歩行者目線のデザイン-欧州の公共空間の現地調査-

1 イクセル通り(ブリュッセル)

ヨーロッパへ

植平 健
UEHIRA Takeshi
道路系部門
道路第一グループ

私は、大学院では歩行者の回遊行動について研究しており、歩行者にとっていい空間とは何か、どのような空間を創出すればより多くの歩行者の回遊を促すことができ、街の活性化につながるかについて興味を持っていました。

CFKに入社し、道路系部門に配属され、様々な道路設計に携わってきましたが、基本的には「自動車」に対する設計で、「歩行者」に対する設計というのは駅前広場等数えるほどでした。回遊行動に関する知識に触れる機会は減ってしまいましたが、学ぶことが多く刺激的で有意義な毎日を過ごせていたと思います。

そんな中、欧州の公共空間再編事例についての現地調査参加者の社内公募の話を聞き、「久しぶりに、歩行者目線でのモノの考え方やデザイン手法、日本ではできないのか等、見て、触れて、考えたい」と思い応募したところ、メンバーに選ばれました。入社してから「海外視察があったら行きたい」と言い続けてきてよかったです。

人生2度目のヨーロッパです。

欧州の公共空間の現地調査

CFKからは、先輩社員2人と計3人で約2週間、ベルギー(ブリュッセル)、フランス(パリ、リヨン、ストラスブール)、デンマーク(コペンハーゲン)、オーストリア(ウィーン)の4ヶ国6都市を巡り、公共空間再編事例の現地調査や関係者へのヒアリングを行いました。

ヒアリング風景(パリ)

ヒアリング風景(パリ)

ヒアリング風景(ストラスブール)

ヒアリング風景(ストラスブール)

ヒアリング風景(コペンハーゲン)

ヒアリング風景(コペンハーゲン)

ヒアリング風景(ウィーン)

ヒアリング風景(ウィーン)

細い街路を活かした歩行者空間づくり

一般車進入禁止の様子
一般車進入禁止の様子

学生時代、特に魅力を感じていたのが、大阪の天満のような細い街路が入り組んだ迷路のような街です。今回訪れた場所では、ストラスブールやリヨン歴史地区(Vieux Lyon)等の旧市街地が該当します。日本では、密集した建物と建物の間の狭い街路に歩行者と自動車を通すため、歩道のない歩きにくい道路が出来上がっています。ストラスブール等では、潔く車両の通行を諦め、一般車を進入禁止にし、オープンテラスを設置したり、歩行者が思い思いの場所で談笑したりと、狭いなりの空間を活かした歩行者空間が形成されています。

オープンテラス
オープンテラス
狭いなりの空間を活かした路地
狭いなりの空間を活かした路地

日本同様、荷下ろしや車庫の出し入れ等の問題はありますが、時間規制や地下駐車場を設けることで解決しています。店舗を構える人間や住民が、少しの不自由と安全で魅力的な街のどちらを優先したかがよくわかります。この辺りは日本とは考え方が異なる部分ですが取り入れるべき点だと思われます。

合意形成とデザインコントロール

メインストリートや広場のような大規模な空間づくりや、さらに大規模な面的な都市再生事業についても話を聞くことができました。例えばブリュッセルでは、車道をトランジットモール化して歩行者空間を拡充しています(写真1)。

また、リヨンのコンフリュアンス地区(Lyon Confluence)では、工業地帯だった殺伐とした地域を公共交通や自動車、歩行者をバランスよく配置し、かつての名残を活かしつつ統一された都市再生を実現しています。

どの国でも、車道の削減という不利益に対して、歩行者空間化の重要性や、高価であってもアートや意匠にこだわることを行政や住民にうまく説明し、合意形成を図っていました。さらにマスターアーバニスト※1達が一括でデザインコントロールを行い、ひとつのコンセプトに則った統一された美しい街並みが形成されていました。

歩きたくなる空間へ

今回、様々な素晴らしい空間を実際に体感し、考え方や実現手法等も聞くことができました。今回の経験を活かし、「歩きたくなる」と思えるような空間を、どう提案し、表現し、設計し、実現し、維持するか考え続けていきたいと思います。

歩行者が談笑している公共空間
歩行者が談笑している公共空間

【注釈】
※1 都市計画プランナーや建築家、景観デザイナー等のチームであることが多い。

【参考資料】
1) 欧州先進事例にみる歩行空間再整備とそのアプローチ手法の国内適用可能性の考察、土木計画学研究・講演集,V o l . 6 0 , №23-04, 2019.11

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