北欧の公共交通に触れて ― 海外視察で出会った、やさしい公共交通のかたち ―

はじめに

1 老若男女が乗り場に並ぶLRTの様子

2025年10月、CFKの社員として北欧4都市(フィンランドおよびデンマーク)を巡り、公共交通をテーマとした海外視察に参加しました。
目的は、LRT(ライトレール)と呼ばれる次世代型の路面電車を中心に、街と交通がどのように結び付いているのかを実際に体験することでした。
もっとも、毎日が会議やヒアリングばかりというわけではなく、街を歩き、現地の人々と同じ交通手段を使い、日常の移動を体験することで、日本とは異なる価値観や工夫を数多く感じることができました。

チケットレス×信用乗車 =想像以上の乗りやすさ

2 改札レスで地下鉄ホームへ

今回訪れた都市は、いずれもチケットはスマートフォンのアプリでの購入が基本でした(券売機でも購入可能)。
併せて、改札のない信用乗車方式が採用されていました。あまりにもフラっと乗ることができるため、本当に乗ってもよいものかと当初は戸惑いもありましたが、慣れてくると改札なしで地下鉄やLRTを乗り換えることができるので、想像以上に便利でした。
ちなみに、このシステムは不定期に行われる車内チェックによって支えられており、チケットが有効でなかったりすると高額罰金なので要注意です。

トラムが“当たり前”に走る街 -ヘルシンキの移動は徒歩の延長-

フィンランドの首都ヘルシンキでは、街の至るところをトラム(路面電車)が走っています。観光用の特別な乗り物ではなく、市民にとって当たり前の移動手段です。
停留所の間隔は非常に短く、徒歩の延長線上で利用できる感覚があります。目的地に着くために「電車に乗る」のではなく、「少し歩く代わりに乗る」存在であるように感じました。夜になると、この印象はさらに強まりました。周辺の建物の外壁や街路灯に支持されたトラムの架線には間接照明が取り付けられており、街灯のように街路全体をやさしく照らしていました。
このように公共交通のために景観を犠牲にするのではなく、公共交通そのものを街の風景として成立させている点が印象的でした。
ヘルシンキではトラムと同じチケットでフェリーにも乗船できたため、世界遺産スオメンリンナ島を訪れてみました。寒空の下を駆け抜けるフェリーからの素晴らしい景色と肌で感じた冷たい空気は強く記憶に残っています。

3 ヘルシンキ:夜のトラム
4 フェリーからの眺め

地下鉄は路線数こそ多くないものの、柱のない大断面空間が連続する構造でした。
地上と地下を結ぶエスカレーターは非常に長く、かつ高速であり、高所恐怖症の身としてはなかなか恐怖の時間でした。

5 地下駅
6 長いエスカレーター

ムーミンと一緒に走る電車 -タンペレで始まった新しい交通-

次に訪れたタンペレは、フィンランド第2の都市とされています。
2021年にLRTが開業し、従来のバス中心の交通体系から大きく転換した都市です。
特徴的なのは、LRTが一般車両やバスと同じ道路空間を共有している点です。
信号制御によって円滑な運行が確保されており、道路を「分け合う」考え方が定着しています。
また、この街ではムーミンをあしらったデザイン車両が運行されています。
車内の天井にはムーミンの足跡が残っており、通勤・通学の風景にささやかな楽しさを添えています。公共交通を身近に感じさせる工夫の一例といえるでしょう。

7 ムーミントラム(外装)
8 ムーミントラム(内装)

大都市を支えるスマートな移動 -コペンハーゲンの地下鉄とLRT-

デンマークの首都コペンハーゲンは、北欧有数の大都市です。
生憎にも雨天でしたが、歩行者天国「ストロイエ」では多くの人が行き交い、都市としての活気を強く感じました。

9 ストロイエの風景(雨)

地下鉄は全自動運転・24時間運行が特徴であり、運転台のない車両が高頻度で走行しています。
駅の構造や内装はいずれの駅も洗練されたデザインで統一されており、同時に、設計や維持管理の効率化にもつながっていると考えられます。
LRTは訪問時点では開業直前であり、試運転や建設中の様子を視察することができました。

10 コペンハーゲンの地下駅
11 LRT試運転の様子

物語の街に溶け込む交通 -オーデンセの静かな調和-

最後に訪れたオーデンセは、童話作家アンデルセンの生誕地として知られる街です。
生家周辺の街並みは非常に落ち着いており、今回の視察の中でも特に印象に残りました。
2022年に開業したLRTは、市中心部と大学、病院を結んでいます。
線路敷は芝生化され、停留所のデザインも控えめです。
歴史的な街並みを損なわないことを重視した計画であることがよく伝わってきました。
オーデンセライトレールへの公式訪問では非常に丁寧な対応を受け、運営体制や日常管理について直接話を聞くことができました。
最後に記念品としてマグカップを頂戴し、視察の締めくくりとして印象深い時間となりました。

12 アンデルセン生家付近

13 緑化されたLRT路線

14 オーデンセライトレールのロゴが入ったマグカップ

赤い “O” が Odense(オーデンセ)を表し、その下の横線が “L(Letbane=ライトレール)” とレール(線路)を象徴している

おわりに -日常に根づく公共交通から学ぶこと-

北欧の公共交通を体験して強く感じたのは、交通が「特別なもの」ではなく、生活の一部として自然に受け入れられているという点です。
犬を連れた利用者、自転車を持ち込む人、高齢者や学生など、多様な人々が同じ空間を共有しながら移動していました。技術の新しさ以上に、「使い続けてもらうための工夫」「街と調和するデザイン」が重視されていることが印象的でした。
これらの考え方を、日本の街づくりや公共交通にどのように活かしていくのか。
今後の業務においても、引き続き考えていきたいと思います。

干野 一騎
HOSHINO KAZUKI
鉄道系部門
地下鉄道グループ
主任

「都市計画」に関連するトピックス

「都市の地下鉄」に関連するトピックス

「新交通・LRT」に関連するトピックス

RECRUIT

採用情報


私たちと一緒に新しい未来を切り開きましょう。
CFKでは、高い志を持ってチャレンジし続けるあなたを待っています。

採用情報へ 採用情報