人の命を守る 防災・減災技術者を目指して

過去20年を振り返って

八谷 誠
HACHIYA Makoto
環境・防災系部門
ゼネラルマネージャー

地盤分野の過去20年間における組織名称の変遷を見てみると、調査技術部、地盤室・地質室・土質試験室、地盤グループと変化し、2011年に地盤・防災グループという名称になりました。名前が示す通り業務銘柄のウエイトが図1に示すように変化してきています。CFKの地盤分野は従来から土質・地質調査解析、水文調査や地下水解析、軟弱地盤解析などがメインでした。15年ほど前から防災分野(斜面対策調査設計、砂防堰堤の調査設計)にも注力し、現在では道路防災点検・診断業務とそれから派生する防災設計業務にも多く従事するようになっています。

水防災分野については、当初、河川における治水事業(計画・設計)が主でした。その後、内水氾濫を対象とした下水道浸水対策事業のニーズの高まりにより、1999年度に雨水流出解析ソフト(InfoworksCS、XP-SWMM)を導入(図2)し、大阪市や神戸市など幾多の浸水対策事業に携わってきました。

1 地盤分野の銘柄の変化
2 InfoworksCSによる管路モデル化の例

防災設計業務への取り組み

3 のり面勾配1:1.8+アンカー工法による長大切土のり面

道路や鉄道事業における切土のり面・盛土斜面の対策設計、急傾斜地対策事業に係る斜面対策設計、または砂防事業における砂防堰堤の調査設計など、防災に関わる調査設計業務に注力しています。ここでは、写真3に示すような最大切土のり面の設計事例を紹介します。

写真3は九州新幹線玉名熊本間の長大切土のり面です。表層に分布する緩い火山灰質粘性土層とその下位に分布する溶結凝灰岩層(上部のN<10を示す非常に緩い砂質土)では極力緩勾配(1:1.8)に切り取ることを基本とし、なおかつ所定の安全率を満足しない分をアンカー工で抑止する併用工法を採用しました。切土量と抑止工のバランスを考えて経済性を追求するとともに、安全性を確保できる構造物としました。

2011年紀伊半島大水害

2011年9月3日高知県に上陸した台風12号は紀伊半島に記録的な大雨をもたらし、多くの甚大な土砂災害が発生しました。

CFKは国道42号の緊急点検、道路や河川構造物の災害査定測量設計業務、災害関連緊急砂防事業としての砂防堰堤の調査設、深層崩壊の原因追及調査を担当するなど、復旧・復興に力を注ぎました。このような災害時に真っ先に現場へ出動するのは地盤分野の技術者です。

写真4は那智山勝浦線の被害状況です。九十九折り道路の谷筋を土石流が流下したため、道路は寸断されました。当然車両は近づけないため毎朝、徒歩で現場へ向かいました。約半月、延べ総勢200人ほどのメンバーが災害査定用写真撮影班、地形地質踏査班、測量調査班に分かれて調査を遂行しました。人員の確保においては本社と連携し、日ごろ山岳地への調査にあまり参加したこともないような営業職のメンバーも協力しました。調査を終えた後は大至急図面化、査定設計に取り掛かり、無事査定を得ることができ、感謝状が贈られました。また、写真5は災害関連緊急砂防事業で整備された砂防堰堤の完成写真です。

今後、このような災害が発生しないことを願いたいところではありますが、万が一発生した場合には、建設コンサルタントの使命ととらえ迅速に体制(人員・技術力とも)が整えられるように、今後とも努力が必要です。

4 土砂が道路を寸断する
5 災害関連緊急砂防事業によって完成した砂防堰堤

地上・地下一体型の浸水解析

6 地上・地下一体型の浸水解析モデル

雨水流出解析ソフトを応用し、雨水排水施設を考慮した津波浸水解析や地下街を対象とした浸水特性の把握等への活用を図りました。特に、大規模地下空間を対象とした浸水特性の把握では、地上施設(道路等)と下水道施設、地下街等を一体的にモデル化した地上・地下一体型の浸水解析モデルを構築し、浸水に対して脆弱な出入口を明確化することで、避難確保計画等を検討する上での有用な手法となりました(図6)。

さらに、当モデルを用いて地下鉄を対象とした浸水対策検討にも応用し、浸水対策が必要な出入口の明確化及び浸水対策設計を行いました。

G空間地下街防災システムの高度 化検討

7 地下街管理者用の防災アプリ(IPカメラの表示例)

2015年度には、総務省による「G空間地下街防災システムの高度化・実証と普及・展開」において、コンソーシアムの一員として、地下街防災システムの高度化検討に携わる機会を得ました。本事業では、地下街管理者がタブレットアプリやスマートフォンアプリを用いて、効率的に情報収集(雨量情報、IPカメラによる道路冠水情報)を行い、降雨強度に応じて、アラートが発せられ、予め整理した止水優先度の高い出入口から順番に止水活動ができる仕組みづくりを検討しました(図7)。

防災から減災へ

8 大阪府道路啓開計画図

国土交通省発注の道路防災点検業務を、2009年度に初めて受注しました。その後、着実に受注量が拡大しています。これらの業務は、事前にメンテナンスを行い、危険な状態に至っていないことを確認、または危険だと判断した場合には適切な処置を行うことが目的であることから、いわゆる「防災」といえます。これらの業務の重要性は今後ますます増すものと推測されますが、これと並行して「減災」にも力を入れていきたいと考えています。

図8は、大阪府内の国土交通省直轄道路が南海トラフ巨大地震により被害を受けた場合において、円滑な復旧活動が図られるよう、事前に被害想定を行い、災害時の対応方策について検討を行ったものです。地形、津波、施設などの三次元情報の整理、瓦礫発生量、液状化による橋台背面の段差量などのGIS化を行い、復旧に最も影響を及ぼすボトルネック箇所を抽出しました。

このように地盤防災および水防災分野は国土交通省の施策とも合致していることから、今後も重要な分野の一つとして位置づけられます。今後気候変動に伴うゲリラ豪雨の多発、台風の巨大化あるいは南海トラフ巨大地震などが懸念される中、当社のこれまでのノウハウを活用し、上流(企画・計画)から下流まで(調査・設計)扱える防災・減災技術者として役立てるよう、引き続き研鑽を積んでいきたいと考えます。

2016年10月1日公開

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