神戸の都心の未来の姿 [将来ビジョン]

今、ビジョンを策定する意義とは?

中矢 昌希
計画系部門
交通計画グループ
チームリーダー

現在、日本の各都市は少子化及び超高齢化に伴う人口減少社会に直面する中で、国内の枠に留まらず、国際的な都市間競争に打ち勝つことが求められています。

こうした厳しい状況下で選ばれる都市となるためには、そこに暮らす人・働く人が誇りを持ち、訪れる人が憧れを抱くまちをつくる必要があります。人々の誇りや憧れを受け止めるまちをつくるためには、現状の問題点や課題を解決する実証的なアプローチだけではなく、都市の在るべき将来像を描く規範的なアプローチが肝要となります。

神戸市においては、阪神・淡路大震災から20年が経過し、今、新たなステージを歩み始めています。その中で、リーディングエリアである神戸の都心(新神戸から三宮、元町を経て神戸・ハーバーランドまでの範囲)を大胆に活性化することで、市全体としての発展を図る「神戸未来都市創造プロジェクト」を推進することが示されました。

本稿では、神戸の都心における将来まちづくりの方向性やそれを実現するためのプロジェクト及び仕組みづくりを取りまとめた神戸の都心の未来の姿[将来ビジョン]の策定支援におけるCFKの取り組みと役割を紹介します。

1 対象エリア

如何にして未来を描くか?

将来ビジョンの策定において、まず考えたことは「神戸の都心は一体誰のものなのか?」という点です。それは勿論、神戸を愛する人全員のものです。しかし、神戸を愛する気持ちは共通だとしても、人々の価値観やまちへの関わり方は様々に存在します。つまり、目指すべき将来像の設定そのものが複雑化していると言えます。

次に考えたことは「先人たちは如何にして神戸の都心を築いてきたのか?」という点です。1868年の開港以来、海外からの多様な文化や新しい気風を取り入れながら、個性豊かな発展を遂げてきた神戸。その将来像を考えるに当たっては、単に他都市の良いところを模倣するのではなく、過去から現在へと受け継がれてきたまちの魅力と活力を十分に踏まえたうえで、新しい観点を加えながら安定的な成長を遂げていく必要があります。

最後に考えたことは「神戸の都心のワクワク感をどのように打ち出すか?」という点です。我々、建設コンサルタントが将来を描く場合には、机上のプランをまとめるだけではなく、それを実際の行動計画(アクション)に繋げることが重要となります。また、CFKはこれまでにも調査・計画・設計・維持管理といった様々な技術分野で神戸市のまちづくりに携わっており、市の発展・復興に貢献してきた実績があります。

この知見と実績を背景として、将来ビジョンでは、御旗となる方向性を明確に定めるとともに、実現に資する具体的施策を示し、参加したくなるまちの姿を発信することまでをパッケージとして策定しました。以下に、ビジョンの策定における大きなポイントを3点整理します。

ポイント1:みんなで作る

2 まちづくりのプレイヤーと役割

まちづくりに関係する主体(プレイヤー)は大きく①地域(市民、地元組織、経済界、交通事業者)、② 実務(神戸市、CFK)、③専門(学識経験者)に分類できる。目指すべき将来像の設定においては、これら“3つの知”を様々な場で集約・共有したうえで、発展的な融合を図るべく、熱のこもった議論を重ねました。

広く市民の意見を募るための広聴イベントとしては、神戸の未来を語り合う「もっとききたい、みんなの想い~神戸の未来のまちづくり300人会議~」を、市民と市長が直接意見を交わす「対話フォーラム~市長と描こう 都心の未来~」を、専門的・実務的な観点から有識者等を交えて議論を深める「都心の未来を考えるシンポジウム」を開催し、のべ541人にご参加いただきました。

また、ビジョンの策定に向けた取り組みを進める中で、市民や専門家との意見交換を行うための有識者会議として、計5回の検討委員会を開催しました。ここでは、地元のまちづくり協議会や経済団体等といった関係者間で「神戸の都心のために、それぞれの立場で何ができるか?」という意識を持って、建設的な議論が交わされました。更に、検討委員会での討議内容については、WEBによる意見募集を行い、最終的なパブリックコメントも含めて、のべ756人から意見を頂きました。

3 神戸の未来のまちづくり300人会議の様子

ポイント2:らしさを活かす

4 コンセプトイメージ

神戸の都心が安定的な成長を遂げるためには、都市活動を支える様々なテーマに対応する必要がある。ここでは、都心に備えるべき要素として、景観、にぎわい、生活・居住、産業、観光・文化、防災、環境・エネルギー、交通の8つの軸に着目し、各種統計データを用いて、定量的な側面から見た強みと弱みを分析しました。

この客観的な評価と前述した市民による主観的な意見を融合し、将来ビジョンの方向性を整理する必要がありました。議論のポイントは、様々な言葉や感覚で語られる「神戸らしさ」をどのような表現で具象化するかでした。

ここで、CFKは都心の歴史と個性に着目し、神戸らしさと前述した8要素の関係を一つの物語として紡ぐナラティブ・アプローチを提案し、神戸市と複数回に及ぶ密な議論を重ねました。

その結果、都心の将来像のコンセプトとして、「日々の刺激と物語が生まれる美しき港町・神戸~多文化・多世代交流 あなたが参加しているまち~」を掲げ、それを表現する3つの柱として、①心地よいデザイン、②出会い、イノベーション、そして文化、③しなやかで強いインフラを設定しました。

ポイント3:具体に示す

このコンセプトと3つの柱は、都心の未来の姿の大きな道筋を示した基本思想であるが、まちづくりを支えるプレイヤーが一つのチームとなって進むためには、より具体的に未来の姿を描く必要がある。そこで、前述した8つの軸それぞれについて、具体的な施策を検討・整理しました。

ここでは、各施策のキャッチフレーズを設定するとともに、神戸の都心のどこが/どのような姿に変わるのかを具体的に示すことで、それらが実現した場合の人々の暮らし方や過ごし方の変化を共感・共有できるようにしました。

こうして策定された神戸の都心の未来の姿[将来ビジョン]は、関連する三宮周辺地区の『再整備基本構想』との合同報告会にて公表され、新聞やテレビ等の各種マスメディアで大きく報道されました。

5 将来ビジョンで掲げた具体的施策(抜粋)

策定支援を通じた喜びとやりがい

私は生粋ではないが、15年来の神戸市民です。自分や家族が住むまち/育ててくれているまちの将来ビジョンの策定に携われたことは、コンサルタントとしてこれ以上ない喜びです。

本業務のような規範的なアプローチが求められるまちづくり計画においては、「これが絶対的に正しい」という唯一解は存在しません。そうした中で、幾多の困難を乗り越え、ワクワクするビジョンを取りまとめることができたのは、神戸市のトップマネジメントと、それを支え、実行する現場体制の両輪が揃っていたことに加えて、コンサルタントであるCFKの意見に耳を傾け、一緒に汗し、知恵を絞る協働スタイルで進めて頂けたことにあります。

将来ビジョンに掲げた施策においては、既に先行実施されているものもある。変化の過程も含めて、是非、あなたも“刺激と物語が生まれる神戸の都心”に参加してください。(2016.05)

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