おおさか東線開通 大阪東部地域がより便利な街へ

淀川右岸側(おおさか東線/淀川橋梁付近)から大阪都心部を望む 

おおさか東線のあらまし1)

中山 拳太NAKAYAMA Kenta
鉄道系部門
東京鉄道グループ

大阪東部地域に居住していた筆者はかつて、放出駅からCFK本社のある新大阪駅までラッシュ時で混雑する都心部を介して通勤していました。しかし現在では都心部を介さず、乗り換え無しで通勤が可能となりました。去る、2019年3月16日に新大阪駅から大阪市(東淀川区・旭区・城東区・平野区)や東大阪市、八尾市の大阪外縁にあたる東部地域を経て大和路線久宝寺駅(延長:20.3km)を南北に結ぶおおさか東線(JR西日本)が開通したためです。

おおさか東線の位置図

今回紹介するおおさか東線は元来、新大阪駅から城東貨物線(区間:吹田〜久宝寺)、阪和貨物線(区間:久宝寺〜阪和線杉本町、2009年に廃止)の旅客路線化を行い、関西空港へのアクセスの整備を主たる目的として事業の構想がなされていました。

しかし、大和川の高規格堤防事業(阪和貨物線の廃止に起因)やなにわ筋線(新大阪からうめきたエリア、難波を経て関西空港方面へ接続)構想の事業化によりその必要性が希薄化しました。そのため、「関空アクセス路線」ではなく、大阪市内から放射状に走る鉄道路線(JR各線、各私鉄線を含む計9路線)を相互に連絡することによる広域鉄道ネットワークの形成や都心周辺部の環状方向(南北方向)の流動に対応し、都心部の混雑緩和の役割を担うことを目的とした現在の開業路線に至りました。

各施設の設計

前身の城東貨物線は路線の建設当初より複線化が予定されていたため、予め複線分の用地が確保されている区間や既設構造物が複線化に対応済みの区間が存在しました。これらを活用しながら旅客路線として整備し、コストの低廉化を図った点は他の新規開業路線と異なる特徴です。

また、各駅施設には沿線地域の歴史や風土に基づいたデザインコンセプトとして、随所にテーマカラーによる塗色が施されており、城北公園通駅では、旧淀川に多くの渡し場(渡し舟の船着き場)が存在し、水運とともに歩んだ歴史を表現(=淀川の水面)して、薄い青色「縹色(はなだいろ)」で彩られています。

新たに開業した南吹田駅

「縹色」で塗色されている城北公園通駅

「縹色」で塗色されている城北公園通駅

まちなみの変化

終点駅である久宝寺駅や中間に位置する放出駅には貨物駅や客車を留置する操車場が存在していましたが、鉄道施設の合理化や本路線の事業化により廃止され、跡地利用として現在は高層マンションの建設や複合商業施設、総合病院の誘致が進められ、大規模な都市開発が行われています。他の駅周辺地域でも新たなマンションの建設や公園の設置等による既成市街地の活性化が進んでおり、特に他の鉄道路線との接続駅においてはその現象が顕著に確認できます。

1970年頃の久宝寺駅周辺 2)
2017年頃の久宝寺駅周辺 2)
鉄道事業と一体的に開発が進む淡路地区

JR淡路駅周辺では、阪急電鉄の連続立体交差事業も進行中であり、鉄道事業と一体的に幹線道路等の整備が進められており、駅前では整然と土地区画整理がなされ、マンションやテナントビル建設が他駅に比較して急速に進行しています。また、阪急電鉄とは多方面の路線と結節しており、沿線に通学する学生や東大阪方面の工業地帯へ通勤すると見られる乗降客が多く、新たな交通結節点として機能していることが確認できます。

災害時利用できる「かまどベンチ」南吹田駅

南吹田駅の周辺地域では、都市計画道路や駅前に交通広場が整備された他、防災面において、交通広場の一角に災害時の一時避難所としての運用を想定した、「マンホールトイレ」、「かまどベンチ」等の防災設備が設けられ、“安心・安全なまちづくり”が進められています。

“鉄道空白地域”の解消

都市部の生活圏にありながら公共交通網が未整備、あるいは路線バスに依存している地域を俗に、“鉄道空白地域”と呼ばれますが、特に南吹田駅の周辺地域は最寄りの駅までは神崎川を隔てた約2km離れる場所まで存在せず、路線バス網も乏しいため、不便を余儀なくされていました。その他、城北公園通駅の周辺地域では住宅の他に大学や高校が多く点在するため、当該地域を走る路線バスはラッシュ時には通勤・通学客で混雑するほか、都心へ向かうバス路線のため、道路交通の慢性的な渋滞により定時性に欠くといった問題が生じていました。

現在では、これらの駅を利用する通勤・通学客が多く見受けられることから、都市が抱える問題に対して、おおさか東線の開通は新たな駅勢圏の創出による鉄道空白地域の解消や、鉄道の特徴である運行の定時性を持って、問題の解決に寄与していることを実感できます。

おおさか東線の今後

交通結節による新たな移動経路確保とまちづくり開発が進められている甲斐もあり、利用客の定着が感じられます。今後は大阪駅の北側に建設中の地下新駅へも乗り入れが可能な計画となっています。実現すれば、大阪東部地域から商業施設が集積し、かつ各方面への交通結節点である大阪駅へのダイレクトなアクセスも可能となり、更なる利便性や沿線価値の向上が期待されます。

おわりに

筆者は主に鉄道路線の線形計画業務に従事しており、おおさか東線と接続されるなにわ筋線事業にも携わっています。業務・私生活の両面で関わりの深い両線の接続は2031年の開通予定であり、待ち遠しく思います。

【参考資料】
1 西日本旅客鉄道HP おおさか東線サイト:https://www.westjr.co.jp/railroad/project/project4/
2 国土地理院 地理院地図(電子国土web)

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