラフ沿いの地域ではマグニチュード8~9クラスの大規模地震発生の切迫性が指摘されています。本委員会では様々な災害のリスク評価が研究対象となっており、私は軟弱地盤解析を得意分野としていることから、液状化に関する研究活動に参加することにしました。この研究活動の最終的な成果は液状化危険度マップの作成であり、10名以上の委員で構成され、各々が役割分担して調査や試験、解析を行いました(図1、図2)。

委員会のメンバーはベテラン技術者や学識経験者が多く、最初は分からないことが多かったのですが、共同で研究していく中で色々と学習し、最終的には複数の地震応答解析手法および液状化解析手法を提案して解析を行い1)、液状化危険度マップの作成2)に貢献しました。

地盤工学会関西支部:関西の地盤情報に基づく防災ハザードマップ開発研究委員会 報告書(平成31年3月)  

2 液状化危険度マップ(液状化指数PL) 2)

今後の展望

上記の研究において、今後の課題としては、様々な地域で液状化解析の事例を蓄積し、より現実的な挙動に近い解析手法やパラメータの設定を検証していく必要があります。また、液状化危険度マップはやや技術者向けの内容となっていますが、今後さらに改良していくことで、より多くの一般市民が利用できるようになり、液状化対策の普及等に貢献することが可能と考えられます。

委員会活動と業務との両立は大変でしたが、委員会での研究を通して様々な技術者や学識経験者と交流し、さらに論文を発表することで、防災や液状化に関する専門力を深化させることができました。また、大規模体制の中で調査・解析を行って全体として1つの成果を作り上げていくという、貴重な経験をすることができました。今後この経験を大規模プロジェクトや新たな研究活動に活かしていきたいと思います。

最後に、冒頭を飾っているのは私が担当した2011年紀伊半島大水害の現場写真です。入社3年目で災害現場を担当し、その規模を体感し、調査してメカニズムを解明して防災に貢献するという貴重な経験をしました。これらの経験は今の私の糧となっており、CFKの若手にこれらの貴重な経験を伝えて、更なる若手の活躍に繋げていきたいと思います。

【参考資料】
1) 佐川厚志・大島昭彦・後藤浩之・末吉拳一・甲斐誠士・景山健・春日井麻里・永井久徳・阪東聖人・深井晴夫:大阪市港区弁天町地区における液状化危険度評価の比較、Kansai Geo-Symposium、2019

2) 末吉拳一・大島昭彦・中村優孝・濱田晃之・春日井麻里・平井俊之:等価線形地震応答解析による大阪表層地盤の揺れやすさと液状化危険度の比較、Kansai Geo-Symposium、2019

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